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精神病院で生きていた話 その25

「ですので、退院日決めちゃいましょう。再来週でいいですか?」
川本先生が辞めることになり、僕の退院日はあっさりと決まった。
川本先生の持っている患者はどんどんと退院が決まっていき凪ちゃんやユーミンも退院していった。
 
「いいなー俺、七木先生だからまだ退院決まらないんだよ。退院したら絶対ゆかりを殺してやるんだ」
大関さんは物騒な事をいう。入院させた奥さんを相当恨んでいるらしい。
ノートに大きく「ゆかりを殺す」と書いている。
この調子じゃ退院も伸びそうだな、と思っていたがしばらくすると僕の翌日には退院が決まった。
沙紀ちゃんや和也くんも河本先生が担当だがもう退院が決まっていた。
 
「私、ひっそりと退院するんだ!急にいなくなるから。みっちーだけには教えておくね!」
 
無邪気な顔でテーブルに何か鉛筆で書きながら沙紀ちゃんは言う。屈託の無い笑顔が希望みたいに見えた。
沙紀ちゃんが去った後、テーブルに書いていたものを見た。
 
「アカネは敵だ。ミキも敵だ。もう誰も私の味方はいない。でも私は生きる。」
 
とダイイングメッセージのように書いてある。
僕はそっとそれを消しゴムで消した。
みんなとの別れを惜しむように。



実話をもとにした創作精神病院入院記です。
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