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〆切に間にあった

5月9日(木)
昨晩、眠ろうとしたらカカオがベッドの真ん中で まるくなって眠っていた。カカオを起こさないように そっとおふとんに潜り込んだ。

朝、ぱちりと目が覚める。
カカオは先に起きているようだ。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。今日もクローバーが輝いている。うっとり。

カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。

早めに食事の支度をする。お寿司。

仕事をする。いい感じだ。

午後、ごはんさんに昨日届いたヘルメットを見せに行く。あごひもの締め方を教えてもらう。ふむふむ。

「みるさん、昨日の夜 2時ごろ星がすっごくきれいだった。前、カシオペア座が見えてたところに北斗七星があった。すごく大きくて輝いていて本当にきれいだった。この季節のこの時間になると、ここまで動いてるんだなって分かってきた。」と、ごはんさんが言った。

胸が高鳴った。

「素敵、素敵!話聞いてるだけで、わくわくする!」と、私。

そのあと、ごはんさんが地軸の話をした。ちょっと難しかった。

「ともかく仕事がんばって。」と、ごはんさん。

「うん!」と言ってヘルメットを抱えて家に帰る。

仕事をする。せっせ、せっせ。絵の中のメチャくんたちが楽しそうだ。よし。

鳥たちの声がする。すごく素敵。なんてきれいな声。その声に呼ばれてカマを持って庭に出る。ぽかぽかしている。きもちがいい。少し庭仕事をする。ちょっとだけ…。

お仕事に行くために ごはんさんが出てきた。さっと隠れる。あ、見つかった。ちょっとおしゃべり。私が手に持っているカマを見ている。そっと後ろに隠そうと思ったら、

「〆切 間に合うの?カマ持ってる場合じゃないでしょ。」と、ごはんさん。

急いで後ろに隠す。へへへ。いつも気にかけてくれて本当にありがたいなぁと思う。

家に入り仕事をする。はかどっている。ぐんぐん描き進める。追い込みだ。このペースなら今日中にできそうだ。やった。

プリントアウトして確認する。修正する。これを繰り返す。少し時間をおいてまた見直す。調整する。よし。夜中までかかると思っていたけれど、あと少しだ。時間が味方してくれている気がする。

同じ姿勢で ずっと作画していると、とても低い血圧がますます下がってゆく感じがする。立ち上がって頭を下げて髪を もしゃもしゃする。

ピンポーン。チャイムが鳴った。
ものすごく もしゃもしゃの髪のまま玄関へ行き、戸を開ける。

ぷりんさんがトゥインクルちゃんを抱っこして立っていた。

「寝てた?」と、ぷりんさん。

「ううん。ちょっと体操してた。お散歩?」と、私。

「うん。」と、ぷりんさん。

トゥインクルちゃんは大きな瞳で じっとこっちを見ている。可愛い…。きゅん。

「ちょっと待ってて、髪、梳かしてくる。」と、私。

ささっと梳かして帽子をかぶる。お散歩へ しゅっぱーつ!

ゆっくり歩く。トゥインクルちゃんが坊主頭になっている。ムスリムの儀式のひとつが行われたようだ。赤ちゃんが産まれると、赤ちゃんの髪の毛と同じ量のゴールドを貧しい人たちに配るというもの。

のんびり歩いて ぷりんさんのお家に行く。

「もう夕食作った〜?」と、ぷりんさん。

「うん、お寿司作った〜。ぷりんさんとこはカレー?」と、私。

「うん、毎日カレー。」と、ぷりんさん。そして ふたりで笑った。

いつものように、ぷりんさんとトゥインクルちゃんとベッドに座る。りんごをむいてくれる。昔の写真を見せてくれた。ぷりんさんの赤ちゃんのときとトゥインクルちゃんがそっくりだ。可愛い。お人形さんみたいだ。

チャイさんと ぷりんさんの結婚式の写真もあった。チャイさんが ほっそりしていてびっくりした。いつもお化粧をしていない ぷりんさんが濃いお化粧をしている。とてもきれい。

結婚するまではヒジャブ(頭を覆う衣類)をしていない。写真を見ながら ”ヒジャブ” が出てこなかった。

「デジャブ。」と言うと、「ヒジャブ。」と瞬時に返ってきた。ぷりんさんは勘がいい。

わぁわぁ言いながら写真を見ていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。ぷりんさんが玄関を開けると、仕事から帰ってきたチャイさんだった。

「早かったね〜。」と言ってから、ふと時計を見た。19時過ぎている。え。

「もう 7時だよ!」と、私。

「え!早〜い。」と、ぷりんさん。

「帰らなくちゃ!」と、私。

「もっといてくださいよ。」と、チャイさん。「いやいや…。」と言いながら玄関で少しおしゃべりをする。ちょっと真面目な話になる。

「と言っても、まぁ、なんとかなるよ〜。」と、私。そして、にっこり。

「うん、そうですね。」と、チャイさんも にっこり笑った。そして、

「ぜんぶ神様が決めてくれているから。」と、言った。

「うん、そうだね。神様に任せるのが いちばんいいね。」と、私。

「大変なとき、それが起こって良かったとまでは言わないけど、それが起こったからこそ。っていうことがある。」と、チャイさん。

「うん、そのおかげで いまがある。だもんね。」と、私。

「オレ、祈ります。」と、真面目な顔のチャイさん。

「うん。ありがとう。」と私。そして、

「またね!」と言って帰る。

仕事をする。できた。ぱちぱちぱち。
前年の表紙とガラリと雰囲気を変えた。毎回そうしている。新しいディスクロージャー誌が出た!ということが分かりやすいかなと思う。データを送る。

もう 1点の〆切は来週の中頃。担当のNさんが「来週なら十分大丈夫ですよ。」と言ってくれた。信用金庫の人たちは いつもとても優しい。

片付けをしていると修一郎が起きてきた。
お重に詰めたお寿司を食べている。

夜、庭に出る。
寒い。ぶるっとする。ぽつりぽつりと星が瞬いている。ふたつ並んでいるあの星は北斗七星の一部じゃないかな。と想像する。眠る前にまた見てみよう。クローバー畑の白い花が玄関灯に照らされて ぽっと淡く光っている。可愛い。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。

カカオが走り込んで帰ってきた。

これから次の仕事に取りかかろう。

今日もいい一日だった。

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