見出し画像

向いてないこと

 この春大学生になった。地方の田舎から上京して一人、何とか一人暮らしも安定してきた。
 今、私はこれまでの人生の中で一番の孤独を謳歌している。大学に友達ができなかった。入学式の前に複数回大学に出向く機会があったのだが、最初の機会に仲良くなった人たちと授業が始まるまで再び会うことはなく、久しぶりに見かけた彼女らは私抜きで仲良くなっていたため、その輪に混ざることはできなかった。ほかの人たちは既に完成されたグループの中にいて、私はきっとスタートダッシュを失敗したのだ。
 人付き合いは下手な自覚がある。人と話すのは嫌いではないしむしろ好きなのだが、自分から話しかけることができず、友達ができるきっかけはほとんど全部相手から話しかけてもらったことがきっかけだった。しかし、何故かいろんな人に話しかけてもらったおかげで友達がいないという孤独を感じたことはなかった。ありがたいことである。
 私は何故か話したことのない人にも名前を知られていることがよくあった。その人たちはよく「○○(友人)から話を聞いたことがある」という。私は顔しか知らなかった彼女らに知られたくなかった失敗や痴態を知られていることが気恥ずかしかったが、そうしてできた友人は気楽に話せるので心地よかった。そうやってできた友人は思いのほか多く、学校を卒業してからも連絡を取り合う仲の人も多かった。
 しかし、しかしだ。そうやって友人伝いの人付き合いが多かった私が知り合いが一人もいない大学に入学したらどうなるかは明確だろう。友人の数を1から増やしてきた人生だ。0から友人を作る方法なんて知らない。そうして私は立派なボッチ大学生になりおおせた。
 しかし、友達はいないが居ないなりになかなかに楽しい学校生活を送れている。今までずっと誰かが隣にいた。休み時間のほとんどの時間を誰かと話すことに費やしていた。今は哲学の授業についての考えを巡らせたりスマホで映画やアニメを見たり、本を読んだり自分の時間を満喫できている自信がある。同じ人とずっと一緒にいると息苦しくなってしまう性格なこともあり無理に友人作ったとしてもきっと長くは続かなかっただろう。
 とはいえ、友達が一人もいないのはさすがに寂しさも芽生える。時が経てばきっと様々な機会に恵まれ、サークルやアルバイトなどできっと友人と呼べる人ができるだろうと楽観視しているが4年間ずっと一人だったらと思うと少し怖い。でも、今はただ一人の時間を謳歌したいと思う。大学生になったらやりたいことがいっぱいあったのだ。それに手を伸ばせる機会がようやくやってきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?