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【短歌&小さな物語】「台湾の河津桜」

時々は
ふっと疲れる
心あり
河津かわづ桜の
枝の病葉わくらば

「台湾の河津桜」#今日の短歌(八)

特に何か嫌なことがあったわけではない。

それでも、ふっと心が疲れることがある。

家の近くの公園に、一本の河津桜がある。

「日本の静岡県からわざわざ取り寄せた」という意味の説明が書かれている。

その桜の枝の葉が、なんだかおかしいのだ。

縮れたように丸まって、変な色をしている。

――もしかして病気なんじゃないかしら?

俳句なら、「病葉わくらば」は夏の季語になる。青葉繁れる中、そこだけ変色してしまっている病気の葉のこと。

今は十月半ばで、さすがに青葉の季節ではないが、台湾はまだまだ暑い。

日本からやってきた河津桜も、台湾の夏があんまり長すぎて体調を崩してしまったのかもしれない。

心配だ。なんだか他人事でない気がしてしまう……。

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