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PALE BLUE DOT 天文学者 カール・セーガン(1934/11/9~1996/12/20) 淡く青い点 ~60億kmから見るドット程の地球を眺めて~

この距離から見える地球には特に興味を覚えないかもしれない。
けれど、我々の目には違って見えるはずだ。
もう一度、この点について考えてみて欲しい。

ここだ。

これがふるさとで、私たちがいる。

この点の中で、あなたの愛したすべての人たち。
知り合いの全員。
今まで耳にしたことのある全ての人たち。
人間ならば、どこのだれであろうと、
ここに生きてきた。

幸福と苦痛の集大成が、
何千という自信に満ちた宗教家たちが、
思想が、
経済教義が、
全ての狩猟採集民族が、
全ての英雄と腰抜けが、
全ての文明の創始者と破壊者が、
全ての王と小百姓、
全ての愛をささやき合う若い恋人たち、
全ての父と母、
希望の子ども、
全ての発明者や探検家、
全ての道徳的な教師、
全ての腐敗した政治家、
全ての偉人や最高指導者、
全ての聖者や罪人が、
そのすべての人類の歴史がここにある。

塵の微片さながら、太陽の光の中に浮遊しながら地球は壮大な宇宙のアリーナの中の小さな舞台だ。

このわずかな”点”の瞬きの支配者となったすべての将軍や皇帝の勝利と栄光の影で、流れたおびただしい血の量を考えて欲しい。

この1ピクセルの角に存在する住民が、まるで見分けのつかぬ別の角に存在する住民に対するその終わりなき残虐行為を考えてみて欲しい。
なぜゆえに人類は頻繁に誤解し合い、殺戮を熱望し、強烈に憎悪し合うのか。

私たちのおごりが、私たちのうぬぼれが、宇宙で特権のある地位にいるというその錯覚が、この色褪せた光に試されている。

この惑星は大きくて暗い宇宙空間の中にひっそりと存在する、孤独な
”しみ”でしかない。
こうも広大な宇宙の中でぼんやりとしていては、人類が人類を救うきっかけは外から来ない。

地球は人類の知る中で、生命を宿す唯一の世界だ。

少なくとも近い将来、人類が地球外へ移住できるその時まで、私たちに行く当てはない。行き着くことはできる。定住はまだ無理だ。
否が応でも、しばらくは地球にいるよりない。

天文学という学問は、謙虚に人格を変えられる教えだと言われてきた。
恐らく遠く離れた小さな故郷を見せつける以上に、人類の愚かさを実感させてくれるものはないだろう。

私にはこの点が、より親切に互いを思いやり、色褪せた碧い点を守り大事にすべきだと、そう強調しているように思えてならない。

それがたった一つ。我々の知るふるさとなのだから。

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