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僕の小規模な退職 その49

電話が苦手だ。
電話を掛けるのも電話に出るのも。

昨日、床屋で髪を切った。
約3か月振りの散髪。
伸ばしっぱなしにしていたのには色々理由がある。
「別に誰に会う訳じゃないし」とか。
「なんか面倒。億劫」とか。
もう一つ理由がある。
「予約のために電話するのが嫌」
だ。

そのくらい電話が嫌い。
だからプラっと予約無しで行きたい。本当は。
でもそれだとお店に迷惑が掛かってしまうかもしれない。
混んでいたり、予約で埋まっていたり。
そんな時にプラっと来店されたら迷惑が掛かるかもしれない。
タイムスケジュールの調整だとか。
「今日はちょっと予約で埋まってて~」なんて言わせてしまったりとか。
色々と気を遣わせるかもしれない。
「ちょっと面倒だな」とか「忙しいのに」とか「電話予約してよ」って思わせてしまうかもしれない。
相手だって人間なんだ。
それくらい思って当然だ。
そして心の中でそんな風に思いながらも決して表に出さないようにするかもしれない。
表に出さないようにさせてしまうのだ。
そんな風に表に出さないように隠させてしまっていても察してしまう。
声のトーンとか目の動き、表情とかで敏感に感じてしまう。
そうなると申し訳ないという気持ちになる。
いたたまれなくなる。
電話予約しなかった自分を責めたくなってしまう。
枕に顔うずめてしまいたくなる。
だから電話予約した方が良いのだ。
それはわかっている。
自分にとっても待ち時間無しというメリットだってある。
それもわかっている。
でも。
それでも。
電話が苦手で電話を掛けるのがイヤなのだ。
だから髪を切らずにいたという事実もある。
その結果、モサモサのボサボサだったのだ。

イヤな事をするのは本当に嫌。
あーだこーだと色々考えて行動に時間を要するのだ。
そして最終的に行動しなかったりする。
無駄な時間を過ごす事になってしまうのだ。

そんな自分の癖を誰よりも自分自身は心得ている。
だから昨日は何も考えずにスマホの発信ボタンを押した。
押しちゃえばもう次のステップにいかなければならない。
相手方が出る。
通話の始まり。
もう、こうなったら最後。
要件を言うしかない。
大丈夫。もういい大人だ。
そのくらいはちゃんと出来る。
そう、通話が始まっちゃえばなんとかなるのだ。
別に電話なんてコワいものじゃない。
会話が始まれば要件を伝える事ができる。
同じ言語を話す相手なんだ。
会話は成立する。
案の定、問題なく通話できた。
やればできる。
やらないとできない。

それでも電話は苦手。
いつからこうなんだろう。
学生時代にPHSを持ち始めた。
いつからかケータイに変えた。
そして社会人になった。
だから電話はずっと身近にあった。
その頃は電話嫌いじゃなかったような気がする。
それもそうか。
通話する相手は知り合いばかりだものな。
社会に出てからか。
いや。
30代後半くらいまでは平気で電話してた気がする。
躊躇なく電話できていた気がする。
それ以降だ。
電話が苦手になったのは。

30代後半。
たぶん、この土地に転勤でやってきた頃からだ。
職場で疑心暗鬼になった頃からだろう。
「相手が何を考えているかわからない。」
「相手にどう思われているか分からない。」
といった恐怖心が強まったからだ。
その結果、見ず知らずの人に対しても恐怖心を抱くようになってしまったのかもしれない。
だから電話が怖いのだ。

まぁ。
でも。
電話を掛けたら問題なく会話できた。
通話相手は恐ろしくなんて無い。
「恐怖」を感じていたのは別のモノだ。
その「恐怖」を抱くものから離れたんだ。
だからもう大丈夫。
大丈夫だと自分に言い聞かせたい。

44歳。推定無職。恐怖の相手は職場

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