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バイクに乗せてもらった

4月28日(日)
2度目のアラームで目が覚めた。小鳥の歌声にうっとりする。朝、小鳥の声が聞こえてくると本当に幸せなきもちになる。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。

今日も こもれびの森に行く。

修一郎の食事をお弁当仕立てにしておく。もともと修一郎は出来立ての食事を食べない。ものすごい猫舌なのだ。熱いコーヒーも冷ましてから飲む。カレーもスープもお味噌汁も冷めてから食べる。

てくてく歩いて注文分の絵本をポストに出しに行く。

出かける支度をする。
今日は、なんと、ごはんさんが運転するバイクで行くことにしている。わくわくする。ちょっとコワイような気もする。でも、わくわくする方が強い。

コロナが流行る前、ひとりで毎年 1、2回ネパールに渡航していた。滞在期間は3週間くらい。現地のクリシュンさんにメチャくん絵本の翻訳をしてもらっていた。そして、現地で印刷をしていた。ネパールの出版社から出版もされている。

翻訳の打ち合わせや、完成した絵本を子どもたちに配るためにネパールに渡航していた。その合間に現地の友人たちと山やジャングルに行った。いつもバイクの後ろに乗せてもらっていた。

私が滞在していた頃、首都カトマンズはカオスな街だった。交通ルールがない。車線がない(あるかもしれないけど。)信号がずっと消えている(ずっと停電)。大大大渋滞。車とバイクと自転車と牛とヤギと犬と人が縦横無尽に走ったり歩いたり寝そべったりしていた。

田舎は車が通れない道が多かった。友人が運転するバイク、初めて会った人のバイクに、着物で、ワンピースで、民族衣装で、ヘルメットをかぶらずに乗っていた。

運転する友人と私の間に絵本がぎっしり入った段ボール箱を積んで、毛布を積んで、なんでも積んで走った。

ネパールの人たちはバイクでなんでも運んでいた。布団、ヤギ、犬、鶏、家族3人は当たり前で、夫婦2人に子供3人、犬1匹を乗せて走っていたりする。テレビ、自転車、バイクにバイクを積んで走っている人もいた。すごかった。大迫力だった。

雨の日はみんなレインポンチョを着て走る。二人乗り用のポンチョも売っていた。大きなポンチョに、頭を入れる穴がふたつ空いているのだ。つながっているポンチョ。それを着て走るのは ちょっとコワイ気がする。

ホンダのバイクが多かった。”インド製のホンダ” と、友人たちは言っていた。日本で作るバイクと仕様がちがうらしい。たくさん人が乗ったり、ボコボコの道を走るので、それに耐えられるような作りになっていると言っていた。

”バイクの後ろに乗るのはジャンプしながら乗る” というイメージだった。最初はコワかったけれど面白かった。

ということで、日本でバイクの後ろに乗せてもらうのはどういう感じだろう。と、楽しみだった。弟はハーレーのマスターテクニシャンだが、乗せてもらったことはない。

わくわく。ドキドキ。

黒いサロペットを着ることにする。それにいつもの長靴。こもれびの森に行くときは毎回長靴を履いている。そして、荷物は少なめで。

ボロロン、ボロロン、とエンジンの音。

ごはんさんのバイクは、後ろにもたれることができる。すごく楽ちんだ。そして、安定感がある。後部座席に掴まるところもついている。快適。

ヘルメットを借りてかぶる。

ボロロン、ボロロン、しゅっぱーつ!

すごくきもちよかった。
すごく楽しい。笑いが止まらなかった。ずっと、あははは、あははは、と笑っていた。

車の中から見るのと景色がちがって見える。流れてゆく景色が近くに感じる。くっきりと胸に迫ってくる。「ストレス解消にはバイクに乗るのが一番。」と、ごはんさんが言っていたのが分かる。

弟も、「車も人も少ない早朝にバイクで走るの最高。」と言っていた。なるほど。

以前、「ねぇちゃん、早朝にリトルカブ乗ってみたら?」とも言っていた。「早朝って朝9じごろ?」と聞くと、「早起きできんかったね…。」と言った。両親も弟もすごい早起きなのだ。私だけ早起きできないのが本当に不思議だ。

途中で、以前行ったハーレー屋さんに寄る。
以前の心遣いのお礼にと、ごはんさんが缶ビールとお菓子を用意していたので持っていく。

個性的でフレンドリーな店長さんがいた。
ごはんさんがお礼を渡すととても喜んでいた。そして、いろいろ驚いたことがあった。

頭にもタトゥーが入っている店長さんが、

「僕、最近絵本に興味があって、昨日 ”くらいくらい” の絵本買ったんすよ。そんとき、この前来た人、絵本作家って言ってたなぁって思ってたんすよ。」と目をまるくしている。そして、

「そんで、一昨日、この人来たんすよ。」と言って写真を見せてくれた。

「弟さんのお店にいた人ですよ。徳島から来てくれたんすよ。」と言った。

どっちの話もびっくり。

以前、弟と話したとき、弟の部下にあたる人が独立して、こちらのパーツ屋さんと取引していると言っていた。それがこの写真の人だった。福岡と徳島。すごい偶然。

「いろいろな山から見る星がきれいだ。」という話になる。
首にも手にも足にも見えているところぜんぶにタトゥーが入っている店長さん(きっと見えていないところにも入っているのだろう)が、

「きれいなものは素直に ”きれい” って伝えたいんすよ。そういうこと言うの恥ずかしがって言わない人もいるじゃないすか。僕は言いたい。」と、言った。

「ごはんさんと同じだね。」と言った。

「気が合いそう。」と、ごはんさんが言って笑った。

笑顔で見送ってくれる店長さん。

こもれびの森に到着。とても楽しかった。

「コワかった?」と、ごはんさん。

「コワくなかった。きもちよかったし楽しかった。」と、私。

今日もミケちゃんたちが出迎えてくれる。

Oさんがやってきた。
それぞれ用事をする。もくもく。

こもれびの森での ごはんさんにとってのいろいろは、普通に暮らしていると経験しないような大変なことばかりだ。それでも、心を深い沼に沈ませることなく明るくがんばっている。すごいなぁと思う。

夕方になった。熱いコーヒーを淹れる。ごはんさんとOさんが外で立ったまま飲んでいる。「おいしい。」と言ってくれた。

帰路に着く。
大満足だった。

家に帰って修一郎に話す。「よかったね。」と言ってくれた。

今度は車でお買い物に行く。
「バーベキューしよう。」ということになる。

ごはんさんが炭に火を点す。いつもの炭と備長炭を混ぜる。ゴォゴォと炎が燃えている。テーブルと椅子を用意してくれる。

ごはんさんはまず殻付きの牡蠣を焼く。
私はスキレットにオリーブオイルをたっぷり入れて椎茸とカリフラワーを乗せて岩塩をゴリゴリ挽いて振りかける。焼けるまでカマンベールチーズを食べる。そうだ、今度グリーンオリーブの塩漬けを買おう。

アヒージョ。いい香り。

カメムシが20匹くらい飛んでいる。ご飯の中に入ったり、頭に止まったり忙しい。

たくさん食べた。食材はいつもの除去食と同じだが、バーベキューにするといつもよりたくさん食べれる。楽しくおいしいバーベキュー。

残った炭の燃える様子が美しい。まろやかなぬくもりにとろける。

片付けて家に戻る。
墨色の夜空に地図のような雲の模様。クローバーたちも眠っている。きれい。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。

カカオは遊びに出かけている。

今日もいい一日だった。

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