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  • 一日一概念

    広告・ブランディング・商品開発などの領域で概念と表現を考える仕事をしています。日々の生活のなかで収集した概念と、企画やコンセプトメイキングに応用できそうな構造を世界と共有できればと思いはじめました。一日一概念!という気持ちで収集したものを、月一ぐらいになりますが投稿していきます。

最近の記事

ゲームをあそび始める瞬間はいつか?

あそぶ前にかならず選んでいる 文春文庫から出ている『罪と罰を読まない』という対談本がある。難解なことで有名なドストエフスキーの表題作を、本好きの作家4人が意地でも読まずに語り合うコンセプトが面白い。ここから教わるのは、本は読まなくても楽しむことができるってこと。書店で平積みされている表紙を見て、裏表紙のあらすじを読んで、評判を確かめて。僕らは読む前から想像を膨らませることができる。 それと同じ楽しみが、実はゲームにもある。平成の時代、小学生だった僕らはファミコンショップに

    • 言ってないのにそう見えてくる。

      におわせ時代のネーミング術 におわせの時代である。恋愛もにおわせ、退職の肩叩きもにおわせ、政治もにおわせ。直接言わないけれど、わかる人にはわかる。行間を読み取ってもらって「ああそういうことか!」と思わせる。時にタテ読みで。時にアナグラムで。そのために技巧を駆使する。空気を読めない人だけが損をする。文脈をみんなで共有するからできる、なんとも日本人らしい文化、というか流行である。 コピーライターの仕事の現場でもにおわせが増えている。クレームのリスクがあるから。使用機会を限定し

      • 居なくなっても、うっすらと「居る」。

        ここ数年の音楽ニュースで最も衝撃的だったのは、水曜日のカンパネラの「襲名」である。ニュースサイトのヘッドラインを目にした瞬間湧き上がったのは、「そうか、やめるのか」ではなく、「そうか、襲名していいんだ!」という感情だった。その手があったか、とエアポケットをつかれたような感覚。さすがのコムアイさん、引き際までクリエイティブである。 伝統芸能の世界ではメジャーな「襲名」だが、J-POP業界でこのシステムを採用したのはおそらく水カンが初ではないだろうか(少なくとも公式にそのような

        • 比較の世界を飛び超えて。

          それは速さの度合いを超えていた 鉄道が好きな子供だった。生まれは千葉県、実家は関西。10歳から18歳までの多感な時期を大阪で過ごした。津田沼駅で見かける総武線快速と各駅停車の紺と黄色のコントラストも好きだったけど、大阪駅のホームに発着する色とりどりの特急を、乗り換え待ちのホームから眺めるのが何よりの楽しみだった。スーパー雷鳥、スーパーくろしお、雷鳥、白鳥、トワイライトエクスプレス…。当時はJRが分社化されたばかりで独自色に力を入れていた時代。今ほど新幹線網が充実していなかっ

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        • 一日一概念
          5本

        記事

          ほめ言葉の解像度を上げてみる。

          知ってるけどよく知らない人 ジェフ・ベックが亡くなった。享年78歳だそうだ。といっても、恥ずかしながら訃報を聞くまでジェフ・ベックの曲をちゃんと聴いたことがなかった。近い時期に亡くなった高橋幸宏さんの方がソロワークを聴いていたこともありショックは大きかった。 ジェフ・ベックに関する記憶といえば、大学時代、HR/HMバンドでギタリストをしていた友人が「バンドでコピーするのはエアロやクイーンやツェッペリンだけど、本当はジェフ・ベックがいちばん好きなんだ」とうれしそうに語ってい

          ほめ言葉の解像度を上げてみる。

          ちいさな革命を起こすこと。

          豚汁がでかいアジフライ定食なのだけど 世の中がコロナ禍になって以降、近所を出歩くことが増えた。理由は単純に都心や遠くに行きにくくなったからなのだけど、電車を避けて自転車で移動したり、細かな道を徒歩で探検するようになった。人間本来の自然な速度での移動は発見をくれる。今まで見逃していた「ご近所」の魅力に気づいた人、改めてお気に入りのお店を見つけた人も多いのではないだろうか。 ご多聞に漏れず、僕にもコロナ禍をきっかけに存在を知り、通うようになったお店がいくつかある。今回ご紹介す

          ちいさな革命を起こすこと。