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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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2019年7月の記事一覧

生きづらさが詰まった小説の中に

生きづらさが詰まった小説の中に

欲しい小説は?と聞かれてパッと答えが出てこなくても、自分の中で欠けてしまった何かを埋めるように本屋に足を運ぶ。ここに来ると、安心するのだ。

隙間なく同じ背の中さに揃えられた文庫本を眺め、ただ歩くだけ。手に取るわけでもなく、そうする。

世の中にはこんなにも物語があるのだと思うと、息をふーっとやわらかく吐くことができる。ああ、大丈夫。生きていける。なぜかそう思えるのだ。

“書く”という行為だけで

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行ってきますと行ってらっしゃいの居場所は何度でも見つかるよ

行ってきますと行ってらっしゃいの居場所は何度でも見つかるよ

寝癖ぼさぼさの髪で、開けたカーテン。眩しさで目をつぶる一瞬前に捉えたのは、新品のクレヨンで描いたような「水色」の空。伸びやかに広がる朝に、心の中で音符が跳ねた。

ぐずぐずな梅雨のせいで忘れてしまいそうになるけれど、もう7月末。今月から、株式会社インクワイアで編集アシスタントを始めた。3ヶ月間は業務委託だけれど、会社とわたし、相互にミスマッチが生まれなければ、その後社員としてジョインすることになっ

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雨から逃げたくて、夢を編んだ

雨から逃げたくて、夢を編んだ

雨と雲に盛大に世界を支配され、花びらを広げられずにいるひまわりと、もう今年は出番ゼロなのでは?と土の中で嘆く蝉たちに同情していられないくらいわたしも限界だった...

世界一周する出発日を決めた。親友の誕生日の日にわたしは空港から旅立つ。会社のメンバーに応援してもらって見送られながら、約8ヶ月の旅だ。全大陸、30カ国以上を周って世界中の人の夢を聴いて発信をする。ときには大自然、ときには大都会を

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“わたしだけの世界”に出会った瞬間。

“わたしだけの世界”に出会った瞬間。

まだ眠い、朝の電車。窓からは途切れ途切れに太陽の光が差し込むんでいた。キラキラした木漏れ日が眩しい。

“なんとなく”つり革を掴んでスマホを見る色白のひょろりと背が高い男性。どうしてそれを選んだのだろうと悪気なく聞いてみたくなる色と丈のスカートを履く、真っ赤な口紅を塗った女性。初めて見るひとばかりなのに、毎日同じ風景に見えてしまうのはなぜだろう。

キョトンとした顔であたりを見回し、こちらをちらち

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