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第一話:ティピとピピ



森に帰ってきたティピとピピは手始めにその辺をウロつくことにしました。
様々なものや人との御縁・情報・魂を揺さぶるような経験というのは大体の場合、ウロついている時に得られるものです。
ウロつくのに特別な理由や志や努力は必要ありません。
つま先が目指す方向へ心のままにウロついていく、それだけです。

よく知った小道を歩いていたティピとピピは
お月様に照らされながら草イチゴ摘みをしているスズを見付けました。
これこそがウロつきの醍醐味です!
だらだらのろのろしてるだけで大好きな友達に巡り合えるなんて!

「いいよー!どんなのが欲しー?」
優しいスズは快く引き受けます。

「嬉しいものー」
「永遠のものー」

「いいよー、じゃあ待っててー」

スズは二人にささやかな宴席を用意しました。
切り株のテーブルに摘んだばかりの草イチゴをひろげたら会場の準備は万端です。続々と森の仲間もやってきて宴が始まります。

二人は大喜び!
「嬉しいー!やったー、嬉しいもの手に入ったー!」とティピ。
「永遠のものはー?」とピピ。

この草イチゴは言ってみりゃ「種」だから、コレを土に埋めれば芽が出てくる。芽が出て成長したら、その株から実が採れる。その実が、鳥の糞や自然落下で色々な場所に運ばれてそこで芽吹く。そのサイクルは永遠だから、この草イチゴは「永遠のもの」といえる・・・・と、スズはピピに説明してやりました。
「環境破壊が進まなきゃ・・・の話だけどね。」という部分は真実でも流石にセンシティブだと判断し、言うのをやめましたが・・・

「やったー!嬉しいー!永遠のもの手に入ったー!」と、ピピ。
宴は大いに盛り上がります。

ティピとピピは迷子生活について「想像を絶するものだった」と語り始めました。
幾度となく襲う台風に「もう駄目かもしれない」と力が抜けた時の事・騙されて別の森に行ってしまった時の事・何も終わらないし始まりもしない凪の毎日の事・・・・
935日前、風に舞う美しい羽を追って森を飛び出したティピとピピ。
その羽さえあれば永遠に幸福だと信じた二人ですが、とんだ勘違いだったと気付いた時には迷子になっていて戻って来れなくなったそうです。
ウロつくのと迷子とではワケが違い、迷子の場合、歩けば歩くほど目的地から遠ざかっている気がするのが一番の恐怖だとティピは言い眉間にしわをよせました。
ピピは頷き「何か重いものが常にのしかかっているような感じがしていた。」と付け足します。
宴には似つかわしくない重い話題に一同違和感なところで、朝を告げる鳥たちが鳴き始めました。
うっすら明るくなってきた森の中は冷えた空気に包まれています。
宴もたけなわ。
「帰ろー!スズ、眠くなっちゃったー。」
「そうだね、帰ろー!みんな、おやすみ、おはよう!」
「おやすみ、おはよう!」
「ティピ、ピピ、帰って来れておめでとう!おやすみ、おはよう!」

ウロつく事で始まった素敵な夜は、あっというまに過ぎました。

要らないものは重いから 
要らないものは持たないで
重いと「思ひ」が埋れちゃう
重いと迷子になっちゃうよ

要るもの全然重くない
たくさん持っても重くない
軽いと「思ひ」が走り出す
軽いと迷子にならないよ

本当に要るもの この指とまれ

あとがき
ウロつく・・・
皆さんも日々ウロついていることと思います、お疲れ様です。
今回のお話でティピとピピがスズを見付けたシーンがあります。
あのような現象・場面をスピリチュアル界隈では「導き・ギフト・天の采配」などと、ソレっぽい神秘的な言葉で表現し、現実主義界隈では「たまたま・偶然」と言います。
皆さんはどちらだと思いますか?
ティピとピピは天の采配によって、素晴らしい夜の宴ができたのでしょうか?それとも偶然?
どちらにせよ特別で美しい夜を過ごしたでしょう。
概念ひとつで世界はかわります。
ウロつき行為も時間と場所によっては不審者です。
概念ってなんなんでしょう?

皆さん、はりきって今後もウロついてください。
大概の物事はウロついてる時にやってきます。
以上だ!読んでくれてありがとう!
また会おうぜ、あばよ!


おまけ「自分の描いた絵でボケて」

「うそ・・・?!不死鳥ってマジで居るの?!」


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