トゥレペ「サムルノリ」(1987年、韓国)


サムルノリとはキム・ドクスによって提唱された、農楽(ノンアク)という韓国の伝統的打楽器音楽を現代風に解釈した音楽である。伝統的な楽器を用いていながらも1970年代と比較的最近考案された音楽のため、純粋な伝統音楽と混合しないように注意すべきである。
このトゥレペというグループにキム・ドクスは関わってはいないようだが、サムルノリを継承した80年代のグループだ。このアルバムは録音方法が面白く、マイクに近い楽器の音は大きな音で聞こえ、マイクから離れた楽器の音は小さな音で聞こえる。それがどうしたと突っ込まれるかもしれないが、世界の民族音楽・伝統音楽の録音にはどの楽器もバランスよく同じ音量で録音されているものが少なくない。それは悪く言うと「わざとらしい」録音であり、臨場感に欠ける録音方法である。トゥレペの演奏はやはり距離が近い楽器(ないしは声)だと大きく聴こえ、距離が離れていると小さく聴こえ、自然な臨場感がある。自分もその場にいればそう聞こえるよな、と納得させてくれる音盤だ。絵画で例えれば遠近法がしっかり意識されている風景画だ、というべきか。
なお、A面2曲目「ウンヌプンリ」は歌をフィーチャーしているが、作曲したのはこのブログでも何度か紹介した韓国のロックアーティスト、キム・テゴンである。

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