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くらまやまのひみつ

「おねえちゃん、テングっているの?」
小さなガラクタをはこにつめながら弟がはなしかけてきます。
「ふつうの人にはみえへんねんて・・空もとぶし・・」
『ふしぎなはなし』が大すきなさっちゃんは、
空をとんでいるテングを思いえがいてみます。
こんどの休みの日、『くらまやま』へ行くのです。

電車もバスもこんでいました。
さっちゃんは、さわがしい音がにがてです。
山がみえてくるとホッとしました。
大きな木や山が大すきなのです。
ほかとはちがうかんじがする・・
テングもホントにいるかもしれない・・・
 
その日はりょかんにとまり、広いへやでふとんをならべて、みんなでいっしょにねました。
 
夜中にさっちゃんは目がさめました。
しずかな水の音がします。
さっちゃんは耳をすましました。
すぐ近くできこえます。
さっちゃんは、となりにねているお母さんに声をかけようと、
からだをおこしました。
 
さっちゃんはびっくりしました。
うすく光る林の中にいたのです。
へやがうっすらとすけてみえます。
小さな小川もながれていました。
しずかでやさしい音がします。
きれい・・・
さっちゃんはひとりでした。
いっしょにねていたお父さんもお母さんもみえません。
でもちっともこわくありませんでした。
さっちゃんは、ただしずかにそこにいました。

気がつくと朝でした。
さっちゃんは、お父さんとお母さんにみたことをはなそうとしましたが、
できませんでした。
なんとなくいわないほうがいいような気がしたのです。
 
弟は元気にはりきって山の中をあるいています。
作っていた『たからばこ』をくらまやまのどこかにうめるつもりなのです。
「テングがみつけるかも・・・もしかしたら、みらい人がみつけてびっくりするかな!どこがいいかなあ~!」
はしゃぐ弟をみて、お父さんとお母さんはわらっています。
のぼったり下ったり、そびえたつ木をながめたり、
道ばたの草や花をみながら、さっちゃんたちは山道をたのしみました。
 
くらまやまには、お寺や神社がありました。
なんとなくふしぎなところです。
さっちゃんは、みえないなにかがいるかんじがしました。
ちょっとこわいと思うところもありました。
「ちょっとこわいかんじがするわ」
そこではお母さんもなにかかんじているようでした。
 
くらまやまでのことは、さっちゃんのひみつになりました。
ことばではうまくいえないし、なによりもあのできごとは、
さっちゃんの大すきな『ふしぎなはなし』へつながっているような
そんな気がしました。
さっちゃんだけのくらまやまのひみつの思い出です。

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