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【感想】あと1か月で地球が滅びるならどう過ごす?大切なものを考えてみる

凪良ゆうさん著「滅びの前のシャングリラ」を読み終わりました。

「もし自分があと1か月で死ぬとしたら、誰と、どんな風に過ごすか」そんな途方もない議題を目の前に突きつける作品だと感じました。

ある日、1か月後に小惑星が地球に衝突し、人類の滅亡と世界の終わりが宣告されます。はじめは状況が呑み込めず、冗談のように捉えていた人々も、少しずつ、しかし着実に壊れていきます。あと1か月で死ぬという状況に耐えきれなくて自殺する人、他人を傷つけ暴力で征服しようとする人。ほんの数日前までは日常があって、それが地続きにずっと続いていくはずだったのに、何の希望もなく、誰の上にも無慈悲に終わりがやってくるのです。

そんな状況に置かれたら、私はどんな風に過ごすだろうか。

主人公のひとりである江那くんのようには、とても過ごせないだろうと感じました。

江那くんは、端的にいえばイケてない高校生の男の子です。デブで、いじめられていて、自分の考えをはっきりと伝えることができません。小学校のころからほのかな恋心を抱いている学校一番の美少女・藤森さんの前でも、いつものようにいじめられています。

世界が終わるという未来をきっかけに、藤森さんは、彼らが住んでいる広島から東京に行くことを決意します。心配した江那くんは藤森さんを守るために一緒にいくことにしました。

一緒にいく、とはいっても、うしろから勝手についていくという感じで始まった道中でしたが、結果的に藤森さんを守るために暴漢に立ち向かうのです。

江那くんのすごいところは、街がどんなに荒廃しても、他人がどんなに嫌な行動をとったとしても、藤森さんを大切に扱うところです。彼は、ただ彼女の願いを叶えるために一緒にいます。

東京までの道中で危険があることを理解している。自分の唯一の家族であるお母さんを、広島で一人にしてしまうことを理解している。藤森さんが自分のことをなんとも思っていないことを理解している。いろいろなことをきちんと理解した上で、それでも、藤森さんをただ純粋に守りたいがために行動しています。

私は、江那くんが優しくて、とても強い人間だと感じました。世界中が狂っていく中で、まっすぐな優しさを他人に向け続けることは勇気がないとできないことです。自分自身も世界の終わりのど真ん中にいて、ただ死ぬことに向かって毎日を過ごしていく。それは計り知れない恐怖を伴う日々だと思います。そのような中で、いままでの日常と変わらない態度で過ごしてくれる人がいること、優しさを与えてくれることは、花のような安らぎにも似ているでしょう。

私は江那くんのように過ごすことは無理だろうけど、それでも、大切な人を大切にしていけるような人間ではありたいと思います。この作品を通して、自分がどんな風に過ごすかを考えるきっかけになるはずです。

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