"Wait for Me and Remember Me"(1983年、旧ソ連)


このアルバムは80年代にヒットした旧ソ連の歌謡曲・ポップスのオムニバス盤である。ワレリー・レオンチェフ、ウズベキスタン出身のユーリー・アントノフ、デヴィッド・ツクマノフ率いるバンド「モスクワ」、そしてロシアン・ポップスの女王であるアーラ・プガチョワ(代表曲「百万本のバラ」も収録されている)など、当時の旧ソ連ポップス界がどんな様子だったのかを垣間見ることのできる興味深いレコードだ。
4曲目でアーラ・プガチョワは"Wait for Me and Remember Me"というナンバーを歌っているが、彼女のため息のようなエコーのかかった声がジャケットに写った当時の旧ソ連のノスタルジックで幻想的な夜景とシンクロして聴こえる。街灯の明かりがノスタルジーをさらに感じさせるが、知らない外国の街の夜景を飛行機から着陸する寸前に見るような気持ちと似ている。
家がジャケットの写真に写っているが、どんな人がそこに住んでいたのだろうか。そこに住んでいる人もプガチョワの曲をテレビかラジオか何かで聴いていたのだろうか。道路に車や人がひとつも見えないが深夜に撮られたものだったのか。この頃のソ連は深夜に外出することは禁じられていたのだろうか。83年という年はアクワリウムやキノーといった政府非公認のバンドがアンダーグラウンドで台頭してくる時期であるが、写真にあるような家で密かにレコーディングやライヴを行っていたのだろうか。そして何よりも、共産主義の閉塞的な雰囲気でどんな気持ちで日々を過ごしていたのだろうか――と、想像は尽きない。
たまに聞く話だが、旧ソ連時代の方が今のロシアよりも物資の面などで豊かだったらしい。しかしこの風景は今のロシアでも見られるものなのか。もし可能であれば是非とも行って見てみたい。

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