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社会問題になった「キム・ジヨン」以降の韓国ドラマが描いたもの(映画『82年生まれ、キム・ジヨン』について#2)

 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』について2回目です。韓国で原作小説が大きな社会問題になったあと、ドラマ界にも与えた影響について思うことと、いくつかのドラマ作品を紹介します。

 前回の記事「コン・ユ主演の話題作の原作は現代女性の生きにくさを描いた韓国のベストセラー小説(映画『82年生まれ、キム・ジヨン』について#1)」で、韓国で2016年に発売された小説が、女性の人生に立ちはだかる困難や差別を描き、さまざまな問題を提起したことを書きました。

 小説「82年生まれ、キム・ジヨン」によって、女性に起こりうるあらゆる問題が社会的に表面化され、それ以降の韓国のドラマは、ストーリーに社会問題を含んでいる作品がいくつか目立つようになりました。その問題の背景や社会構造、人それぞれの価値観まで、多様な視点から表現され、そうした作品に共感できることは多いです。また、主人公たちは単に弱い女性ではなく、自分の問題を積極的に突破していく姿勢を見せてくれます。

 社会の構造はすぐに変わるものではないですが、「82年生まれ、キム・ジヨン」の本が社会現象になってからは、いろいろな面で変わろうとする動きが見えるような気がします。本の論争の中心にあるジェンダーの問題から、社会的弱者の問題へと広がり、男女問わずすべての人が抱える社会問題に向き合い、改善していこうとする意識が目立ちます。ドラマのさまざまなシーンに含まれているそうした問題を、少し意識してドラマを見てみるともっと面白くなると思います。

2017年10月『この恋は初めてだから 이번 생은 처음이라』

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※写真は各ドラマの公式HPより

 88年生まれの主人公の女性3人の、異なる結婚観がよく表現されているドラマです。契約結婚ラブコメディなので、韓国版『逃げるは恥だが役に立つ』とも言われますが、同世代でも人によって違う価値観を持ち、生き方も幸せの求め方も違うということが描かれています。また、主人公ユン・ジホ(チョン・ソミン)の実家は家父長制の家庭なので、韓国の古い風習を味わえます。

2018年3月 『よくおごってくれる綺麗なお姉さん 밥 잘 사주는 예쁜 누나』

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『愛の不時着』のソン・イェジンが演じる主人公の職場の話が細かく描かれています。現実的な会社内の男女差別問題や男性上司と女性部下の関係など、具体的なディテールを表現しています。後半はストーリー展開がもどかしいところがありますが、演出や映像がとても美しいので、ソン・イェジンとチョン・へインのファンは喜ぶドラマだと思います。

2019年1月『ロマンスは別冊付録 로멘스와 별책부록』

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 離婚してシングルマザーになった主人公カン・ダニ(イ・ナヨン)。名門大学を出て大手広告会社に就職した高スペック女子ですが、出産でキャリア断絶しているため、再就職活動は上手くいきません。結局、自分のキャリアと学歴を捨てて契約社員として出版社で働きます。ダニは厳しい現実にぶつかっても前向きで困難を乗り越えていきます。ポジティブな女性の力が感じられるドラマです。独身で社会的に成功している女性上司なども登場するので、現代を生きるいろいろな女性像が見られると思います。

2019年9月『椿の花咲く頃 동백꽃필무렵』

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 主人公ドンベク(コン・ヒョジン)だけではなく、いろいろな親子像をその人々の視点から描いているので「お母さん」にも「子ども」にも感情移入ができます。弁護士のジャヨン(ヨム・ヘラン)と姑の関係も、多くの女性が共感できると思います。『椿の花咲く頃』についてはこれまでいくつか記事を書いていますので、読んでみてください。

『椿の花咲く頃』マガジン

 時代の流れとともに、昔のような家父長的な家庭は少なくなり、妻や女性に対してやさしい男性が多いと思います。ドラマに登場する男性像も時代とともに変わってきているので、比較して見るともっと面白いと思います。

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