見出し画像

すっぴんメガネの毛玉靴下

救急外来に行ったときの話。
体がフラフラでしんどくて、タクシーを呼び出し、病院へ向かった。

救急なので、本当に忙しそうで、
バタバタという効果音が本当にしそうな場所だった。

医療ドラマが割と好きなので、よく聞くセリフが本当に飛び交ってることに、「すごい!本物だ!」と思ったりなんかもしてた。

*

長いこと待ち時間があって、ようやく呼び出されて、ベッドに横たわって、心電図とか点滴とか色々な管がわたしから生えはじめる。

お医者さんがくるまでの待ち時間があり、ぼーっと心電図を眺めたり、天井の模様を眺めたり、行き交う看護師さんやお医者さんを眺めていた。

そして、ふと気付いたの。

靴下、毛玉だらけやんけ。

*

なりふり構わずという格好で出てきてしまったけれど、一応理性のカケラもあり、ギリギリコンビニに行ける服を選んだつもりだった。

だけど、靴下は盲点だった。

あったかいがゆえに、毛玉ができやすい靴下を履いていて、年季の入った毛玉はもう取り繕えないくらいの量で、家で履くからまあいいや、なんて思って履いていた、あの靴下だった。

人様に見られるなんて、そんなことがあるかい!?
毛玉の奥にある、自分のずぼらな生活を見透かされてしまいそうで、意味もなく靴下の先を擦り合わせてしまう。もじもじ。


しかも、だ!

わたしを担当してくれていた看護師さんがきれいにまつ毛をあげた美人な方だったから余計に、すっぴんメガネの毛玉靴下は耐えがたかった。

そして、さらにさらに治療の最後の方は上の服を全部脱がねばならず、一軍落ちのブラを晒すことになってしまった。靴下に次ぐ盲点。

誰も見てないし、例えば見たって日常茶飯事で、
次の瞬間忘れるようなことだってわかっている。

でも!でも!
わたしは凄まじく恥ずかしかった。
自意識過剰といわれようが、恥ずかしいもんは恥ずかしいのだ。

一応妙齢女性なのよ、わたし。恥ずかしいわよ。

*

そんで、その時ほど「脱毛しててよかった!!!!」って思ったことはなかった。YouTubeの広告で脱毛して人生うまくいくCMがあるけれど、あれより、よほど現実的に「脱毛しててよかった!!!!」と思った。

脱毛って、きれいになるためにするのもあるけれど、
え、今!?!?みたいな瞬間に「セーフ」ってなれる保険のようなものだと思う。わたしは一昨日、そう悟った。

*

すっぴんメガネの毛玉靴下が、綺麗な人たちに囲まれても尚、
「脱毛してるから!」という最後の砦で自我を保つことができた。

こんなCMもあっていいんじゃなかろうか。

そんなずぼらなわたしは、重い腰を上げて毛玉取りを検索して、
結局「後でいいや」とブラウザを閉じるのであった…。

おわり


☆病院に行った話はこちらから↓


もし投稿など気に入ってくださった方がおりましたら、サポートいただけますと大変うれしく思います。 サポートいただいたお金は書籍代として使わせていただき、その書籍関連で記事を投稿をさせていただく予定です。