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マリナーズ2023ドラフトピックス

初めに

 現地7月9日、シアトルのルーメン・フィールドにて2023年MLBドラフトの1日目が開催されました。マリナーズは通常の1巡目指名権に加え、プロスペクト・プロモーション・インセンティブ・ピック(フリオ・ロドリゲスの新人王獲得によるもの)及びコンペティティブ・バランス・ピックAによる追加の1巡目指名権を2つ得ており、計4つもの指名をする機会がありました。この投稿では、このドラフトDay 1の指名選手を紹介します。

マリナーズのドラフト傾向

 指名選手の紹介の前に、マリナーズの近年のドラフト傾向を振り返ります。

ディポート政権下でのドラフト1位指名
16年全体12位:カイル・ルイス(OF)メーサー大
17年全体17位:エバン・ホワイト(1B)ケンタッキー大
18年全体14位:ローガン・ギルバート(RHP)ステットソン大
19年全体20位:ジョージ・カービー(RHP)イーロン大
20年全体6位:エマーソン・ハンコック(RHP)ジョージア大
21年全体12位:ハリー・フォード(C/OF)ノース・カッブ高
22年全体21位:コール・ヤング(SS)ノース・アレゲニー高

 ディポート政権となってからのマリナーズは、16年から20年にかけては大学生偏重のドラフトを行っていましたが、21年以降に方針を展開し、上位指名権の多くを高校生の指名に費やしています。
 傾向としては、センターラインを守ることのできる身体能力の高い選手や、若い選手(ドラフト時点でもまだ17歳の高校生)の指名が多いです。

21年
1巡目全体12位:ハリー・フォード(C/OF)ノース・カッブ高
2巡目全体48位:エドウィン・アローヨ(SS)セントラル・ポインテ・クリスチャン・アカデミー(高校)
3巡目全体83位:マイケル・モラレス(RHP)イーストペンズボロ高
22年
1巡目全体21位:コール・ヤング(SS)ノース・アレゲニー高
2巡目全体58位:タイラー・ロックリアー(1B/3B)バージニア・コモンウェルス大学
2巡目補完全体74位:ウォルター・フォード(RHP)ペース高

 そして今年のドラフトにおいても、複数の1巡目指名権を保有していることをいかして、ハイポテンシャルな高校生を複数指名することを目論んでいる、という噂が流れていました。実際にはどのような選手を指名したのか、見ていきましょう。

指名選手紹介

1巡目全体22位:コルト・エマーソン(SS/3B)ジョン・グレン高

Hit: 60 | Power: 50 | Run: 50 | Arm: 55 | Field: 50 | Overall: 50 (MLB.comより引用、以下同様)

 エマーソンは、無駄が少なく安定したスイングから広角にラインドライブを打ち分けることのできるピュアヒッターです。現状はギャップヒッターですが、バレルを生み出す技術やスイングスピードも備えているため、将来的には20本塁打以上を記録することのできるパワーポテンシャルも秘めています。
 一方の守備は、SSに残れるだけの運動能力はあるものの、傑出したツールに欠けるため、将来的には3Bまたは2Bへのコンバートされる可能性が高そうです。
 昨年9月のワールドカップではU-18アメリカ代表の3Bとして、打率.360の活躍でチームの優勝に貢献しています。

 去年の1巡目指名であるコール・ヤングとかなり特徴の似た選手であるという印象を受けますね。ヒットツール&身体能力ではややヤングに、パワーポテンシャルではエマーソンに分がありそうです。
 そして、7月20日に18歳の誕生日を迎える、マリナーズが好んで指名する若い選手でもあります。

1巡目全体29位:ジョニー・ファーメロ(OF)ウェストフィールド高

Hit: 50 | Power: 50 | Run: 60 | Arm: 50 | Field: 50 | Overall: 50

 ファーメロは、ダブルプラスとも言われるスピードが最大の武器である、5ツールプレーヤー候補です。
 優れたスイングスピードから広角にバレル性の打球を打ち分けることが可能で、パワーには大きな伸びしろがあります。球種の見極めや速球への対応にも定評があり、将来的にはクリーンナップを任せることのできる打者へと成長する可能性を秘めています。
 傑出したスピードをいかした守備では広大なレンジを誇り、肩にも問題はないため、長期的にCFにとどまることができそうです。

 目を通していたモックドラフト記事のいくつかで、「マリナーズが積極的にスカウトしている」という情報が出ていたファーメロでしたが、噂通りの指名となりました。バージニア大へのコミットメントから、オーバースロットでの契約となる可能性もありそうです。

1巡目全体30位:タイ・ピート(SS)トリニティ・クリスチャン高

Hit: 45 | Power: 55 | Run: 60 | Arm: 60 | Field: 55 | Overall: 50

 傑出したバットスピードと身体能力が光るピートは、ドラフトが近づくに連れてスカウトたちからの評価が上がっていた選手です。昨夏までは投手として最速95マイルも記録していたアスリートで、SSにとどまることができるだけの強肩と守備範囲の広さを備えています。6フィート2インチ(約188センチ)、190ポンド(約86キロ)の体格が成長することがあれば、3BもしくはOFへとコンバートされる可能性もありそうです。
 早いカウントから積極的に振っていくスタイルで、パワーポテンシャルは平均以上と評されます。一方で、プルハッピーなアプローチや、ハイレベルな投手相手に対してコンタクトすることに苦しむなど、ヒットツールには多くの改善点が残されています。

 ファーメロに続き、青天井のアップサイドを追った指名となりました。ちなみにピートも8月11日に18歳になる若い選手です。
 マリナーズが上位で指名する高校生野手は、ヒットツールには定評があるタイプばかりだったので、コンタクト能力に明確な課題のあるピートの指名は少し意外でした。修正に自信があることの表れなのでしょうか。

2巡目全体57位:ベン・ウィリアムソン(3B)ウィリアム・アンド・メアリー大学

 CAAというマイナーなカンファレンスでのプレーにはなりますが、ウィリアムソンは55試合で.391/.513/.662/1.175、12本塁打、40四球、22三振という圧倒的な成績を残しています。また、エリートの集うケープ・コッド・リーグでも9試合のみの出場ではあるものの、.394/.462/.515/.977と結果を出しています。
 パワフルなバッティング、成熟したアプローチ、プラスともいわれる3B守備が光る、アンダースロット要員としては十分な魅力を備えた選手です。
 
 ここでアンダースロット要員が指名された理由が気になりますね。1巡目指名の高校生3人との契約のために必要なのか、それとも2日目以降にスリップしてきた選手を指名するためなのか。明日以降の指名に注目です。
 ちなみにマイナーカンファレンス出身の強打の内野手という点は、昨年のドラフト2巡目指名、ロックリアーと共通します。

終わりに

 以上2023年ドラフト1日目のマリナーズの指名選手の紹介でした。
 とてつもないアップサイドを秘める一方で、リスクもかなり高い指名になった印象を受けます。近年のマリナーズはプロスペクトの育成が非常に上手くいっているので、彼らも同様に育て上げられることを願うばかりです。
 マリナーズは現在45勝44敗、ワイルドカードまで4ゲーム差とポストシーズンを狙うことができる位置にいます。今回のドラフトで新たに3人の1巡目指名選手が加わること(加わるはず)によって、マリナーズのマイナー組織は更に厚いものになりました。昨夏のルイス・カスティーヨのトレードのような、大きなインパクトをもたらすことができる大型トレードを、今年も敢行する可能性が十分考えられます。トレード・デッドラインも非常に楽しみですね。
画像:Mariners




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