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精神病院で生きていた話 その23

仲野さんという痴呆症のお爺ちゃんがいる。お爺ちゃんはいつも徘徊していて人の部屋に入ったり、夜中もうろうろしていて少しみんな困っていた。
盗癖もあるようで前に僕のテレホンカードが無くなった時や床頭台に置いていたお菓子が無くなった時も犯人は仲野さんであろうと思われていた。
 
ある日、保護室でダラダラしていると仲野さんが部屋の前に現れた。
保護室の入口には鍵がかかっているはずなのに、どうやって入ったのだろう。と思っていると檻の前に置かれた僕の荷物を漁り始めた。あぁまた盗まれる!と思い大きな声で看護師さんを呼んだ。
仲野さんは看護師さんに連れていかれた。
 
仲野さんとは少し揉めていて部屋に入ってこようとする時にもみ合いになり倒してしまった事もある。
その時は川本先生に
 
「お爺ちゃんをいじめてはいけません、痴呆症なんですから仕方ないと思いましょう。怪我をさせたら保護室ですよ」
 
と脅されていたがまさか別の事で保護室に入るとは思っていなかった。
仲野さんは何度も保護室の入り口を破り檻の前に来ていた。
そのたびに看護師さんを呼び、中々大変だなと思っていた。
 
川本先生が来た時に相談をする。
 
「うーん。では落ち着いているようですし保護室から出ましょうか。」
 
あっさりと僕は保護室から出れることになった。
清水さんにお別れを言い、僕は外の病棟へと戻った。
 
ほんの1週間半閉じ込められていただけなのにいろいろと変わっていた。吉山くんや八木さんは退院していた。
概ねのメンツは変わってはいなかったが。
 
戻された部屋は例の喘息部屋だった。元居たベッドは落ち着いた長州に与えられたらしい。
またここで寝るのか…と思いその日は部屋で寝た。
 
すると保護室から出たはずなのにまた金縛りにあった。
しばらくうなされていて金縛りが解け少しロビーで休もうと思い床頭台に置いている眼鏡を取ろうとした。
するとそこには床頭台はなかった。代わりに小さい仏壇が置かれていた。ぎょっとしているとスーッと仏壇は床頭台へと変わった。僕はなるべく早く退院したくなっていた。



実話をもとにした創作精神病院入院記です。
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