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彼女たちの場合は 旅に出る時の本

江國香織著 集英社 2019年5月10日初版 2021年12月18日読了

ニューヨーク駐在の父の元で暮らす、14歳の礼奈といとこで17歳の逸香。

思いつきで2人っきりの旅に出るが、約束事が一つ。

誰にも居場所を言わないこと。

期限も目的地も決めず、行きたい場所に行ってみる。

途中で年齢を聞かれたら21歳と答えることにして、
ひとまずは逸香の父のクレジットカード頼み。

グレイハウンドやアムトラックが出るターミナルでは、
旅の匂いがして新鮮。

ヒッチハイクでのしきたりや、
知らない街でどこか懐かしく感じられる青年との出会い、
迷い込んだ道での素晴らしい景色、
初めて訪れる土地での郷土料理、
全てが新鮮で大人になった気分がする。

数日でもその場所に止まって暮らしていると、
街の人々の日々の暮らしや生活が見られて、自分もその一員になったかのように思う。

「この場所も、ここにいる人たちも、自分はもうすぐ通り過ぎてしまう。
通り過ぎて、多分二度と会わない人やものや場所を、嫌いになるのは難しい。」

道中で出会う人みんながいい人に見えるのは、
そこに留まることがないせい
かもしれない。

人は一生の内に、一緒に過ごす時間の長い人、一瞬だけ出会った人、
まだ出会っていない人と時間を共有している。

自分とその人が打ち解けあう瞬間があったとしても、
完全に一致することないうちは、他人との距離を感じ続けるのだろう。

旅を通じて両親の元で安定した生活を顧みる時間や、
アルバイトなどの新たな挑戦を経験する機会を経て、
少女たちの視野が広がっていく様子が微笑ましくもあり、
ノスタルジックな気分にさせる。

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