妖怪ZERO距離BBAに狙われている
まず、前提として私はかなりパーソナルスペースが広い。
基本、愛想笑いで世の中を生きている。いつもヘラヘラと笑っている。
平和主義みたいなフリをしてここまで生き延びたのだが、心の中は真っ黒で汚れている。性格は下の下の下である。
そんなわけであるから他人に心を開くまで、かなりの時間がかかってしまう性質であることをご理解いただきたい。
世の中にはたまに距離感がバグっている人がいる。
私の職場に突如アルバイトとして雇われた。
その名も妖怪ZERO距離BBAである。
聞こえるか聞こえないかわからない程度の囁き、
独り言なのか話しかけているのかわからない音量でずっと話している。
とにかくずっと話している。
多分自分はマグロで職場は海中だと思っている。
話すのを止めると、彼女は死んでしまうと思う。
ずっと口が動いている。
そんなBBAはパソコンの入力について、人差し指でかな文字入力が一番早いんや!と言って私に披露してくれた。
多分、私のローマ字入力の方が早いけど、それは、流石に性格が悪すぎるから言わずに、へえ、すごいねとだけ言っておいた。
ただのBBAと侮ることなかれ。
ヤツは急に背後をとってくる。
私は割と些細なことに気づくタイプであると自負しているのだが、
何回背後をとられたかわからない。
そして背後をとられたかと思うと、
本当に本当にどうでもいいことを質問してくる。
Q1.間違えた書類をシュレッダーして良いか?
A.勝手にしてくれ。私はシュレッダー界の番人ではない。
Q2.シャーペンの芯どこ?いつものとこになかったよ?
A.もう一回よく見ろ。そこに置いてある。
Q3.誰々さんに頼まれた書類の件はどうしたら良い?
A.んー今日その質問3回目だねー私はその人ではないから知らんのだよ。
いつもこんな感じで、質問される度に正気を吸い取られている。
さらに、なんといっても距離が異常に近い。
ソーシャルディスタンスという概念は存在していないようだ。
控えめにいっても恋人の距離である。まさにZERO距離である。
朝礼の時は、もはや、私にぴたりとくっついている。
私は最近、横に距離を取るのは難しいと感じ、前後に距離を取ることを覚えた。
机にのめり込みながら朝礼をしている。
するとBBAは流石にそこまでは距離を詰めてこないことが判明した。
多分前の席の人から見ると変な光景だろうが、私のパーソナルスペースのためだ。
許してくれ。
私も机にのめり込みたくてのめり込んでいるわけではない。
おそらく人との距離の詰めかたを学んでこなかったのだろう。そしてこれからも学ぶことはないのであろう。
あと残り1ヶ月。どうか正気を吸い取られて干からびませんように。
更新が止まったら、妖怪に魂を食べられたのだと思っておいてください。
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