甲状腺乳頭癌の話22 進まない時計
甲状腺切除手術が終わった後は、動くことができず寝たきりとなります。
でも3時間後には、ほとんどの人が起き上がることができるそうです。
私の場合は、そうでないケースとなってしまいました。
血圧が200
聞いたことのない台詞でした。
傷口から出血の恐れがあることから、血圧が下がってからでないと起き上がることができなくなりました。
降圧剤を投与され、降圧剤テープも胸に貼られ、「おそらく朝までこのまま」と言われたのでした。
動けない辛さより、出血の方が恐怖でした。
それまでの3時間は「動くことができない」感覚だったのが、もっと強く「決して動いてはならぬ」に変化しました。
不安になってきました。
そして、全身麻酔の副作用である頭痛については、ようやく点滴に入れる痛み止めを投与してもらったのです。
ところが、この痛み止めもあまり効きませんでした。
やってくれるな、全身麻酔…。
動けない、頭が痛い、そして不安。
不安が進行してネガティブ思考から逃れられなくなり、そのためか胸の辺りも苦しくなってきました。
動けないことや、痛みに耐えることは、これまでの人生で何度か経験済みです。
だから、これぐらい何とか乗り越えられるだろうという自信がありました。
経験を積んでいるとそういう強みがあります。
でもネガティブ思考による苦しみ、これだけは何度経験しても慣れません。
いやむしろ、年々、強く、深くなっていくようです。
おまけに動けないから、テレビもスマホも見るのは禁止。
気分転換の方法も使えません。
寝よう。
寝てしまえば、全て解決。
ところが、頭痛のため、眠れない。
早く朝になってほしい…。
段々眠くなってきて…眠りました。深い眠り。
そして目が覚めました。
もう朝になっただろう、と、時計を見るとまだ1時間しか経っていませんでした。
起きてしまうと、 動けない、頭痛、ネガティブ思考 が襲ってきます。
寝よう。
また眠りました。深い眠り。
そして目が覚めました。
時計を見ると、1時間しか経過していない…。
その後もこの繰り返し。
時計は1時間毎しか進んでくれません。
起きるたびに、ちょうど1時間後。
時間の進み方は、本当は一定ではないのかもしれない。
もうそろそろ長く眠れるか、と期待もしました。
でも、まるでそう決まっていることかのように1時間毎なのです。
……
……
……
この予想通りの展開に、段々慣れてきてしまいました。
全然楽しくないけど、他にすることがないので、この現実を楽しむことにしたのです。
不思議なもので、朝が近づくと、ネガティブ思考だけは薄まってきたのでした。
そして、ようやく朝6時。
血圧は130
看護師さんから起き上がる許可をいただきました。
寝たきりになってからちょうど12時間が経過。
でも、これまでで一番長い12時間だったのでした。
→ 続く
お読みいただき、ありがとうございました。
追記:見出し画像は、いらすとやさんからお借りしました。
ありがとうございます!
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