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春のお買い物【シロクマ文芸部】

「白い靴をください」
私は店番をしている黄金虫に言った。
「試着はいいのかね?」
「いいんです。きっとぴったりだもの」
私はその真っ白い靴に足を入れた。ほらぴったり。スノードロップで作った軽い靴。
すずらんで出来た帽子も一緒に買う。
どちらからも春のスンとした匂いがする。
あとは…あとは…
白木蓮で作ったコート、山桜の花びらのハンカチ、馬酔木あせびのポシェット。
「おお。素敵ないでたちになりましたね。
とてもお似合いですよ」
黄金虫がほめるので私は代金の砂金の粒を渡しながらにっこりする。
「だってね、乗り物はモンシロチョウだから、
白いものを身に着けたいの
あの子も出来るだけ遠くに行きたがっているの」
そういうと私は外で待ってくれているモンシロチョウのところへ急いだ。
風がやさしいうちに旅立つために。


*素敵な買い物をいっぱいして、蝶に乗って旅立つのは誰かなあと思いながら書きました。菫人間かな?

*小牧幸助さんの企画に参加します


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