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仕立て技術で植物の生長をコントロールする!①(農業)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。まさに夏って感じの天気になりましたね~。今回も栽培の話です。
トマトやナス・きゅうりといった果菜類は、茎・葉を健全に育てれば収穫に至る葉菜類とは異なり、茎・葉を育てるとともに、開花・結実させ、さらには果実を太らさなければ収穫にたどり着けません。栽培の目的は「果実」ですもんね。

この茎・葉の成長(栄養生長)と 開花・結実の生育(生殖生長)は一種の競合関係にあり、茎・葉の成長が強くなれば果実がつきにくくなります。
逆に開花・結実の生育が強くなりすぎれば、草勢が弱り、かえってその後の開花・結実がしにくくなったり、株の寿命が短くなったりするケースもあります。どちらかに偏りすぎるのは良くないんですよね。

この2つのバランスを調整する技術が摘心・芽かき・摘果・摘葉・誘引といった「仕立て」の技術です。仕立て方を選ぶことで収穫量や収穫期間をコントロールすることができます。
例えば 茎・葉の成長をある程度、犠牲にしても 開花・結実の生育が強まるような仕立て方をすれば、一気にたくさん収穫できますが、株の寿命が短くなったりします。逆にできるだけ 茎・葉の生育が弱くならないような仕立て方をすれば、1回の収穫量は少なくても長期間にわたる収穫が可能になります。

〇葉で作られた栄養で植物は成長する
仕立てによって 茎・葉の成長と開花・結実の生育のバランスを調整できるメカニズムを見てみたいと思います。
植物の生長に最も大きく影響しているのが、葉で作られる 同化産物(栄養分:糖)です。根から吸収した水(H2O)と葉から吸収した大気中の二酸化炭素(CO2)、そして太陽の光エネルギーを利用して光合成によって作られます。

この栄養分が 根、展開中の若い葉、花、果実など植物の各機関に運ばれ、その部分の成長に利用されます。株を大きくして実をつけ 種をつけて 次世代に 命をつなぎたいのが植物の望みであるため、開花できる株になるまでは 茎・葉の成長を促す栄養成長が強く、栄養分は 茎・根の生長点に運ばれます。

トマトの花

一旦、 着果すれば 開花・結実を促す生殖生長が強くなり、養分の多くが果実に集中します。しかし、この切り替えが自然にうまくいくとは限りません。伸長中の茎・葉がたくさんあると栄養分を引き込む力が強くなり、茎・葉が旺盛になります。茎・葉が育てばさらに多くの栄養分が引き込まれ、生殖生長に切り替わることができなくなります。これが過繁茂の状態です。

過繁茂の状態

これには根も関係しています。茎の成長と根の生育は関係が強く、茎が伸びれば 植物ホルモンの作用で根の生育が旺盛になり、根が発達すれば地上部の生長が旺盛になるのです。こうした状態に陥らないように行う仕立て作業が「芽かき」作業です。

必要な成長点だけを残して他を取り除けば 茎・葉への栄養分の流れが少なくなり、生殖生長に向かいやすくなります。このほか人工受粉や ホルモン処理などによって半ば強制的に着果させて、栄養分の流れを変える方法もあります。

逆に生殖生長を弱め、茎・葉の生長を強めるために行うのが「摘花」・「摘果」です。果実は生長点よりもはるかに強い力で栄養分を引き込むため茎・葉の生長がおろそかになりがちですが、着果数を減らすことで 茎・葉の成長に栄養分が回りやすくなります。 「摘心」にも 栄養成長を促す効果があります。摘心によって 複数の脇芽が伸び出せば 栄養分が茎・葉に集まり、脇芽の生長に呼応して根も発達します。養水分の吸収も良くなってさらに株の生育が進みます。

(つづきは次回。。。)


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