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考えは移動させながら書く/作家の僕がやっている文章術148

書き手の考えや感じ方をつづった文章は、ひとりよがりになりがちです。

<文例1>
文化の本質は、言語と、その言語を話す国民のアイデンティティーに発する要素が大きいと思う。

日本的な文化はアジア圏のなかでも、中国や韓国と比しても、異なる文化、いや独立した文化を形成していて、清浄であることと、思いやる気持ちから始まる配慮に満ちたものだといわざるを得ない。

ありがとうとという言葉には「有り難し」の意味が込められていて、存在するはずがないものが、自分の前に存在していることへの感謝を述べている。

他者からの行為に、謝辞として述べる「ありがとう」は、本来ならしてくれるはずのない言動を向けてくれたことへの、有り難とうなのである。

この気持ちと言語と行動が、日本の文化を象徴している。

壮大な初日の出をながめたときに、古くから日本人は、太陽に両手を合わせて「ありがたや」と敬意を自然に対してはらってきた。

白飯と魚と菜を食するときに感じる、ありがたさは、自然への敬意である。

米や菜を栽培した人への感謝であり、魚を収穫した人への感謝である。

神社の清浄で威厳のある建物に、仏像のおだやかで荘厳な姿形に、ありがたしと感じる心が、日本文化の根底に流れている。

ありがたいと思えるものを作る。

それが日本らしい文化の本質である。
(即興/美樹香月)

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文例1は、著者の論を述べた論文です。

このまま論文は続きそうですが、意味を理解しながら、読み進めるためには、読者の集中力が必要です。

緊張を強いる文章で、リラックスして読むことができません。

ではどう書いたら、読者の緊張をほぐし、読みやすいと感じられる文章に仕上げることができるのでしょうか。

そのテクニックをご紹介します。

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