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WEリーグ第17節神戸vs長野レビュー(ピックアップチーム:AC長野パルセイロレディース)

ピックアップチームはAC長野パルセイロレディース

 WEリーグ後半戦に入り、白熱した試合がますます多くなってきました。そんな中で今回取り上げるのは、AC長野パルセイロレディースです。
 最近、47都道府県のサッカー旅をテーマとした本を出版していく予定の「すたすたぐるぐるシリーズ」の信州編(長野編ではなく、あえて信州編だそうです)の先行販売が始まったそうです。すたすたぐるぐる第1回の埼玉編の時は浦和レッズレディースの話題が少し書かれていましたが、今回の信州編では女子サッカーの話題はあまりなさそうな感じですが、長野つながりということで、ご紹介します。長野県のサッカー事情やサッカー旅に興味のある方は是非リンクに飛んでみてください!
〈4/23追加訂正〉パルセイロレディースの話題も含まれているようです。

 さて、AC長野パルセイロレディースの話題に戻します。今回の試合の実況を聴いていたら、出場選手である、肝付選手・鈴木選手・岩下選手の3人は、山梨学院大学女子サッカー部のOGであるというお話が出てきました。そして現在のヘッドコーチである田代久美子さんも山梨学院大学で指導されていたようで、山梨学院大学女子サッカー部と非常に縁の深いクラブになっているようです(※その他のWEリーガーにもOGはいますが)。

 今回、出場選手の中で、長野県出身の選手は、背番号10番をつける瀧澤千聖選手がいます。WEリーグのホームページにインタビューもありました。

  長野県出身ではないですし、今日の試合には怪我の為出場していなかったですが、背番号30番の國澤志乃選手のインタビューもあり、非常に面白い記事でした。

 今回対戦するのは首位を独走するINAC神戸レオネッサ。未だリーグ戦は無敗の勝負強いチームです。一方、AC長野パルセイロレディースは試合前の時点で8位。今シーズンの目標を6位以内にチームとして設定していたそうで、もうひと踏ん張りして順位を上げたいという状況です。
 リーグ前半戦では、長野の試合をほぼ観ることができなかったため、予習も兼ねて、youtubeに残っている第13節の新潟戦を観て、急ぎ足になってしまいましたがレビューも前後半に分けて書きました。よかったら、こちらもごらんください。

⚽レビューした試合(youtube)

第13節 新潟戦レビュー(前半)

第13節 新潟戦レビュー(後半)

また、クラブとしてyoutubeチャンネルもあるようです。男女両方のチャンネルのようですが、レディース関連の動画が非常に多いようです。

試合全体の印象と考察

この試合は、スタッツが見事にこの試合での両チームの特徴をよく現わしていると感じたので、いつもは掲載していませんが、今回はリンクを貼ります。


 ボール保持率はスタッツには表示されていませんが、試合を観た印象では互角でしたし、神戸の勢いと迫力のある攻撃に対し、長野はよく粘り強くついていったり、中盤で奪いきるシーンが非常に多く両チームの激しいボールの奪いあい・攻防は見応えがありました。ただ、スタッツにしっかり現れているように、シュート数とコーナーキックの数については神戸が圧倒しているのです。ここに、神戸の勝負強さの一面が現れているのかなと思います。長野は中盤でボールを奪いきる良いシーンが非常に多かったのですが、その後の展開で、なかなか崩したりセットプレーを獲得したりシュートで終わったりという攻撃の良い終わり方をすることがなく、奪うことも多かったですが、奪い返されることも多かった試合でした。これは、それだけ神戸が、ボールを奪われても決して慌てず冷静に、肝心なところでしっかり守り切る力があったということでもあります。結局、試合を通じて、決定的な場面はほとんど作ることはできませんでした。対する神戸は、ボール保持率は互角でも、崩し切ってシュートまで持っていき、決定的な場面を何度か作っていました。五嶋選手を始めとするカバーリングの反応の良さとGK伊藤選手の好判断・好セーブで、1失点に抑えた試合だったということができると思います。1失点してしまったゴールにしても、田中美南選手のクイックシュートの巧さ、あれを止めるというのはなかなか難しいと思います。守備面は全体として、闘志あふれるプレーと、連携したプレーが随所に見られ、非常に良かったと思います。課題は、ボールを奪ってからの崩しや仕掛け、シュートで終わるゴールに向かう為のアイディアにあるのではないかと感じました。ひとつ象徴的だったのは、終了間際の91分、瀧澤選手が良い判断で、ゴール前の藤田選手にくさびの正確な縦パスを供給するのですが、結局、神戸のDF3人に藤田選手が囲まれて攻撃は終了してしまいました。終了間際の時間帯、瀧澤選手が縦パスを出した後、猛ダッシュでもう一度藤田選手のフォローにいけるような動きをしていたら?決定的なチャンスが訪れていたかもしれません。もちろん、勝っている状況だったら、猛ダッシュしてエネルギーを使わないという選択肢もありますが、終了間際で負けている状況だったので、パスを出した後、なんとか頑張ってもう一度受ける動きがあれば、状況は変わっていたかもしれない、と感じた局面でした。神戸はボールを奪ってから、テンポよくパスが回るシーンが何度もありました。「テンポよくパスを回す」ためには、ポジショニングを常に良いところに更新し続けなければならず、そういったボールのないところでのポジショニングの微調整の力が、神戸は非常に優れているのかもしれない、と感じました。

先発選手の印象

GK伊藤有 23分、左サイドからカットインして放った水野のシュートによく反応し、難を逃れた。79分、CKのボールをパンチング、その後も、鋭い飛び出しでピンチを絶った。試合全体を通して、ハイボールのキャッチングに安定感があり、危険を察知し、キャッチするのか、パンチングするのかといった判断も良かった。

右SB岡本 神戸の左MF水野が積極的に仕掛けてきていて、長野の右MF伊藤めぐみ選手が下がってきて対応しているシーンが非常に多い印象だった。岡本選手が対応するシーンをもう少し増やしていけたら、伊藤めぐみ選手がもう少し攻撃で力を発揮できたかもしれないと感じた。54分、56分、縦パスで良いパスワークの起点となる。

CB五嶋 何度も何度もカバーリングでピンチを未然に絶ったり、球際激しくいって、勢いと迫力のある神戸の攻撃陣と互角以上に闘えていた。

左SB岩下 再三に渡り、守屋とマッチアップを繰り広げた。巧く崩されてしまうこともあったが、守屋の仕掛けに粘り強くついていくシーンも多く見られた。56分、インターセプトからチャンスメイクした。

ボランチ大久保 数少ないチームのシュートの多くは大久保のシュートだったが、相手にとって脅威となるような決定的なシュートには至らなかった。相変わらず中盤でうまくタメをつくったり展開したりするシーンは非常に多かった。体の使い方も非常にうまく、ボールを簡単に失うことがほぼない。

ボランチ肝付 闘志あふれるプレーでボールを奪ったりピンチを絶つプレーを再三みせた。

トップ下太田 41分、シュートを放つが相手DFに当たってゴールまで届かず。55分、中盤でボールを受け、中継した。

右MF伊藤め 守備面での貢献が目立った。

左MF瀧澤千 最も積極的に仕掛けてゴールに向かっていく姿勢がみえた。後半からはFWとなり、56分には良い位置でボールを受けシュートを放つが、相手DFにしっかりブロックされてしまう。前述した終了間際のプレーのようなところが課題か。

FW鈴木 6分、7分、と前線でボールを奪うプレーがあった。56分、つぶれながらもポストプレーで味方に粘り強くつなぐプレーがあった。決定的なシュートシーンはあまりなかったことは課題だが、前線からのプレスが効いていたからこそ、中盤や最終ラインの選手がボールを奪いやすい状況を作れていたという意味でチームに貢献していた。

FW泊 41分、前線の非常に良い位置でボールを奪い、チャンスになりかけるが、三宅に足を伸ばされボールを奪われてしまう。

交代選手の印象

左MF村上 後半から、泊に代わって出場。左MFに入り、左MFだった瀧澤がFWとなる。48分、神戸のスローインから始まった展開でボールを奪い、ワンツーで縦に抜け出そうとするシーンがあったが、つながっていかなかった。56分、左サイドでキープしてバックパスした。

右MF奥津 81分、伊藤めぐみ選手に代わり出場。五嶋から右サイドに展開したボールを受けるが、相手DF水野にうまく対応されてしまう。

MF藤田 86分、太田に代わって出場。91分、良い位置で瀧澤からの縦パスを受けるが、周りのフォローが少なく、相手に囲まれ奪われてしまう。

まとめ

 両チーム、激しい攻防が連続する、奪っては奪い返されるような、緊張感のある好ゲームだった。長野は集中力高く連携しながら、勢いと迫力のある神戸の攻撃に対しよく守れていたと思うが、攻撃面で、なかなかテンポよくパスが回ったり、仕掛けてはがすプレーのシーンがなく、ボールを奪ってからの攻撃へのパワーのかけ方が課題のように感じた。神戸の守備のレベルも高かったと思う。センターバックの三宅選手の存在感は大きかったし、普段はボランチをやることが多い右サイドバックの伊藤美紀選手の対応力も高かった。ボールを簡単に奪われない技術の高い選手がDFに入ることのメリットを強く感じた。守備面では連携がうまくいっているので、これから、攻撃面での連動性を高めていくことができたら、もっともっと魅力的なチームに変貌していくのでないかと思う。
 余談だが、監督の怒鳴るような指導の声?が動画を通じて頻繁に聴こえてきたのは非常に気になった。

2022/4/23 一部追記





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