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32歳で骨粗しょう症になった私の現在地

自分の弱点を人にさらすのはとても勇気がいることですよね。

私は長い間過剰な羞恥心をかかえていたので、これまでほとんどやってみたことがありませんでした。

ですが羞恥心というものは自分が傷付かないように守っているだけで、周りにまったく意識が向いていない状態だったなと40歳を目前にして思い至りました。

人に何か役立つことをしたい、社会に貢献したいと思ったときにこの羞恥心を手放すことが一番の課題であると気がつきました。

数日前ある女性作家さんの記事を読んでそっと背中を押してもらったので、今日は勇気を出して自分のここ数年の出来事と、それを通して感じたこと、伝えたいことを綴ってみたいと思います。

*個人の体験談です。正確な情報を得るためではなく、ご参考程度にしていただけたらと思います。



4カ所の圧迫骨折が判明

「全部で4カ所折れとるよ。新鮮骨折が1カ所、過去にも3カ所圧迫骨折しとる。」

こう告げられたのが閉経を迎えた後の高齢女性だったとしてもかなりショックな言葉だと思いますが、私がこの言葉を告げられたのは34歳の時でした。

「妊娠後骨粗鬆症」あるいは「産後骨粗鬆症」という言葉を聞いたことがある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
おそらくとても少ないのではないかと思います。
整形外科の骨粗鬆症認定医師にさえ、まだ広くは知られていない疾患です。

正式には妊娠授乳関連骨粗鬆症といい、国際的にはPLOと言われているようです。ある整形外科のHPによると、有病率は人口100万人当たり4〜8人と推定されています。

私は32歳でこの妊娠後骨粗鬆症という疾患にかかり、39歳の現在も治療中です。

先ほどの医師の言葉は最初の骨折から2年経っていたので、32歳にはこの疾患にかかっていたことが分かります。
2年間で胸椎2カ所、腰椎2カ所の計4カ所の圧迫骨折でした。

なぜ判明するまでに2年もかかってしまったのかというと、4回の激痛が起こるたびに、
「ギックリ腰かな?」
と思い、整形外科ではなく整体や整骨院へ行って対処してしまったからです。

腰を骨折したら一歩も動けないはずという思い込みもあり、痛みは強かったのですがヨタヨタしながらもかろうじて歩けたので、まさか自分が骨折しているとは思いもしませんでした。

4回目の激痛のときは整体へ通っても痛みが引かず、腰ではなく子宮に原因があるのではと婦人科に行ってみたものの異常なしだったので、最終手段として整形外科を受診したのでした。

骨折を発見してくださった医師はこの疾病についてご存知ではなく、その時に手首で測った骨密度も118%という高い数値だったので、骨粗鬆症を疑われることもないまま今のところ治療の必要はなしとの診断。
(7ヶ月後に別の病院で腰椎と大腿骨を測定したときの正確な骨密度は69%。このときにようやく自分が骨粗鬆症であると自覚することができました。)

私の場合考えられる原因は?


原因不明と言われましたが、そのとき私の頭に思い浮かんだのは、
「子どもにおっぱいをあげすぎたから?」
ということでした。

当時産後に職場復帰していた私にはもうすぐ2歳の誕生日を迎える娘がいました。
ほぼフルタイムで仕事をし、保育園にお迎えに行けるのは毎日18時過ぎ。
1歳児クラスではいつも一番最後でした。

まだ1歳の娘に対する申し訳なさもあり、せめて娘が大好きなおっぱいだけは好きなだけ飲ませてあげたくて、帰宅してから夜中も含めて1日5〜6回はあげていたと思います。

冒頭の医師にそう尋ねてみると、
「そんなの全然関係ないよ、そしたら世の中のお母さんたちはみんなそうなるやない。」
との返答。

おそらく私を安心させるためにそう言ってくださったんだと思います。
それなら大丈夫かとそのまま娘が2歳4カ月の頃まで授乳を続けていました。

あとから分かったことですが、妊娠・出産を機に女性の骨はもろくなり、正常な状態でも妊娠前の骨密度に戻るのに19カ月ほどかかるそうです。

妊娠中は赤ちゃんの骨を作るために母体から胎盤を通してカルシウムを届け、出産後は授乳して赤ちゃんに与えます。

授乳に必要な血液中のカルシウムが足りなくなると、不足した分はお母さんの骨からカルシウムをおぎない母乳をつくりだすそうです。

通常は自然と骨密度も戻ってくるので何も心配することはありません。
私の場合はもともと骨密度が低かったうえに(今治療を受けている医師の推定です)多くのお母さんは1年ほどで断乳するところを2年4ヶ月も授乳を続けてしまったことが骨には良くなかったんだろうと思っています。

骨密度が低くなる原因としては、生活習慣(食生活・運動)や遺伝的要因などが挙げられるそうですが、まだハッキリとは分かっていないようです。

ただ、骨は20歳時点で最大獲得骨量になるため、この最大獲得が十分でないとその後の妊娠・出産に影響すると言われているそうです。

10代の若い頃に過度の偏食やダイエット、運動不足によって十分な骨量を得られていない女性が増えると今後さらに症例が増えてくる可能性があるそうです。

私も10代の頃から食が細く運動もあまりしてこなかったため、それがこの疾患につながったのではないかと思っています。

これから自分の子供にはしっかり食事と運動、適度な日光浴の大切さを伝えていくつもりです。

長年勤めていた会社を退職


その後、仕事を辞めるきっかけとなる出来事がありました。

もともと咳ぜんそくの持病があったのですが、圧迫骨折が判明した年の3月にこれまで出ていなかった花粉症の症状が出はじめ、咳が止まらなくなっていました。

当時接客業をしていた私は咳が止まらないと仕事ができないので、出勤前に呼吸器内科でステロイドの点滴をしてもらってから仕事に行っていました(ステロイドの吸入や内服では咳がおさまらなかったためです)。

ステロイドを長期間使用すると骨が弱くなるという副作用があることは知っていたのですが、数日なら問題ないだろうと呼吸器内科の医師にも確認をし、とにかく仕事をこなすためにそんなことをしてしまっていました(そしてこの時点ではまだ自分が骨粗鬆症であるとは分かっていませんでした)。

数日間のことでしたので長期間ではないのですが、結果的に弱くなっていた骨にさらに追い打ちをかけてしまったことには間違いありません。

しばらくそうして仕事をしていると、軽く咳こんだとき胸に強い痛みを感じ、整形外科を受診したところ今度は肋骨を骨折していることが分かりました。

とても仕事を続けられる状態ではなくなり、またそんな身体の状態だったので家庭の中ももうグチャグチャでした。

まずは自分の体をしっかり治さないと、一番大事な家族すら守れなくなってしまうとここでようやく気づき、長年勤めていた会社を退職することにしました。

仕事を辞めてからのその後〜現在

退職から4年半ほどたちますが、一度もろくなってしまった骨はそう簡単には元には戻らず、今も骨粗鬆症の治療は続けています。

当時は体を強くするためにと始めたジョギングで肋骨が折れ、医師には
「まだ骨が治っていないのにジョギングするなんて。今度は足の骨が折れるよ!」
と叱られました。

それならとプールでのウォーキングを試しても水圧で骨折したり、子どもを抱っこするだけで骨折したりを長いあいだ繰り返していました。

夫の実家近くに引っ越してからは義理の両親の熱心なサポートにとても助けられました。

毎日骨を強くするために日光浴をしながらウォーキングをし、身体に負担のかからない範囲で自分にできることを続け、幸い第二子の妊娠・出産をすることもできたのです。

第二子出産後に断乳してからは、夫が妊娠後骨粗鬆症に詳しい医師を探し出してくれたのでそちらで積極的な注射治療を始めました。

最初の骨折から注射治療を始めるまでに5年もかかってしまいましたが(圧迫骨折の発見が遅れたこと、発見後も骨粗鬆症の診断がつくまでに時間がかかったこと、第二子希望・妊娠・授乳中は注射治療ができなかったため)ようやく昨年から治療の効果が出て骨密度が上がり始めてきたところです。

現在の私の夢

骨密度が上がり、身体が健康に近づいていくにつれ自然と自分もまた社会のために役立ちたいという意欲を少しずつ取り戻せるようになっていました。

ただ、5カ所めの腰椎圧迫骨折後に腰痛が後遺症として残ってしまい、同じ体勢を長く続けていると腰に痛みが出るようになってしまったため、外に働きに出ることは難しくなっていました。

これはきっと、昔から自分が大好きだった「書くこと」に集中して取り組めるように与えてもらった人生に一度のチャンスに違いないと本気で思っています。

書くことで人とつながり、必死に生きている人が少しでも楽になれるような言葉を発信し、社会に貢献していきたい。

今は「書くことを仕事にする」という大きな夢を持っています。

いま伝えたいこと

「妊娠後骨粗鬆症」という疾患はまだほとんど知られていません。

若くして骨粗鬆症になってしまい、この先何十年と人生は長いのに本当に治せるのかという先が見えない不安と骨折の痛みに押しつぶされそうになりながら、涙をこらえて赤ちゃんのお世話をしているお母さんたちがいます。

入院して治療を受けているあいだは、生まれたばかりの赤ちゃんのお世話をすることすらかなわないお母さんもいます。

そのお母さんたちは、
「病院に行ってもこの疾患を分かってくれる先生がいない。」
「周りに理解してもらえないことが辛い。」
とおっしゃっています。

医療関係者の中でもまだ認知度が低いため診断名がつかなかったり、診断がついたとしても症例が少なく、適切な対処をしてもらえない患者さんが多いようです。

圧迫骨折の場合、レントゲンやCTでは判断がつかず骨折すら見落とされてしまうことがあるので、この疾患で苦しまれている方は実際にはもっと多いのではないかと思います。

私もMRI検査を受けてはじめて判明しましたが、骨折と分かるまで2年もかかってしまいました。腰痛でMRI検査までされる方は少ないと思います。

この疾患を知って、理解してくださる方が少しでも増えたら救われる人たちがいます。

生活習慣が骨粗鬆症の大きな要因にもなっているので、知っていれば若いうちから予防することもできるはずだと思っています。

妊娠後骨粗鬆症専門サイト
https://plo-patient-association.jimdofree.com

こちらの妊娠後骨粗鬆症専門サイトのなかに、この疾患にかかって治療中、または治療を終えたお母さんたちと匿名でやりとりができるLINEのオープンチャットのリンクがあります。

近くにこの疾患について詳しい医師がいなくて困っている場合にどの病院に詳しい医師が在籍しているか、またどんな治療を受けているのか尋ねたり、圧迫骨折をしている状態で赤ちゃんのお世話をするときに工夫していること、追加骨折を起こさないように日常生活で気を付けたほうが良いことなどを相談することができます。

何よりメンタルが落ち込んでしまったときに気持ちを吐き出し、その気持ちに共感してもらえるだけで楽になれることもあると思います。

まだ認知度が低い疾患なので誰にも相談できないときにこちらで意見交換しながら治療をすすめていけると、とても心強いはずです。

そうママさんという方が開設してくださったのですが、私も骨折から5年ほど経ったときにこのオープンチャットに辿り着き、隣の県に詳しい医師がいることを知り、そこで適切な治療を始めることができました。

妊娠中、または産後に長い腰痛を抱えていたり、すでに脊椎の圧迫骨折が判明し不安を抱えておられるお母さんやその家族、あるいは知り合いにそういった方がいらっしゃったらぜひこちらの記事を紹介していただけたらと思います。

長文お読みいただきありがとうございました。

                                              2024.1.30


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