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新陽高校がDXで創り、得たモノ

本記事は、Mikketa!!by北海道IT推進協会で、2020年5月12日に掲載したものです。


5月某日、協会長の入澤からこのような連絡が届きました。
「新陽高校のIT授業が、素晴らしくて、感動した。多分、日本でも有数だと思う。全員Chromebook持ってるらしい・・。」

なんと、、、。

北海道のITを取材する、Mikketaとしてはぜひぜひお伺いして、お話を聞いてこなければ!!!

そこで、入澤会長とともに学校法人札幌慈恵学園札幌新陽高等学校の先生方に同校のデジタルトランスフォーメーションについてお話をお伺いしてきました!!

新陽高等学校 ホームページ


教育のDXは4年前に始まった。

同校職員室。完全フリーアドレス、WiFi完備です

荒井優校長が、新陽高校の校長として
着任されたのは2016年のこと。

その当時の事を、荒井校長はこう話します。

「パソコンは一人一台無い状態で、
数人で使える、共有のパソコンがあった。
テスト前は争奪戦だった。」

全国の学校が未だそうであるように、
新陽高等学校もほんの4年前まで
デジタルトランスフォーメーション
(以下DX)は進んでいなかったといいます。

デジタルトランスフォーメーションとは?
デジタル・テクノロジーを使って経営や事業の在り方を変革したり、生活や働き方を変革することをさします。デジタルテクノロジーを使って、既存製品や既存の物事の付加価値を高め、業務の効率化を図ることは、デジタライゼーションと言われています。

ITmedeia 2019/1/18 これ1枚で分かる「デジタルトランスフォーメーションの真意とデジタライゼーションとの違い」より。

そこからどのようにして、
現在の在宅ワークとオンライン授業が
可能な学校へとDXを遂げたのでしょうか。

ある日突然与えられたChromebook

「ほんとに最初は試験前になるとパソコンルームのパソコンの奪い合いで。テスト前もそうですけど、試験が終わったあとも、成績処理でとかそこで渋滞もおこる訳ですよね。つい直前までそんな状態だったのが、2016年の4月に突然(Chromebookを)与えられて,,,中には半年ぐらい机の引き出しから出さなかった先生もいると思う。」

と話すのは、現在は法人副本部長として同校に勤務する、高橋淳郎先生です。

新陽高校のDXの始まりは、Chromebookを全教職員に貸与するところから始まりました。

今では1人1台当たり前にノートパソコンを持ち、利活用されていらっしゃいます。

その後生徒にもiPadを配り、授業を進められる。と思ったものの、膨大な量のキッティング作業が、先生方の前に作業として立ちはだかりました。

「ID付与して、配布してという作業が凄く手間暇かかった」(荒井校長)

キッティング作業の効率化を考えたり、授業時の生徒の集中度合の改善を図る中で、もともと導入を検討していた、Chromebookの導入へと移行をしていったといいます。

また同校では、校舎に1000万円設備投資をし、「教員、生徒、ゲスト」用のWi-Fiを完全整備、授業で生徒が一斉に接続するという、学校ならではの特殊環境においても「つながらない」という事がないように、インフラの整備も行ったといいます。

教室に必ず置かれているWiFi端末。

校務システムは自前で作った物とGsuite

同校が、校務の柱として利用をしているシステムは大きく2つです。

一つはBLENDという校務管理システム。
もう一つは、Gsuiteにある「google classroom」機能です。

「僕が赴任してくる前から、今とは違う、校務システムを新陽もつかっていたんですけど、このシステムが実は先生たちの評判が悪くて。すごいもっさりしていて使いにくいとか。『だったら紙の方が良い。』って、みんながすぐ言う訳ですよ。

だったら自前でやるのが一番いいや!と思ったので、一人SEの方に常駐してもらって、先生たちの声を聞きながら1年かけて作ってもらったんです。」(荒井校長)

と、見せて下さったのがBLENDという校務システムです。

BLENDの教員画面です。

学校から生徒への連絡や出欠確認、成績確認などの連絡は、生徒への連絡はもちろん、保護者への連絡も、このBLENDを通して行われています。

もう一つ、授業を運営する上で同校が利用をしているのがgoogleにある、classroomという機能です。

「classroomでは、授業前の課題のやり取りや、小テスト等の実施が可能なんです。クラスルームとスプレッドシート等を活用して授業を進めています」(川崎先生)

google class roomの画面。いろんな授業やクラスルームが表示されていました。

BLENDでは、業務連絡のような連絡を行い、classroomでは先生対生徒の授業のやり取りをする形で、運営されていました。

実は、同校が作ったシステムが、もう一つあります。
それは、先生方の勤怠管理です。

「既存ASPなども探したんですが、既存の勤怠管理システムは、学校の仕組みには準拠してないですよね。
『学校の仕組みにそぐわない』っていうところで先生たちが、使うのを嫌がってしまう。なので、本校専用の物をGsuiteのスプレッドシートで作って管理している」(荒井校長)

その他にも、私立の学校を運営していく上で重要になる、生徒募集のKPI管理なども、スプレッドシートと、マクロで組まれており、年度終わりの最終予測値まで出せるようになっているといいます。

まだ同校では、北海道の私立高校初のWEB出願を
2018年度入試から取り入れるなど入試業務の改善も
行われています。

また先生からのアイディアでgoogle siteを用いて、オンラインの進路支援室をつくり、受験生の支援が最大限できるようになっていました。

その他にも
「Online libraryをGsuiteで作って、蔵書検索だけでなく、貸出管理までできるにしたい!!」(高石先生)

このように、紙で管理していたものや、
発行していたもの、手入力していたものなどのデジタル化が
とても進んでいるのと同時に、
現在進行形で先生方からの発案や
アイディアベースで、日々改善が行われています。

「上からのDXは難しくありませんが、
(現場に合わないなどで)活用されにくい。
 現場(先生たち)からのDXこそ、最も価値がありますし、
 そういう組織風土を皆で作っていることこそが、
 新陽高校の強みだとおもってます。」

と荒井校長は仰っていました。

そして起こったコロナによる一斉休校

札幌市に新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出た翌日の2月28日から同校は、オンライン授業を開始しました。

4年前からデジタル化を行っていた同校ですが、オンラインで授業を行うのは初めてだったといいます。

学の授業の様子。下記のパターン2の授業をされていました。

同校のオンライン授業は大きく3つに分けて運用されており

1:いつもの授業のように同じ時間にみんなで集まり、ティーチングを受ける授業。
2:自習を進める中で、分からないことがあったら、先生に自由に質問していいよ。と連絡してあり、先生がWEB会議システムを開きっぱなしにして、分からないところがあった生徒が、随時聞きに来る授業。
3:自宅でできる課題を出し、提出をする授業(体育等)

という形があり、職員室内や教室など各先生方がそれぞれ、やりやすい場所で授業を行っていました。

いろんなところで授業がたちまち始まるのでビックリしました。
先生方は、一人一台パソコンを持ち好きな場所で仕事や授業をしていました!

取材時、職員室にいる先生は普段の半分だと言います。

「教員も完全在宅ワークが出来るんですよ。在宅ワークが始まってから、学校に来たのは今日が初めてです。」(高石先生)

このコロナ禍においても今までと同じような形で、生徒たちの学びを支援出来てるというのも、同校がDXを推進してきた結果なのかもしれません。

DXがもたらした両側面の影響

「正直、これは(DXの)負の側面ですけど、それ(ICTを利用すること)がやっぱり負荷になりすぎたり、変化に対する拒否反応で、”環境を変える”という選択をした先生も中には居ました。」(高橋先生)

今まで黒板やプリントを用いて、生徒情報も紙で管理していたところから、デジタル管理への変化は、若い世代の先生であれば、違和感なくなじむこともできるかもしれません。

教室で授業配信をされている先生の工夫や試行錯誤が見て取れます。
まさに先生がホワイトボードとプロジェクターを使って、授業を行っている最中でした。

ですが、プライベートでもガラケーを使い、スマートフォンやタブレットなどの、ガジェットをはじめITに苦手意識を持っているベテラン先生も同校にいた中で、「産みの苦しみ」とも言えるような事象が起こるのは、ある意味必然だったのかもしれません。

高橋先生は、こう続けます。

「一方で、デジタル化が、(職員の)世代間のコミュニケーションの一つの媒体になったっていうのもあったと思います。あまり実務経験のない先生は、得意分野(ITのことなど)を教えることで、自信をつけられたり、という副産物もあったなと、見ていて思いました。」(高橋先生)


最後に

取材をさせていただく中で
凄く感じたことがありました。

それは、先生方のコミュニケーション量がとても多いことです。

雑談をするという意味での、コミュニケーションではなく、授業内容や生徒支援計画についてなどの会話が様々なところで、繰り広げられていました。(同校では進路指導、生徒指導ではなく、進路支援、生徒支援と言うそうです。)

DXによって、教員が校務や庶務に使用していた時間を、教員本来の姿である「生徒の学びを支援する人」として、必要だけど、従来であれば時間をとるのが中々難しい。といわれるアクションを先生方がより一層取れるようになった。

そのような印象を受けました。

取材をさせていただき、
また詳細、様々な事を教えていただき本当にありがとうございました。

追伸:

3月に大変話題になった、
同校2年生(現3年生)の生徒が

作成をした、同校の在宅学習方法についてまとめた資料にも
ぜひ一度お目通しいただければ、、、と思います。
(2022年10月現在、資料は非公開になっています。)

追伸の追伸:

取材にも協力をしてくださった
高石先生が企画主催し、
全道的な休校による給食の停止や
飲食店の休業に伴い、
消費が落ち込む牛乳を切り口に
テレビ電話zoomでの
ワークショップで
北海道の魅力について考える企画

題して、
「北海道の宝物プロジェクト第1弾」
〜オンライン探究学習のご案内〜
が、2020年5月14日に開催されます!!

以下詳細です!
ぜひぜひ、ご参加ください^^

【全道・全国の高校生の皆さまへ】 北海道の宝物プロジェクト第1弾 〜オンライン探究学習のご案内〜 5/14(木)13:00-15:00 ①ざっくり 北海道の酪農家さんを、学びの力で応援するオンラインイベントです。下記ご覧いただき、よろ...

Posted by Daido Takaishi on Friday, May 8, 2020


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