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詩「夕暮れは十五年後に見直す」
夕べに許された例がない
だから朝は涙に濡れている
コーヒーの湯気はもう出口がない
この部屋には空中も文字だらけだ
窓を開けている
ひとつ
毛布に包まりながら
下流の砂みたいに報告を
もう少しで息はとまる
だから聞いてくれないだろうか
ぼかす癖
氷菓子
季節外れの何もかもを
あなただからとうけとめて
冷蔵庫から卵を取り出す
わたしは
かたくなったスクランブルエッグ
弾みきらない会話
予想された
詩「ラテラル・デイ」
今日わたしが死ななかったなら
明日はスタバにラテ飲みにいこう
死ぬ予定があるの
特に ないよ
雪が降り続くだけ
そうやって親指と
薬指で話していた十二月は
静かな知らせを待って
少し表情を変えた
いや 変えた気がした
部屋のテレビからは
関係のない笑い声が
漏れ続けているため
密かな行為の連続は
能天気な雰囲気の中
わたしが死ななかった明日
能天気なラテは
煙り続けた
私が死んでしまった明日
詩「そうだねえ 冬」
滅びたのは ぼく
丁寧に編み込まれた布片
のこされたもの
そこらじゅうの窓辺では
だらしなく煙る水滴が
ワイパーによって薙ぎ払われていく
ぼくのTシャツみたいだ
擬音が入る余地もなく
きみの乳房を吸わせてほしい
指先から指先までで
ぼくらが歩いた日々をはかる
割れそうな爪が朝を呼ぶ
泣きそうなきみに生を還すが
毎朝起きれば大海が
まばたきの旅に花を添えた
そうだねえ 冬
心凍りつく 別れであった
詩「水槽は実に丁寧に清掃されている」
水槽は実に丁寧に清掃されている
呼吸を続けるわたしは
手の先から水になっていく
すう と
ぱら と
水槽は居心地が良かった
蛍光灯の明かりがわたしを
幾重にも折り重なり
通り越していった
端っこだけ手を繋いだ
しかしこの部屋には音がない
完ぺきな音響設備が
整っているというのに
(やれ歌ってやろうか)
そそのかされずとも 声は
また清掃される
また清掃される
わたしの番はここまでだ
唾でもは
詩「もぐりくるものがたり」
わたしは
海だ
ある日そこに死を見つけた
砂の中には銀河
みたいなことを言う
あなたみたいなひとが
好きな
わたしは
ブランコに
乗る
海だ 海だ
崖が崩れ落ちていく
言葉は葉
秋の葉
落葉
わたしは
すう のだ
砂の中の銀河は
するすると するすると
乾く 乾き切る
スノードームの憧憬
あなたに「もういいかな」と聞く
わたしに「そうだねまた」と言う
塵は積もって
海に溶けた
わたしに潜っ
詩「夜と素晴らしさ」
どうせ素晴らしいものをそろえて
どうせ素晴らしいものをそろえて
きみときみの唇をのせて
くだらない夜が駆け出していく
パターンとパターンと口癖が
柔らかに前奏をはじめれば
ぼくはまた小麦の夢を見る
一面にその
麦の粒 麦の粒
のような思い出の断片
夕焼けなんてなかった
今日も昨日も一昨日も
くだらない夜は弱くて強い
どうせ素晴らしいものをそろえて
どうせ素晴らしいものをそろえて
ぼくの歌をただ聴