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多分一生忘れない12年前就活でお祈りされて悔しくて泣いた話。

SNSで話題の広告を見て、やっぱりサイボウズという会社が好きだなぁと感じてふと書きたくなった。一生に一度の就活の話。

サービスを使ったことも無いしそこで働く友人も知人もいないし、いつも遠目で見ているだけなのだけど、大好きな企業のひとつ。

だけど、私は12年前の就活でサイボウズ社にお祈りされている。

悔しくて恥ずかしくてやるせなくて悲しくて。
泣きながら帰った一生忘れられない面接だった。

そこからずっと遠目で見ているだけなのだけど、私はサイボウズという会社がとても好きなのだ。なぜならその面接が私にとってのキャリアの原点になったからだ。

新卒の就活の時、企業の選び方なんてよくわからず、まだ残るウィンドサーフィンサークルの全国大会が気がかりでとにかく早く就活を終えたいという気持ちしかなく、わりとエントリー数も少なめに絞り就職活動をしていた。当時はリーマンショック直後の2009年。ひとつ上の先輩達の苦労を見ていて「シュウカツ」がどんなものか分からないなりにもしんどそうなものであることだけは感じていた。

にしては、今思うとほんとにぼんやりとした就活してたなと思う。将来のことなんてこんな数ヵ月で決められるわけないでしょくらいに開き直っていて、ピンとくる企業に出会えずただナビサイトを永遠とスクロールしていた。

そんな中、一番最初に「第一志望」と思えたのはサイボウズだった。当時の私は体育会系でギラギラしていたので、聞いたことも触れたこともない会社が、ITで『世界一を目指す』という言葉に惹かれたのだった。

世の中には、資生堂やトヨタ自動車のように誰もが知る企業でなくても世界一を目指す企業があるんだ、と「大手」ではない企業に興味を持つきっかけにもなった。

大学四年間ウィンドサーフィンしかせずに過ごして社会のことは何も知らず、自分には気合いと勢いとガッツしかないことは自分が一番よく分かっていて、それがコンプレックスで「手に職をつけたい」となんとなく思っていた。

まぁこれからの時代ITでしょ。
くらいのノリで自己分析も業界研究もほどほどに、サイボウズに出会ったことがきっかけで「システムエンジニア」を目指して就活を進めていくことにした。もちろん何の経験も無いし知識も無かったのだけど。

なんとか書類選考は通ったものの(今思うと奇跡)、迎えた初めての面接で、『日本にこの部屋にあるような蛍光灯は何本あると思いますか?』とサイボウズエンジニアの方(だったと思う)聞かれ、何を聞かれているのか全くわからず頭が真っ白になってフリーズした。。

変な汗を大量にかきながら、論理的思考力なんて当時は皆無だったので、なんとか持ち合わせていた人の心や場を察する力と勢いに任せて、とりあえずこの回答がすごく重要そうでこの回答にかかっているということだけは察し、とはいえ全く見当もつかないので元気に迷わず即答するしかないと『一億本です!』と答えた。
もちろん、さすがに自分でもこの場で求められている回答ではないことは分かっていたのけど、他に何も出てこなかったのだ。

その後、諭すようにその現場エンジニアの方から、「こうやってプロセスを踏んで回答を導くんだよ」と教えてもらい、最後に『あなたはエンジニアには向いてないから辞めた方がいいね』とバッサリと言われ、はい終わりですという感じで少し早めに面接が終わった。

のちにそれが"フェルミ推定"というもので、論理的思考を問うものだったということを知るのはけっこうあとの話。同席していた人事の方は、今思うと、現場面接官の方の発言にちょっとヒヤヒヤしていたのではないかと思う。
帰り際にフォローするように声をかけてくれたのだけどショックから抜け出せずその言葉は記憶にない。

帰り道、誰もいない歩道橋を渡りながら悔しくて泣いた。

堪えていた涙がポロポロと落ちていった。黒いスーツに白シャツ、ネイビーのコートを羽織り、お母さんからのおさがりでお守りの黒い鞄をぶらさげて、夕暮れの歩道橋を歩いた。タイトスカートも黒いパンプスも履き慣れず階段を上る足がすごく重かった。

殺風景なビルが立ち並ぶ、広くて大きな道路を渡る歩道橋。幸いすれ違う人もいなくて、ビルの屋上にドンと掲げられたどこかの企業の広告がエモくてさらに泣けた記憶がある。涙で濡れた頬が風に触れてヒヤっと冷たかった。

生まれて初めて就活でお祈りされて、自分を否定されたような気持ちになって悔しくて悲しくて、、でもそこまで行きたいと思えた企業に出会えた嬉しさともう叶わないという苦しさが混ざり合い複雑な気持ちだった。悔しく悲しかったけど、エンジニアになりたいという気持ちが強いことも実感した。

面接の場で玉砕した初めての第一志望、それがサイボウズだった。

めちゃくちゃしんどくても立ち止まっている暇は無く前に進むしかなかった。
そしてその後、次の第一志望群となったSIer企業で懲りずにエンジニア志望を続けた。そこで碇ゲンドウみたいな面接官に遭遇した。いわゆる圧迫面接だ。

やはり気合と勢いとガッツだけでは全く反応が無くて、表情も変わらない碇ゲンドウに手応えはなく、『やります!やれます!がんばります!』を自分なりに一生懸命伝えたのだけど「また落ちた。」と確信しながら帰路についた。

「やっぱりエンジニアにはなれないのかな。向いてないのかな。」という気持ちが増してまたズキズキと心が痛んだ。だけどなぜか無理だと他人に示されるほどやってやりたくなる性分で、悔しくて悔しくてまた泣きながら帰った。だけど

サイボウズの帰り道と違ったのは本屋に立ち寄ったことだった。

もう「やります!やれます!がんばります!」だけじゃ通用しないんだなとようやく理解して、とはいえ大学の卒業学部も所属サークルも書き換えるわけにはいかないので、今からできることをやるしかない。

エンジニアになれます。ポテンシャルあります。出来ます。とちゃんと伝えられるように「白くまくんのC言語」みたいなタイトルの本を買って帰った。

それから3日間くらい。畳のワンルームに置いた小さなローテーブルで開く慣れないノートパソコンで、就活の合間に初めてのプログラミングに奮闘し、Excelの関数すらエラーを無限に表示させるほどパソコン音痴だった私が

Hello World

を表示させたのだ。

これが私の人生で初めてのプログラミング、最初に作ったソースコードとなった。

その数日後、碇ゲンドウの面接になぜか合格し、最終面接にいけるという知らせを受け取った。

最終面接では、前回の面接でとても悔しくて絶対に落ちたと思ったので、帰宅時に本屋に寄ってプログラミングの本を買い、初めてコーディングをして『Hello World』という文字を表示させることができた。ということを伝えた。

「一つ一つの手順を確実に踏まなければ絶対に次には進めない、全く何も動かないことがよく分かりました。何が間違っているのか根気強く確認する必要があることも知りました。動いたときの感動は忘れられません。ものづくりの楽しさを知りました。気合いやガッツには自信がありますが、大学時代サークルで日本一を目指した経験から、小さな努力をコツコツ積み重ねる粘り強さや根気強さにも自信があります。

未経験ですがエンジニアに挑戦したいんです。がんばります。宜しくお願いします。」

そして、晴れてIT企業2社からエンジニアとして内定をもらい、碇ゲンドウがいる会社に入社することが出来た。

入社後、なぜあの面接を合格できたのかとゲンドウ面接官に聞いたところ『とにかくガッツと負けず嫌いが全面に出ていて、未経験でもめげずにプログラマーとして成長していってくれそうだと思えた』と、びっくりするくらいの笑顔で言われた。

ガッツや勢いも、無駄じゃなかったのだ。

別人かと思うほどだったので、あれは圧迫面接でしたよね?笑 と聞くと、そんなつもりはなかったのだけど、真剣に見極めなければとそういう感じになったしまっていたのかもしれないとお詫びをされた。私の方こそ「みんしゅう」に圧迫面接されたと書いてごめんなさいと謝った。。←

今私はITベンチャー企業で広報PRという仕事をしていて、3社目4職種目だ。だけど、新卒で入社したSIer企業でシステムエンジニアとして勤めた4年間が確実に今の自分のビジネススキルの基盤になっていて、今の仕事にも大きく活きている。
気合いと勢いとガッツに加えて、論理的思考力や逆算力、ものごとの分解力、プロジェクトマネジメントの基礎的要素とかを身に付けることが出来た。

エンジニアとしてのキャリアを経験出来たことは、自分の人生の中でほんとに最良の選択のひとつだったと思えている。

その最初のきっかけとして『絶対にエンジニアになってやる!』と火をつけてくれたのがサイボウズだった。あのときバッサリとハッキリと「あなたには向いていない」と落としてくれたことを私は本当に感謝している。
確かに、あの時の自分に誰がポテンシャルを信じられようか。私が人事なら、内定は出せない。

あの悔しい面接があったから今の私のキャリアがある。10年以上経っても鮮明に覚えている、一生忘れられない大量の冷や汗と夕暮れの涙の冷たさ。

だから私は今でもサイボウズという会社のファンなのだ。

忖度なく言うべきことは言う。というサイボウズのスタンスを今回見た広告からも感じて、やっぱり好きだなぁとふと思い出し書きたくなった。

これから就職活動が本格化する中で、悔しくて悲しい『お祈り』を経験する学生さんもきっと沢山いるだろうと思う。お祈りをしなければいけない人事の人達も心苦しい思いをするのではないかと思う。だけど、時が経てばその苦い経験をこんなにも感謝できることもあるんだと知ってもらえたらと思い、自分の中の大切な思い出を掘り起こしてみた。

企業と人との出会いが、お互いにとってより良いものになっていきますように。

今、私はそんな採用市場をよりよくする仕事に関われていることを誇りに思う。



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