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生成AIの収益化で先行するマイクロソフトと追随するアルファベット

 生成AIが市場の関心事であり、これに賭けている企業は数多いが、収益化に成功して先行しているのはマイクロソフトのようです。グーグルの親会社アルファベットのCEOであるスンダ―・ピチャイ氏は、生成AIツールで収益化を成し遂げると確信していますが、マイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラ氏は、それを既に達成していると言います。
 ナデラ氏はマイクロソフトのGitHub Copilot(エンジニアがソフトウェアコードを書くのを助ける生成AIツール)の顧客数が180万人に増えたと語りました。これは、前の四半期と比べると130万人増です。
 「Fortune 500」の企業のうち、60%がMicrosoft Office 365のCopilot(生成AIを使用して従業員がメールやドキュメントを書くのを助けるバーチャルアシスタント)を使用しており、65%が「ChatGPT」をつくったOpenAIの生成AIソフトウェアにアクセスできる「Microsoft Azure Cloud」のサービスを使用しているといいます。ナデラ氏は、「AzureはAIプロジェクトを行っているほぼすべての人にとって呼び水になっている」と話しています。MicrosoftがOpenAIに投資した130億ドルは、これらのクライアントを獲得するのに確実に役立っているようです。
 AIサービスへの関心の高まりにより、マイクロソフトの最大部門であるクラウドサービスの収益は前年比で7ポイント上昇しました。これにより、マイクロソフトの売上高は17%増の619億ドルに達しました。ナデラ氏は、クラウド市場のシェアも獲得したと付け加えました。Microsoftが獲得した1億ドル以上のクラウド取引案件は前年同期と比較して80%増加し、1000万ドルの取引案件数は倍増しました。
 マイクロソフトについては生成AIに関する売上高が既に株価のけん引役になっています。成功に向け、絶好の位置につけているようです。Azureの1-3月期売上高は31%増で伸び率は市場予想平均の29%を上回り、前期の30%から若干上向きました。売り上げ増にAIが占める割合は約7%で、前期の6%から上昇しました。
 4-6月期成長率は30-31%の見通しです。ブルームバーグアナリスト予想の29%を上回りました。来年度の売上高と営業利益は10%強の伸びを見込んでいます。
 マイクロソフトはAIサービスの需要増に対応するため、データセンターのグローバルネットワーク拡大に多額の投資を進めており、1-3月期の140億ドルから大幅に増加すると予想しています。また、来年度の設備投資額も前年度を上回るとの見通しを示しています。生成AIが現在の市場をけん引していますが、それが企業業績に反映されているのかどうかをみる指標としてマイクロソフトの業績には注目です。
 一方、アルファベットも100万人以上の開発者がGoogle Cloudの生成AIツールを使用しているようです。生成AIスタートアップの60%がGoogle Cloudの顧客とのことです。しかし、ピチャイ氏は2月に発表された月額20ドルのサブスクリプションプラン「Gemini Advanced」にどれだけサインアップがあったかについては言及しませんでした。
 グーグルのビジネスの核はGoogle検索でしが、ピチャイ氏は、生成AIを使用してクエリ結果を要約する実験にまつわる収益の数字を共有しませんでした。実験結果によると、生成AIを搭載した検索に触れたユーザーのほうがより多くの検索をしていることがわかったと説明しました。しかし、より高度な検索を実施するための基盤技術が従来のシステムを運用するよりも高コストであるため、グーグルにとっては潜在的に利益が少なくなる可能性があります。
 ピチャイ氏はいずれの点についてもあまり懸念を示さなかったです。「これらのクエリを提供するのに必要なコスト管理については非常に自信があります」といい、「今回の収益化への移行も管理できると確信しています。時間がたつにつれて明らかになるでしょう」と続けました。
 アルファベットの売上高は15%増の約805億ドルでした。グーグルは約120億ドルの設備投資をしており、これはマイクロソフトが以前、サーバーやデータセンターなどのインフラに投資した金額とほぼ同額です。しかし、今回の決算発表とCEOたちの発言を比較すると、マイクロソフトのほうが収益化という点において先行していることが示唆されます。
 決算発表後の両社の株価は史上最高値に近い水準でした。しかし、顧客がCopilotに引き続き集まり続け、GeminiおよびGoogle検索の見通しが今より明るくならない場合、株価は異なる方向に動いていくかもしれません。

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