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詩『アカーーー流線型金魚』

ながれながれて、流線型へと。ダリの時計のように、すこしずつ垂れ下がってくる時間。散らばっていた羊の毛みたいな雲を詰める。酢飯のような塊を箸で捕まえて食む。箱寿司としての空がぎゅっと濃縮されている。金糸卵の細長いひかりがひらひら、米粒から泳ぎだした金魚と踊る。

  『Hello?hello?』

金魚が甘酸っぱいあぶくを吐く。匂い立つような桜並木をお吸い物のお椀に映しこんだら、鼻が起動してゆく。鰹節と昆布の繊細な二重奏に絡め取られて、身体の芯が揺さぶられる。五感の地殻変動。だんだんと上昇してゆく温度の波が寄せては返す、嗚呼、寄せては返す。足の裏をくすぐる生温かい液体よ、そっと囁いて。

  『Shall we dance?』

問い合わせてくる春の風。風は風を生み、波は波を呼ぶ。酢飯は甘めがいい。舌が恋に落ちたまろやかなかつての巣の酢の味。実験、試験、実験、原点回帰。てのひらのぬくもりが時間を越えて、綿々と伝言されてゆく。祖母から母へ、母から娘へ、娘から孫へ。

  『Dear my relatives 』

柘榴ざくろを突いた果物ナイフ。みずたまりに赤い果汁がぽとぽと垂れる。散ってゆくいのちと生まれてくるいのち。いのちの質量とは、と胸に尋問しながら、指を翳す。あかいてのひら、あかいけつえき、あかいほおべに。魅惑的な果実のつぶつぶ。煌めく血筋の歴史。緋色に輝くビーズのようだ。

  『Knockin’ on your door』

ノック、ノック、ノック、これは壁なのか、扉なのか。どこへ通じる道が向こう側で待機しているのだろう。

Q1.ワタタチ
   ドコノ蛇口ジャグチカラナガレデ
    ドコノ排水溝ハイスイコウエテユ

Answer.((聴診器チョウシンキミミマシ)             (鼓動コドウ音楽オンガク、)------ムネグ)

((past)……
   (present)……
       (future)……)

 『Do you have the time?』
 『What on earth is the definition of “time ”?』

罠にかかった時間を捕まえるのは、透明なキューブboxの内部をつかむこと。搔き分けて、搔き分けて、宙を泳ぐ金魚をつかめ。伸び続けたひげよ、さらば。過去を切断してゆく。ちらつく金魚の影を浮いた俎板のうえで、小口切りにする。散らばっては、また集まり、また散らばってゆく空模様。永遠のなかの一瞬、一瞬のなかの永遠。

(シャッターチャンス:5、4、3、2、1、)

((((ズームイン)

一匹の金魚は、来世の君だ!Flash!

『catch and release……』

金魚飛びこむ水の音

(ズームアウト))))


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、noruniruさん)
photo2:unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

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