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男性の育休取得しやすさで大事なのは、雰囲気づくりだ。スタートアップ2社代表の自身の育休体験談

ミラティブ赤川とLayerX福島は、それぞれ育児休暇を取得したスタートアップの代表という共通点があります。両CEOの赤裸々な育児休暇話を聞きました。

LayerXとミラティブのエンジニア出身経営チームが語るエンジニアが働きやすい開発組織とは』イベントのトークセッションで話された内容をもとに、一部追記を行い編集しています。

スタートアップ代表、それぞれの育児休暇取得にいたった背景

ーー育休を取得した理由は?迷いなどはありませんでしたか?

赤川「ミラティブは『わかりあう願いをつなごう』というミッションのもとで経営されていますが、ユーザーさんの願いをつなぐにはまず社内が最大限わかりあおうとしているのが前提、と考えると、働く個々人と家族の間もライフイベントを通じてわかりあえていてほしいなと思っています。代表が育休を取得することで、「ライフイベントで家族同士のつながりが深まることを心から応援しているよ」、という意思表示ができるとも思ったので、率先して取りました。

迷いはありませんでしたが、仕事をあけることへの葛藤はあったので、役員や株主に相談をしました。みんな全力で応援をしてくれ、頼もしさを感じると同時に社会がそういう方向に進んでいることも実感しましたね。余談ですが、取締役会で『実は、お話が...』と話を始めたときは株主たちは『何の重大発表だろう...』と内心ドキッとしていたらしいです(笑)」

福島「家族のサポートをしたかったのが一番の理由です。当然、会社の代表として仕事をあけることへの迷いもありましたし、僕は学生で起業してから1週間以上仕事を休むことってなかったので、仕事から離れることのイメージがわかない状態でした。そんななか、株主に相談をしたところ『育休をとったほうがいい。そういう会社にしていくべきだ』と強く後押しされ、迷いはなくなりました」

赤川「2社の共通の株主の佐俣アンリさんから、『ワーカホリック代表とも言える福島・赤川が育休をとる時代なんだぞ、と今後他のスタートアップ起業家にも家族のための休暇を薦めやすくなりますね。超応援です』と言われ、心強かったです」

締め切りがある分、権限移譲を積極的に。代表不在に備えて準備したこと

ーー育休をとるにあたって、準備したことは?

福島「一番は共同代表の松本さんの採用ですね。育休に関係なく経営人材の採用はずっと取り組んできていました。代表がやらなくてはいけない仕事はあるので、タイミングは偶然でしたが、松本さんの参画と育休のタイミングがあったことは、会社が問題なくまわった大きな要因の一つです。

あとは、事業責任者の権限を明確にし意図的に権限移譲を推進しました。それまでは、僕が営業を見たり開発に対して意見をしていましたが、然るべき人に権限を移譲しました。当たり前のことですが、育休という締切が決まったことで加速しましたね」

赤川「自分がいなくても会社が回る状態をつくることに尽きると思います。ただ、ミラティブの場合は、2020年から育休関係なく事業責任者への権限移譲を進めていたんです。なので、不安や大きな混乱はなく準備を進めることができました。もしも創業間もない2018〜2019年頃だったら、育休取得の意思決定は変わりませんが大変さは違ったと思います」


ーーおふたりが育休をとられている間、会社はどうだったのでしょうか?

福島「問題なく回っていました。みんなたくましいな、頼りになるな、と思いましたよ。少しさみしい気持ちもありましたが……」

赤川「同じくです。代表の仕事は短期目線ではなく中長期的な企業価値を高めていくことなんだと再確認できただけでも良かったのかな、と思いました。というか、育休中は会社のことを考える余裕もない日々で(笑)」

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福島「めちゃくちゃ大変ですよね(笑)」

赤川「旦那の育休取得率がほぼゼロで、さらに今よりも子どもの人数が多かった昭和の時代って、どうやって家事と育児を回していたんでしょうね…」

福島「そうですね。ただ、昨今は育児をサポートするテクノロジーやノウハウが開発されていることがありがたいです。個人的にはジーナ式がよかったですね。起床時間やミルクをあげる時間……そういう育児の変数を固定することによって、ぐずる原因が解明しやすくなるんですよ」

赤川「すごい、まさにエンジニア的なしくみ化って感じですね(笑)。うちの奥さんは安易にテクノロジーを導入して効率化したりすることを好まないので、安直に提案するより先に、まずは家事や育児のイシューにディープダイブして、理解してから提案していきました。これは仕事でも同じことが言えるかもしれませんね。現場を知ろうとしないCEOが好き勝手言うのは感情的にもやもやするもんな、と、改めて身にしみました」

ーー組織の変化はどうでした?現場目線ではどうでしたか?

松本(LayerX)「実はさっき福島さんと2人で話していたんですけど、福島さん不在時の変化はなくいつもどおりだった...というのが結論で。というのも、しっかり準備もしてきたので、みんなの覚悟もあり自分で考えて動く自律的な組織になっていたと思います」

大野(ミラティブ)「ミラティブもいい意味で変化はなかったですかね」

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制度はあるだけでは意味はない、大事なのは『雰囲気』。2社でで起きた変化

ーー代表が育休とって、会社で変わったことは?

赤川「育休をとる男性社員が増えました。あと、採用面接で『そろそろ子供が産まれる予定で...』と、育休の話を相談してくれる人がでてきたんです。採用がどうなるかわからない、選考途中で男性が入社直後の育休の相談をするって、少し前の時代だと考えられないじゃないですか。ただ、そういう相談をしてもらえるのは『代表が育休をとった会社』だからなのかな、と思っています」

福島「社内の育休に対する意識の変化が大きいですね。LayerXは、僕の前にも役員が1名育休を取得していることもあり、気兼ねなく育休をとれる雰囲気になってきたと思います。あと、育休をとるときには『申し訳ないと言うのはやめよう、そこは、おめでとうだから』と伝えています。みんなで、新しい命の誕生を祝うムードになっていますね」

ーー男性社員が育休を取得しやすくなるには、どういうことが必要だと考えますか?

福島「制度は国が定めている以上、どの会社もあるはずです。大事なのはとりやすい雰囲気で、雰囲気は会社個々でつくっていくしかありません。社員の育休に対し『おめでとう!育児って大変ですよね!』と言い合える組織にすることが大事です。

LayerXのSlackには、雑談パパママチャンネルというものがあります。そこで子育てグッズやおすすめの書籍などを教えあっているんです。誰でも参加OKですので、そこでの会話を通じて子育ての大変さを垣間見ることができ、受け入れる空気になっていると思っています。また、育休から復帰してブーストかかって活躍している社員がいます。そういった社員の姿を通じて、育休で仕事を離れても活躍できる実感が持てるといいですよね」

赤川「同じく空気づくりですね。その手段の一つが代表が育休を取得することだと思います。自分自身に子供が出来る前は、子育ての大変さはわからなくて当然です。僕の20代を振り返っても知識のなさを反省するばかりですが....実際に経験した人はいかに大変かがわかるはずです。そういった経験をした人が、社内で発信したり交流して、その様子をまわりが見て大変さを少しでも理解する、そんな理解の連鎖をつくっていくことが大事だ思います」

福島「一方で子どもを産まない選択をした人、不妊治療をされている人など、多様なメンバーもいると思うので、そういうことにも配慮は必要です」

育休の取得を通じて起きた変化

ーー育休をとって、個人としてよかったことはどんなことですか?

赤川「まず幸せです、子供が可愛すぎるので…。産後大変な妻をサポートできたことも良かったです。僕は、一人目のときには仕事でろくに家にいない父親だったのですが、今ミラティブはフルリモートワークなので、仕事中に昼ごはんを食べにいったら娘に微笑みかけられたり、コーヒーを飲みにいったら『パパ』と言い始めたり...幸福度高いですね」

福島「子どもや妻と、幸せを共有する時間がつくれたことが一番よかったです。あと、家庭でやりたいことや、やるべきことが増えた分、個人の生産性があがりました。毎月カレンダーを見て、時間の使い方を振り返っているのですが『工夫できることってなんだろう?』と、移動時間などを工夫するようになりました」

ーー育休を通じて、どんな変化が起こりましたか?

福島「僕も育児の大変さを実際に経験してみて、育児や介護、そのほかいろんなものと仕事をと両立している人は本当にすごいと感じました。そこを理解したうえで、無理のないマネジメント体制を築いていきたいです。仕事の面だけを見ていると『頑張れ』と言ってしまいたくなるんですけど、いろんなバランスがあると思います。『こんなに大変なんだ』と知ることができたことが1番の変化ですね」

赤川「本当の意味での大変さを理解していないのに、『大変だね』って共感するのは危険だなと思いました。安易な共感をするくらいなら、実際に皿洗えよっていうのが家族の本音かもしれない。家族という一番そばにいる間柄でも、わかりあえていないことがあるんだな、と痛感しました。

僕らはミラティブで『わかりあう願いをつなごう』というビジョンに向かっていますが、育児休暇も一種の社会の相互理解を促進する手段だと思うので、こうした育児休暇取得の浸透も含め、社会に良いわかりあいの連鎖を広げていきたいです」

※ 本記事の内容は2022年1月11日時点のものです。

LayerXとミラティブ各社の詳細、採用について興味をもった方は、下記をご参照ください。

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■ミラティブ
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