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「貸す前提の自宅建設」は、良質な収益物件になるかもしれない

こんにちは! 若橋未央です。
私達家族は2022年12月、夫の故郷・宮崎に注文住宅を建てて、移住を完了しています。子ども達が独立する15年後~、自宅を貸家にして住み替えを夢想するアラフォーです。

少し前の記事で、「注文住宅の出口戦略を『貸す』として建設する場合、長持ちすること、メンテナンス性の良さという目線が強くなる」ことに触れました。

今回、この点をもう少し深く考察してみましたのでご紹介します。

大家さんに憧れていた私

「子どもが独立したら住み替えをして、自宅(マイホーム)を賃貸物件として貸し出す」ということは、築古戸建の大家さんになる、不動産賃貸業を営むということでもあります。

築古戸建の大家さん、といえば、物件を仕入れて(買って)、リフォームして貸し出すという方法が、不動産投資の手法として人気です。
(新築/中古、マンション・アパート一棟等いろいろと種類がありますが、ここでの話題は中古戸建にしぼります)

ちょっとSNSを検索すれば、土地値以下で仕入れた物件を工務店ばりのDIYで大規模リフォームする、凄腕の大家さんたちであふれています。
DIYはしないと公言される兼業大家さんも、売りに出される収益物件のチェックに目を光らせ、銀行とお付き合いし、リフォーム業や不動産業のプロたち、入居者さんに対してオーナーとしてキビキビ対応していて……、眩しいの一言です。
私も憧れていた時期がありましたが、諸事情で断念しています。

しかし今、「貸家にする前提で自宅を建設し、大切に住む」ことで、将来、スゴイ大家さんと肩を並べられる、収益性が高い中古物件が手に入るのかも…? という希望を持っています。

新築時点で、長期使用を前提にできる

中古戸建の大家さん達がとにかく気にするもの、それは「建物の状態」です。家を傷める雨漏りがないか、シロアリ被害がないか、屋根や外壁に傷みがないか。

建物そのものの状態が良く、壁紙などの張替え、キッチン入れ替えなどの部分的なリフォームで済む良質な物件を、大家さんは探しています。
しかし、建物内部(壁の中とか…)の確認は限界があります。自らの物件眼を養う、知識のある不動産屋さんや住宅診断(ホームインスペクション)の力を借りる必要があります。かつ、良質・割安な中古物件は、人脈と縁とスピード勝負で買い付け申し込みをしなければなりません。
初心者には、分が悪すぎる。。。

しかし、新築から所有している自宅はどうでしょう。他者に取られることなく、大家さん(将来の自分)が望む状態を、新築時から考慮し、マイホームとして恩恵を受けながら、時間をかけてメンテナンスできます。良質な中古住宅を育てているともいえます。

雨漏りしにくい作り、素材の家

注文住宅なら、まず、そもそもを「長持ちさせやすい作り」にできます。

新築時なら、雨漏りがしやすい屋根形状(とくに平らな陸屋根)を避け、雨漏りしやすいバルコニーをなくす選択をとれます。軒を延ばせば、雨漏りしやすい屋根と壁の継ぎ目を雨から守れます。

そして、雨漏りに強く耐久性がある仕様の屋根材、壁材を選べるのも新築時だけです。

屋根材はスレート瓦よりガルバリウム鋼板、さらに瓦の順に耐久性が増します(その分初期費用もあがります)。スレート瓦は施工は安価ですが、台風などで傷みやすく、傷まなくても新築から10年で防水塗装が必要なので、長く住む・貸家にするなら、ガルバリウム鋼板や瓦にしたほうがよさそうです。

屋根材の下に敷き、二段構えで雨の侵入を防いでいる防水紙シート(ルーフィング)も重要。経年劣化で固くなった防水紙は破れやすくなります。
10年雨漏りしない最低限の設計である「アスファルトルーフィング」ではなく、「改質(ゴム)アスファルトルーフィング」以上のグレードで防水紙を選ぶのがいいと思います。この防水紙のグレードアップは家1軒数万円で済む程度で、コスパがよいそうです。

若橋家は雨漏りリスクが低めの、軒を出した切妻屋根、バルコニーなしです。(ガス乾燥機・乾太くん使用、布団は庭で干せる。)
屋根材は標準のスレート瓦から課金して変更、ガルバリウム鋼板の「ヨドHyperGLカラー 萠」に。防水紙は標準でゴムアスファルトルーフィングでした。
なお、若橋家の外壁材は標準仕様から塗膜30年保証のサイディング「トステム モザイクストーンVZ」を選択、外壁材と窓枠の境目などを埋めるシーリング材は標準で15年ひびわれ保証のものになっています。

若橋家の仕上げ表の一部。屋根材、外壁材
採用したガルバリウム鋼板の屋根&サイディングの外壁

耐震・耐風性能を高めた頑丈な家

自分達がまず15年20年と住み、そのあとも貸家として20年30年働いてもらう家なら、その50年以上の寿命の間に、大地震や大型台風との遭遇は1回…では済まない、と考えるのが自然です。
新築で建てるなら、複数回災害に見舞われても、修理不要・ごく軽微な修理で済む、頑丈な家にしておきたいものです。

というのも、災害のあとは修理ラッシュで業者さんがパンク、激しい順番待ちになります。「倒壊しなかったけど一部損壊、修理が必要な家」というのもなかなかのリスクで、応急修理を受けることさえ、1年以上待つことがあります。
その間に強雨も台風も複数回あるでしょう。屋根や壁の損傷部から雨漏りして家が傷んでいく2次被害も想定されます。
順番待ちの修理を長く待つのは神経がすり減りそうです。我慢が難しい子どもたちがいれば、なおさら…。

その心配を極力減らせる、複数回災害に遭っても修理不要で住み続けられる家は、自分達が住む間も、貸家にして大家さんになったあとも、安心で希少性が高いものです。

もちろん、家の頑丈さ以前に、家が建つ地盤の強さや、浸水や土砂災害のリスクが少ない立地を選んで家を建てる、というのも超大切。私たちは、ハザードマップオールクリアを必須として土地を選びました。

地震・強風に強い家のものさしとして、2000年から始まった「住宅性能表示制度」で定められた、耐震等級と耐風等級があります。

耐震等級は1・2・3の3段階。
等級1が現行の建築基準法で義務となっていて、震度5強で損傷しない、震度6強~7でも(損傷しても)倒壊せず、逃げ出せて人命が助かる、という強さを示します。
耐震等級3は(耐震等級1)の1.5倍の力に耐える家の強さです。2016年の熊本地震では、震度6強・7が2回起こった地域でも、耐震等級3の家屋は16棟中14棟が無被害だったという報告があります。

耐風等級は、1・2の2段階。
等級1が瞬間風速50m/秒の力に耐える現行の建築基準法で必須の強さ、等級2がその1.2倍の力に耐える強さです。
2019年、関東に上陸した房総半島台風(台風第15号)では、千葉県千葉市で57.5mの瞬間風速を記録しています。被害はすさまじく、修理依頼が殺到して、5年待ちになっている町もありました。

若橋家の作りは、耐震等級3、耐風等級2。「許容応力度計算」という方法で、家の基礎・木材・部材など1つひとつ、外部から強い力がかかったときに耐えられるか、精度高く確かめて設計されています。


災害で壊れないことも大切ですが、災害で年単位の修理待ちに巻き込まれることなく、日常生活や家屋の貸し出しを継続できる安心というのも大切だなと思います。

シロアリ対策を強化した家

シロアリに木材を食べられてスカスカになっては、新築時に設計した強さも意味なし、水の泡です。
1995年の阪神淡路大震災では、シロアリ被害があった家屋に倒壊が多かったという調査複数あります。
新築時なら、このシロアリ対策を手厚くできます。

シロアリ対策には、薬剤散布や、シロアリの侵入防止シート、シロアリが生息しづらい工法の基礎にするなど、さまざまな手段があります。
どれを選ぶにしろ、新築時がいちばん手を打てます。

シートは基礎の下に埋めてしまいますし、基礎の工法も選択できるのは最初のみです。薬剤も組み立て前の木材に施工できます。
最初の時点で、大幅にシロアリリスクを減らしておいた家屋は、経過観察・メンテナンスしながら、長く貸家として働いてくれそうです。

若橋家は、建物の基礎下にシロアリ忌避の薬剤入りシート(ターミダンシート)、シロアリリスクを減らす仕様の建物基礎(Joto基礎断熱工法)、ホウ酸薬剤(エコボロンPRO)、の三重対策になっています。基礎の工法と薬剤は工務店さんの標準です。薬剤シートは施主から要望してオプション追加しました。

傷みを早期発見・早期メンテできる

冒頭に述べましたが、中古戸建を仕入れる大家さん達がとにかく気にするもの、それは「建物の状態」です。

建物状態は、情報の非対称性(格差)がめちゃくちゃあります。
建物がどのように建てられたか、いつどのようなメンテナンスをしたのか、現在どのような状態か…情報が膨大すぎます。
私自身、新築の情報だけでも膨大で、正直、書類の内容を把握しきれていません!ここにメンテナンス記録も追加されていくと思うと、気が遠くなります(笑)。
これらの記録、中古物件ではきれいに残っていないことが大多数のようです。

仮に、記録が残っていても、それを、申し込み前・内見時ですべて借り受けて閲覧するのは不可能だと思います。仮に仮に閲覧できたとしても、良い物件はライバルが多く、申し込みのスピード勝負ですから、記録を見ずともリスクをとって「買い」と判断し、買い付けた大家さんのものになります。

表面だけきれいにリフォームされていて、中は傷んでいた物件を買ってしまった場合、想定外の出費がかかります。

自分が建て、自分でメンテナンスを重ねた物件を貸家にするなら、情報はすべて自分が持っていますから、この情報の非対称性はありません。
そして、メンテナンスは、傷んでいるところの早期発見・修繕が、結果的に傷みの拡大・修繕費用のふくらみを防ぎます

マイホームを新築後、「将来、貸家にするかもしれないな」という気持ちで、四季折々、家のようすを気にかけながら早め早めにメンテナンスすれば、結果的に低コストで、貸家にした時の資産価値を高められます。


今回の記事は、「貸す前提の自宅」は、凄腕大家さんたちが手に入れられない、良質な収益物件をゲットできるチャンスかもしれない、という考察でした。

次の記事では、土地家屋を手放す・取得するコスト(おもに税金)について確認しています。所有する自宅をそのまま貸家にシフトすると、凄腕大家さんたちと競合しないかも…という希望も考察していますので、よろしければどうぞ。



この記事は、加筆・再編集して、2023年秋までに、若橋家の家づくり記録としてkindle本にまとめようと考えています。
興味をもっていただけましたら、そちらもぜひご覧ください。

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