「若者の声が生きる社会を求めて:大津綾香党首の台湾総統選挙視察レポート」
令和6年4月3日、台湾で発生した大規模な地震は、多くの犠牲者を出し、甚大な被害をもたらしました。この悲劇の数ヶ月前、総統選挙直前の重要な時期に、みんなでつくる党の大津綾香党首は台湾を訪れ、政治家や地元の人々と交流を深めました。
今回のインタビューでは、その訪問で得た経験と新たな発見について大津党首に語っていただきます。冒頭、被災に遭われた台湾へのメッセージから始まります。
〜台湾へのメッセージ~
〜訪台の目的と成果について〜
今回の台湾訪問では具体的にどのような目的がありましたか?
――日本とは違い期日前投票や在外投票制度がないにも関わらず、非常に高い投票率を誇る理由を考えるために伺いました。教訓としては政治参加にもっと気軽な意識を持ってもらう、選挙を楽しいイベントにしていく空気づくりを進めていこうと思いました。
(注)日本の在外投票制度は、海外在住の日本国民が大使館や領事館で投票できるようにするものです。
〜台湾の総統選挙と政策〜
台湾の総統選挙についてですが、候補者や政策にどのような印象を持たれましたか?
――台湾の公用語は中国語なのですが、民進党支持者は台湾語を話す本省人(台湾に本籍がある人)が多いそうで、ワーキング・クラスの支持が厚いようでした。親しみやすい印象や共感を呼ぶようなプロモーションがとても参考になると共に女性やジェンダーレスな議員が多く所属していたのも印象的でした。住宅価格高騰によるローンの引き下げなどを主張していました。
国民党の支持層はもう少し堅い印象で、演説会場に集まる人や政党CMなどを見てもその違いが明らかでとても面白かったです。経済政策の意味でも中国に対しては対等なパートナーシップやFTA(自由貿易協定)を拡大していくこと、兵役短縮を主張し、総統選に出ていた候氏は元警察官僚であり、台湾にもある汚職問題にメスを入れてくれるのではとの期待の声が聞かれました。
国民党から分裂してできた民衆党の代表柯氏は元台北市長でネット戦略に長けた、話が面白い人物との評判でした。若者に圧倒的支持を得ていて、ラップを歌ったり、持たざる若者の不満や閉塞感に訴えるような政策が多かったです。
政党カラーのブルーがみんつくブルーで親しみを覚えました(笑)。支持者の若者が小さな木の芽のような草のアクセサリーを頭につけていたので何か?と聞いたら、一人一人が草を植えると、草原になるという意味だそうで、素敵でした。
(注)台湾の政治体制は半大統領制と呼ばれ、国民によって直接選ばれる総統が広範な権力を持つ一方で、行政の運営は行政院長(首相)が率いる内閣が担い、立法院(議会)との協力が必要なシステムです。主な政党には民主進歩党(DPP)、中国国民党(KMT)、台湾民衆党(TPP)などがあり、それぞれが異なる政策や台湾の将来ビジョンを提案しています。2024年の台湾総統選挙では、民主進歩党(DPP)の賴清德氏が勝利しました。
〜デジタルツールの活用〜
台湾で見られたデジタルツールの利用について、特にSNSを活用した政治キャンペーンの効果をどう評価されますか?
――中国による台湾へのデジタル選挙工作が大きな問題となっていて、特に民進党に対して、台湾政府や政党関係者の信頼を歪めるために行われる、大量の偽アカウントを使いフェイクニュースのスパムフラージュに対応するため、台湾ではサイバー攻撃対策に力を入れているようでした。
デジタルによる印象操作は世界中で行われていて、政局や株価にも大きな影響を及ぼします。日本もサイバー対策の強化が必要だと考えます。
日本の若者に対しては、私自身が政治参加 を促すYouTube広告を見て政治の世界に入ったので、SNSなどを活用した候補者募集や、選挙対策を進めたいと考えています。
また、候補者はデジタル選挙工作とも言える、ネットの誹謗中傷のターゲットになってしまうこともあるため、懲罰的損害賠償請求を日本でも認めるなど、厳罰化などで対応していくことも重要です。
(注)スパムフラージュは、本物のコンテンツに見せかけたスパム行為で、フェイクニュースや偽情報を正当な情報として隠す手法です。
〜台湾の政治環境との比較〜
「日本と台湾の政治環境にはどのような違いがあると感じますか?特に、若者の政治参加に関して、台湾の取り組みから学べる点はありますか?」
――台湾では「ひまわり学生運動」のような若者が政治運動を起こして、国の重要な政策をひっくり返したという成功体験があります。
徴兵制など、自分にとって身近なテーマがあることが投票行動に結びつきやすい理由でもあり、民主主義の重要性を教育や歴史からしっかり学んでいるのが、日本との大きな違いであると考えます。日本の民主主義は与えられたものであって勝ち取ったものではありません。民主主義の価値、自ら考え行動していくことの大切さを教える主権者教育も重要だと考えます。
また、台湾で感じたのは選挙が楽しい!という空気感です。大きな野外会場に10万人以上の人が集まり、仮装をしたりブブゼラを鳴らしたりしながら演説や、間奏で流れる音楽を楽しんでいます。皆、自分の応援する政党や愛国心に誇りを持って暮らしていることが伝わってきました。
これは私がアメリカ留学当時に感じたことでもありますが、スポーツ観戦と同じくらいの熱量で政治について皆語るということ。日本では政治の話はタブーという風潮がありますが、それをなくしていく社会の雰囲気づくりが大事だと考えます。
(注)ブブゼラは、主にサッカーの試合で使われる、大音量の音を出すプラスチック製のラッパです。
〜国際関係と若者の政治参与〜
国際関係、特に日本と台湾、そして他国との関係が若者の政治参加にどのような影響を与えていると思いますか?
――日本と台湾は、経済的、文化的な結びつきが強く、他国との関係性を考えても重要な地理的関係にあると思います。安全保障の協力を続けていくことはもちろんですが、これからも若い世代が積極的に文化交流を行い、結びつきを深めていくことで、共に経済発展や技術協力の道を歩めるのではないでしょうか。
〜世代間の政治的意識の違いと解消策〜
日本と台湾で、若者と高齢者の政治意識にどのような違いを感じていますか?この世代間のギャップをどのように解消すべきだとお考えですか?
――これは日本も台湾共通して言えることだと考えますが、高齢化社会です。お互いの価値観の溝を埋めるために、地域のコミュニティを発展させ、社会活動などを通じて交流、対話を図っていくことも重要だと思います。
〜若者の投票率向上の戦略〜
日本の若者の投票率が低い原因は何だと思われますか?また、それを改善するための具体的な戦略があれば教えてください。
――政治への信頼回復や政治参加のハードルを下げること、主権者教育の推進をしていくことも大事だと思います。また、投票へのアクセス性の悪さも投票率の低い大きな要因だと考えます。
大学やショッピングモールに投票所を構えるだけでも期日前投票数が飛躍的に伸びたデータもあります。マイナンバーカードの活用でネット投票の実現も十分に可能であると考えるので段階的にでもネット投票の実現を積極的に訴えていきたいです。
それから投票方式にドメイン方式の採用を提案します。ドメイン方式とは未成年の1票を親が投票するという考え方です。
子育て世代の意見が反映されやすくすることは重要ですし、子供にとっても自分の1票を両親に預けるわけですから、家庭内で政治の話が活発に行われるきっかけになると考えています。
また、台湾では投票前夜に10万人規模の人が集まるフェスティバルのようなイベントを開いています。若者の関心を高めるには、楽しい、参加しやすい環境を作っていくことはとても重要ですね。
〜政治への若者のエンゲージメント手法〜
政治への若者のエンゲージメントを高めるために、台湾視察で学んだ効果的だと感じた手法は何ですか?
――若者が直面している社会課題と向き合い、政策に取り入れていくこと、そのためにも若い議員を増やしていくことが重要だと思います。台湾には若い世代や女性の議員が本当に多いです。
シルバー民主主義の世の中で、若者の1票は政治のマーケティングでは軽んじられているように日本では感じることもありますが、そう感じさせてしまうことがますます政治離れを生んでいると思うので、積極的政治参加をしてもらうために、政治家が若者の声を聞く姿勢を強く持つべきだと感じました。
(注)シルバー民主主義は、高齢者の比率が高く、その結果として高齢者の政治的影響力が大きい社会のことを指します。
〜視察の費用について〜
視察の費用についてネットで話題になっていますが、これは党務での訪問だったのですか?費用はどのように賄われていますか?
――党務として訪台しました。アテンドしてくださった政治家の方が一時的に負担をしてくださっています。
〜日本からの台湾観光について〜
日本からの観光客にお勧めしたい場所や、台湾のグルメについても教えていただけますか?
――今回の訪問では、候補者の出現情報を朝からタクシーで追いかけていたので、観光やおいしいものを食べる時間はなかったのですが、屋台フードの葱狐餅(葱油餅)をいただきました。訪台は2回目ですが必ず食べるべきおやつです!薄く伸ばした小麦がカリッとしていて中がもっちり。チーズや卵やネギなどが入っています。日本でも食べたくてウズウズするほどおいしいです。
〜若者へのメッセージ〜
最後に、政治に関心を持ち始めたばかりの若者たちに向けて、何かメッセージをお願いします。
〜インタビューを終えて〜
インタビューを通じて、大津綾香党首は台湾の政治や社会、デジタルツールの活用について多くの洞察を得たと語っています。特に、政治参加を促進するための教育や若者の意見を政治に反映させる重要性を強調されています。また、台湾の若者が直面する社会問題への取り組みに注目し、日本でもこれらの経験から学ぶべき点が多いと感じ取られたようです。
この視察は、日本の政治や社会活動への新たなアプローチを模索する貴重な機会となったのではないでしょうか。
私たち「みんなでおうえん会」はこれからも、大津党首や党の活動のご紹介を通じながら「みんなでつくる党」を応援していきます。