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同期のAちゃんへ


久しぶりに、同期へ手紙を書いた。
Aちゃんとする。


Aちゃんは入社日が同じで、
旅行や文房具、ものづくりが好きという趣味も合い、よく一緒にお出かけしていた。

「文具女子博」へ二人で行ったときは
Aちゃんに勧められ文房具を爆買いした。

戦利品



たくさんの文房具を買って
「こんなに使い切れないから、文通しようよ!」とわたしから言い出した。


Aちゃんは爆笑していて、
「毎日会ってるのに文通なんて〜」と言いつつもノリノリで、しょっちゅう手紙を書いてくれた。

わたしたちは文章を書くのも読むのも好きで
お互いに文通をとっても楽しんでいた。
お互いが平気で10枚くらいの手紙をやりとりするので、
職場の人も「また書いたの?!」「どんなことが書いてあるの?」などと言って
わたしたち二人をおもしろがってくれていた。

以前Aちゃんに書いた手紙。
ウィリアムモリスの便箋と
封筒は自作のコラージュ。
わたしはこういうことをするのが大好き。


仕事や趣味のことなど、いくらでも話せる関係でAちゃんが同期でとってもうれしかった。



そんな暖かいやりとりはしばらく続いていたが
入社3ヶ月が経つ頃、わたしのチームのベテラン先輩が退職することになった。


それを機にわたしは任されることが増え、新人とは思えない量の仕事をこなすことになった。
当然残業時間も増えていき、手紙の数は減っていった。


Aちゃんは残業が少ないチームだったこともあってか仕事は楽しそうで、
相変わらず手紙を書いてくれていたが
わたしが全然返信できなくなった。
読んではいたけど、返せるほどの気力がない。


仕事量はどんどん増えていき、わたしの帰宅は深夜1時を越える日が続いた。
もう仕事をして朝起きるだけでやっとの日々で
手紙を書く余裕なんてとてもじゃないけどなくなった。




そして自分がそんな状態だからか、
Aちゃんの楽しそうな旅行話を聞いたり読んだりするのがつらく感じることもあった。


休日は疲れ果てて家にいるだけになっていたわたしにとって、相変わらず文具店やカフェめぐりをしたり、旅行に行ったりしてる
楽しそうなAちゃんの休日は眩しすぎた。


残業が少なく、公私ともに充実してるAちゃんをうらやましいなあ、とも思ったし
Aちゃんと話していると、休日家にいるだけの自分がひどくつまらない人間に思えて落ち込んだ。




Aちゃんに悪いところなんてひとつもないし、
変わらず大好きだし大切な同期。
なのにAちゃんと話すと、うらやましいと思ってしまったり、卑屈になってしまう自分の余裕のなさが嫌だった。




それから意図していたわけではないが
Aちゃんとは退社時間も被らなくなり、一緒に帰ることがなくなった。
仕事中も余裕がなく、雑談することはなくなった。
手紙のやりとりもしなくなった。


それでもAちゃんは、どこか旅行へ行くと
お土産をわたしの机に置いてくれた。
かわいくラッピングして、少しのメッセージを添えて。


いつだってAちゃんはやさしい気持ちで接してくれていた。



手紙やお土産を受け取るばかりで
返すことがなくなっていたわたしだけど、
この日だけは絶対に手紙を書くぞ!と決めていた日がある。
Aちゃんの誕生日だ。


少し距離ができてしまったが、Aちゃんのことを大切に想う気持ちは変わらなかったし、
久しぶりにAちゃんに話したいことがたくさんあった。
仕事のこと、結婚のこと、趣味のこと…
それらを手紙にたくさん書こうと思った。


渡したいものも決まっていた。
Aちゃんがやってみたいと言っていたシーリングスタンプだ。

わたしはシーリングスタンプの沼にハマり、
結構詳しい自信がある。
同じ感性を持つAちゃんならきっとハマってくれるだろうし、一緒に楽しみたい!と思い
プレゼントすることにした。

わたしのシーリングスタンプセット


さあ手紙を書いて寝よう、と思ったら
筆が止まらなくなってしまい、
書き終わったのは深夜4時。
眠い…
明日も仕事なのに…
そう思いつつもずっと書きたかったAちゃんへの手紙を書くことができて
うれしくなってる自分がいた。

Aちゃんに手紙を書くのは何ヶ月ぶりだろう?
渡したら絶対喜ぶだろうな…
そんなことを想像するとまたうれしくなった。

今回は計8枚書いた!
溢れる思いが止まらない。


翌日。Aちゃんの誕生日。
Aちゃんが出社する前にデスクへプレゼントと手紙を置く。

手渡しも考えたけど、来てプレゼントがあったらうれしいかなあ、と思って。


職場の人も「わあ〜!絶対喜ぶね!」と言ってくれたり、「文通、まだ続いてたの?!」と
相変わらず一緒にきゃっきゃしてくれて楽しかった。
Aちゃん、愛されてるなあ。



デスクに置いたのでどんな反応だったかは直接はわからないが、
Aちゃんは帰り際、わたしのデスクまで来て
うれしそうに
「プレゼントありがとう」と言ってくれた。
そのときはプレゼントも開けてなかったし、
手紙はゆっくり家で読むとのことだった。


そしてAちゃんからも、まさかのプレゼントをもらった。
「おめでとう」と急に渡され、何かと思ったら
結婚のお祝いとのことだった。



家に帰って開けてみると、
きれいな藤色の革の名刺入れだった。

Aちゃんとおそろいらしく、
「時を重ねて、素敵な藤色にしてください。」
と手紙に書かれていた。



Aちゃん…


Aちゃんの想いに、涙がでた。



わたしは近頃、自分でいっぱいいっぱいだったけど、そんな自分を情けなく思った。

余裕がないと、楽しいことが楽しいと思えなくなってしまう。

例えばこうしてAちゃんに手紙を書くことや、
お出かけすることは
本来とっても楽しいはずのことなのに、
余裕がないと楽しめなくなってしまう。
心がギスギスして、やさしい気持ちを忘れてしまう。


でも本来のわたしはAちゃんのことも
手紙を書くことも大好きだ。
そんなことをしばらく忘れていた自分を悲しく思った。

Aちゃんに手紙を書いたり、プレゼントを考えているとき、自然とやさしい気持ちになって
大切な人にはいつだってやさしくいたいな、と思った。
好きなことは好きでいたいし、楽しみたいし、
日常の小さなしあわせや喜びには気づけるようでいたい。

Aちゃんの喜ぶ姿を想像するとうれしくて
大切な人を大切にするって、しあわせなことだなあと思った。


きっとこれを機にまた、Aちゃんとの文通が再開することでしょう。

Aちゃんはシーリングスタンプやってくれたかなあ。
感想を聞くのが楽しみだ。


戦友であり、大切な同期のAちゃん。
年を重ねても変わらずに、そのままのやさしいAちゃんでいてね。
いつも仲良くしてくれて本当にありがとう。
これからも末永くよろしくね。




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