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こなしオナニー

男も女も集まればしょうもない話をします。
あれは忘れもしない22歳の夏のガストでした。
KとYさんとSさんとわたしというmixiのご近所コミニティで知り合った4人はランチオフ会をしていました。他愛もない話をしているとKは突拍子もない話をはじめました。
「こなしオナニーってあるよね。」
最初はみんな頭の中が「????」になったのですがKの説明によると「そんなにムラムラしているわけでもないけど、とりあえずこなしとくオナニー」の事らしいです。この時K以外のみんな同じ気持ちだったと思います。

「これはどういう反応をすればいいんだ・・・?」

正直、こなしオナニーはわかります。
暇だしとりあえずこなしとくか、みたいなオナニー。あります。わかります。
ただ問題なのはこの時の4人というのが正直そんな話が出来るほどまだ打ち解けてなかったのです。まだこのメンツで遊ぶのも初めて、それぞれ接点はあるんだけどみんなの事はどこまで踏み込んでいいかわからない絶妙な状態です。

(回答に困る・・・!)

ここは「え~わかんない~」と言うのがいいのでしょうか。
でも「なに純情ぶってんだコイツ」と思われるかもしれません。
でも「わかる~!」と言ってしまったらもし本当に「コイツもKも変態か」と言って他の2人と思われてしまうかもしれません。
でも実はみんなこなしオナニーがわかっていたり、あるかもしれないと思っていても言い出せない空気です。
Kは続けます。

「え?わたしだけ?」

これではKだけが変態になってしまってハブられてしまう、まずい!と思いました。
そこでYが逃げます。ドリンクバーを取りに行ったのです。そしてSもついていきました。Kと二人きりになったわたし・・・Kはまだ「こなしオナニーは自分だけなのか・・・」とわたしに言います。わたしは「わかるけど、そういう話はもっと遅い時間にしましょうよー」とランチタイムの話ではない事を諭します。

「え?やっぱりわかる?!」

そこでYとSが戻ってきます。

「み里もこなしオナニーしてるってさ!」

わーーーー!仲間にされた!どうすればいいんだ!
この時間にする話じゃないと諭しただろ!
Yさんは引き攣った笑顔をしています。Sさんは恥ずかしそうに俯いています。この2人はきっと下ネタがダメな人なんだと察しました。
あぁ、そんな人たち2人にわたしたちはとりあえずオナニーをこなしとく変態だと思われた。どうすればいいんだ。穴があったら入りたい。

KだけがやたらニコニコしてるテーブルでYさんは引き攣った笑顔、Sさんは赤面と言う顔を崩しません。こなしオナニーの話題が終わったら沈黙が少し続きました。これはまずい、どうにか話題を切り開ないとかと思ったのかSさんは口を開きます。ただわたしたちに話題を合わせようとします。

「ムラムラして外でする事もあるよね?」
「「「え?」」」

聞けば公園のベンチや人の居ない電車の中でしてしまうSさん。
それには誰も賛同できませんでした。Yさんもそんな中、口を開きます。

「わたし・・・一人でした事なくて・・・みんなどうやってやるの?」

踏み込んできました。ごめんなさい、Yさん。初心なあなたはステキです。
ただわたしたちの秘め事は未開の地のジャングルです。暴かないでください!と思っているとKはさぞ嬉しそうに「ボールペンでさー・・・」と生生しい話を始めます。
YさんとSさんは赤面をしています。その時、後ろの席に座っていたおじさんが咳ばらいをします。そうです、こんな話は公共の場でする話ではないんです。Yさんは自分で振った話なのにKを止めました。

「こういう話はファミレスではやめましょう。他のお客さんもいますし。」

わたしも賛同します。

「ボールペンは書く時だけに使ってください!」

Kは反論します。

「マスをかく時に使ってるよ!」

おじさんが吹きだします。なぜか勝った気持ちになりました。
おじさんはもう一度咳ばらいをして帰っていきました。
Kは時計を見ると

「あ!バイトの時間だ!わたし、先帰るね!」

と、オナニー談義だけ残してまだ打ち解けてもいない3人を残して帰っていきました。その後はたいしてみんな興味もないヨン様の話で盛り上がったふりをして帰りました。そしてその集まりは二度と開催される事はなく、いつの間にかガストは潰れて駐車場になり、mixiからもみんないなくなりました。

この話を思い出したのは最近Kを見かけたからです。
あの街の東急ハンズのボールペン売り場で、真剣にボールペンを選ぶKを見てわたしはなぜか少し安心したのでした。

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