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Braintrust - フリーランサー向けジョブマッチングをWEB3にしたらこんな感じ

VC界でWeb3のリーダー的存在であるChris Dixon (Andreessen Horowitz)が、’Web 3 is ownership’ と一言ツイートしました。Web2.0では、Web1.0の見るだけ(Read Only)WEBから、ユーザもコンテンツを発信できる(Read & Write) Webとなりました。ただ、ブログから始まったWeb2.0も、最終的にはソーシャルネットワーク等のプラットフォームが巨大化し、ユーザが見るべきコンテンツの選択やマネタイズを独占する状況となってしまいました。。。

それがここにきてクリエイターエコノミーの盛り上がりと、何よりも仮想通貨の発展によって、プラットフォームやネットワークの参加者にもサービスのオーなシップと経済的なメリットを付与する基盤ができあがりました。まだ、そららを可能にするツールは新しく、現実的にどのように各プロジェクトの仮想通貨経済圏を設計しWeb3のビジョンを実現できるかはトライアンドエラーが続くと考えらます。

そんな中、最近Braintrustが、独自仮想通貨BTRSTを使って$100M調達したので、同社について少し書いてみたいと思います。

Braintrustは、フリーランスのエンジニアやデザイナーと人材を探している企業をマッチングするサービスです。同様のサービスでは、Upwork、Fiverrのような大手が既に存在していますが、Braintrustの大きな特徴は、仮想通貨経済圏を構築し参加者へのインセンティブとオーナーシップに利用していることです。まさに、Web3の初期の事例となります。

コミュニティメンバーへのインセンティブ

Braintrustは、独自仮想通貨BTRST、売上、BTRSTの還元状況などをダッシュボードで公開しています。そちらによりますと、Braintrust の仮想通貨BTRSTは、全体で2.5億発行する予定(現段階で約8300万が流通)となっており、そのうちの54%(1.35億BTRST)をプラットフォーム参加者(以下、コミュニティメンバー)へ還元する計画となっています。既に、760万BTRSTを参加者へ還元しました。本日時点での、BTRSTの価格が$4.58で取引されていますので、およそUS 35M(39億円)のインセンティブを還元したことになります。

(Braintrust Network Dashboardより抜粋。数字は執筆時点のもの)

コミュニティメンバーは、Braintrustの事業、マーケットプレイスの成長に寄与することによってBTRSTを受け取ることができます。例えば、新規顧客やフリーランサーの紹介、フリーランサーの審査、教育コンテンツの受講をすることなどがそれに含まれます。

ダッシュボードで、Braintrustマーケットプレイスへ新規の顧客やフリーランサーを紹介した人のランキングが公開されていますが、トップの人は、これまでに31,698 BTRSTを受け取っています。本日時点での、BTRSTの価格が$4.58で取引されていますので、およそ14万5000ドル(1600万円)のインセンティブを受け取っていることになります。

(Braintrust Network Dashboardより抜粋。数字は執筆時点のもの)

このインセンティブプログラムにより、マーケットプレイスへ多くの仕事を発注してくれそうな優良顧客、良い仕事をしてくれるトップクラスの人材を紹介しようというモティベーションがうまく働いているようで、クライントページには、NASA、Nike、Nestle、ポルシェ、インテル、IBMなどの企業が既にリストアップされています。

そして売上も順調に伸びていて、2021年12月の段階では、Gross Services Value (Braintrustがクライアントから受け取った金額)の累計が約2年で$29Mとなっています。(本格的なローンチは18ヶ月前)

(Braintrust Network Dashboardより抜粋。数字は執筆時点のもの)


仮想通貨BTRSTを使った初期のマーケットプレイスの立ち上げは順調に進んでいる様に見えますね。若干気になるのは、BTRST通貨が下がり基調であることです。コミュニティメンバーが受け取ったBTRSTを現金化する売りのニーズはありますが、今後は買いても増やしていく必要があります。マーケットプレイスが受け取る手数料(フリーランサーが受け取る額に10%上乗せ)を、プロダクト開発やコミュニティへの還元にどのように活用し、マーケットプレイスを成長させていけるか注目です。

オーナーシップ

Braintrustのもう1つの特徴は、BTRSTを持っていれば、コミュニティメンバーは、プロダクトの改善や新規市場参入などの提案等、重要な意思決定に参加することができることです。こちらのガバナンスのページが用意されていて、ウォレットを接続してBTRSTの所有を確認後参加することができるようです。例えば、BTRSTがオーナーがWEBサイトの日本市場へのローカライズを提案することなんかもでき、他のコミュニティメンバーからの賛同を得られれば実現することができます。

以下のAdam Jackson (CEO)のインタビューによりますと、今後は彼を含む創業メンバーの意見は徐々に薄まっていき、最終的には、コミュニティの意思決定によって運営されるDAO化を推進していくとのことでした。


まとめ

仮想通貨を利用して、プラットフォームの成長を促進する初期のモデルとなるBraintrust。これまでのところは順調に成長している様子です。彼らがターゲットにしているのが、エンジニアやデザイナーで、既に仮想通貨やWeb3について知識がある市場であるというのも有利に働いていると考えられます。

一方で、Web3スタートアップは、仮想通貨を初期の段階で発行しているため、コミュニティメンバーも参加するガバナンスの仕組み、創業メンバーやVCの仮想通貨を売るタイミングや仮想通貨BTRSTの価格など全体のバランスがどのように発展していくかはとても興味深いですね。

他の業界でのWeb3の適用事例も含めて今後フォローしていきたいと思います。