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【無料】基礎から分かる水産用語<142> 黒はんぺんとは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


黒はんぺんとは

 静岡県焼津市を中心とした静岡の郷土料理。サバやイワシ、アジなどを原料にしたねり製品で、一般的に半月形の形をしている。灰色の見た目が特徴的だ。

 焼津蒲鉾商工業協同組合(同市)によると、黒はんぺんの歴史や由来は詳しい文献があまり残っておらずはっきりとは分からないが、江戸時代には駿河湾に漁に出た漁師が、大量に魚が獲れたときのの料理方法として、すり鉢で摺(す)って湯に入れて加工していたという。カツオ節業者が家業のかたわら作り始め、専門に製造する業者が誕生したのは大正8(1919)年ころとされている。

 同組合によると、焼津にはサバの水揚げが有名な小川漁協があるため、市内ではサバをメインの原料として黒はんぺんを製造する加工業者が多くを占める。一方、由比などの静岡市エリアではイワシを主な原料にすることが多いという。

 焼津市内の加工業者によると、黒はんぺんは骨や血合い、皮も丸ごとすりつぶすため、灰色の見た目になる。食感は白はんぺんと比べ固く、香ばしい。地元の代表的な食べ方はフライやおでん、焼いてショウガじょうゆで食べるなどで、「そのまま食べてもおいしい」と加工業者。同組合によると、黒はんぺんを製造するメーカーは現在、焼津市内に5社あるという。

みなと新聞本紙2023年8月29日付の記事を掲載