ドリアン長野

1961年生まれ。高校生の時にセックス.ピストルズを知って衝撃を受け、怠惰な生活から足…

ドリアン長野

1961年生まれ。高校生の時にセックス.ピストルズを知って衝撃を受け、怠惰な生活から足を洗う。50歳で父親になったパンクと読書と極真空手を偏愛する元リーマンパッカー。

最近の記事

ケアンズへの道①

娘は小学生の頃から海外に連れて行けと連呼していた。いつだったか、先生が「海外に行ったことのある人?」と聞いたら、クラスのほとんどの児童が手を挙げたと言う。 ほとんどっていうのは普通少なくとも8割だろう。まさか4割じゃないだろうな。水増ししてんじゃねぇだろうな。この地域は割と富裕層が多い。だからか。 言っとくけど、うちは富裕層じゃないからな。たまたま中古マンションが安かったから買っただけだけど、それが15年で1.5倍に跳ね上がった。マンション自体は古いが、立地場所がよかったので

    • 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

      著者は貧困家庭で育ち、福岡の名門高校に進学したが同級生たちは親が医者や弁護士や社長ばかりで疎外感を感じていた。ある時パンクロックを知り、労働者階級の自分を誇りに思う人がいることに感銘を受け、バンドを組み、セックス.ピストルズのファンクラブ会長になる。 試験の答案用紙の裏に大杉栄のミニ論文を書いたところ(セックスピストルズ の「アナーキー.イン.ザ.UK」の影響だろう)、それを読んだ現国の教師に大学に行って本を読み、物を書け、と熱心に勧められる。その一方で他の教師からバイトを

      • 『大丈夫、私を生きる。』トリーチャー・コリンズ症候群 山川記代香

        著者はトリーチャー・コリンズ症候群という五万人に一人という難病を持って生まれました。 顔の変形だけでなく、この病気は死の危険と隣り合わせなので見た目をよくするためではなく、生きていくために何度も手術を受けてきました。 彼女は小さい頃から「視線の凶器」を受けてきただけではなく、心無い言葉をぶつけられてきました。 「おばけ」「怖い」など。あまつさえ、指差して笑う人もいました。 彼女は生まれつき耳が完全に形成されなかったので、8回の手術によって両耳を作りました。マスクをつけられる

        • 『君とパパの片道列車』

          娘が今年、中学受験をしたので灘中の算数の過去問を見たことがありますが驚きました。 こんな難問を小学生が解くのか!という驚きでした。演算でも数式が延々と続き、かなりのスピードで解かなければならないのです。 ちなみに小学生の時にIQ185だと診断された中島らもは灘中に入学した時の成績が学年で8番目だったのですが、本人は俺の前に7人もいるのか、と思ったそうです。 本書の主人公は小学生三年生で入塾します。そして目指すなら、と灘中受験を決意するのですが、塾の先生に聞いてみると「灘コー

        ケアンズへの道①

          『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

          小五の娘が珍しくマンガではない本を読んでいる。家にある「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」だ。 娘は自分自身を内気で自分で陰キャ、という。友だちも少ないが、その娘にも親友がいる。親友は日本で生まれたが、お父さんはリバプール生まれのイギリス人でお母さんは日本人だ。 この本を読んで、共感するところがあり、よかったと言ったらしい。 著者は福岡の進学校に通ったが、周囲が医者や弁護士の子女ばかりで浮いていたという。通学定期代を捻出するためにスーパーでバイトしていたのを見つか

          『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

          USJとオッペンハイマーの恐怖とは

          私は爆音が苦手だ。いやパンクなんか大音量で聴かないと聴いた気がしないので正確に言うと、「爆音がするとわかっていて、その時が来るまでが恐怖」である。 いや爆音に限らず、びびらせることが起こるとわかっている時間が怖いのだ。 例えば、ユニバの「ジョーズ」。小船に乗ると運転人兼案内人が「皆様、ようこそ。私がこのツアーを案内させていただく鈴木です」とか言う。 しばらくすると「皆様、申し訳ございません。航路を間違えてしまいました」とか言う。 私は二回目だからわかっているのだ(妻や子ど

          USJとオッペンハイマーの恐怖とは

          「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)

          三日間で33億円の興行収入!もちろん歴代最高です。前日に娘が観に行きたいと言うので公開二日目に梅田の映画館に行きました。 舞台は函館です。観光案内かと思うほど函館の名所がふんたんに出てきます。青山先生の故郷、鳥取も舞台に使ってくれないですかね。 今回の主役は怪盗キッドと服部平次。 函館、土方歳三、埋蔵金探し、まるで『ゴールデンカムイ』ではありませんか。  『コナン』は80巻くらいしか読んでいないので京都とのお嬢様と彼女に仕える紅葉と伊織のコンビは初見でした。 スピンオフ

          「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)

          「ユーは何しに羽田空港へ?」と東京モノレールの中で叫ぶ

          小六の娘は大の空港好き。いや、かくいう私も空港が大好きだ。 先日東京に行くことになったが娘の強い希望で関空から羽田まで飛行機で行くことになった。 年に一回か二回は東京に行く機会があるのだが、娘があと一か月で大人料金になる前なので新幹線の料金と比較しても大して違いはない。 自宅から関空まで1時間。前のめりで昼飯どきに関空に着いた空港大好きなわれわれは(飛行機は15時発)フードコートもマクドもすき家もインバウンドに占領されているのでコンビニで食料を買い込み、ベンチで食べる。空

          「ユーは何しに羽田空港へ?」と東京モノレールの中で叫ぶ

          父とファミリーヒストリー

          2023年10月29日、教会での聖餐会のお話しです。 皆さん、おはようございます。長野兄弟です。今日のテーマは神殿ですが、神殿と家族歴史は不可分ですので、今日のお話は神殿でもあり、家族歴史でもあります。 以前平野ワードがありました。この阿倍野ワードと教会を共有していて、平野ワードには姉妹の妹が集っていました。彼女は阿倍野ワードの西兄弟と結婚したので、私は西兄弟の義理の兄になりました。ご存じの方もおられると思いますが、彼は頭脳明晰、誠実、努力家、信仰に篤く、しかもイケメンとい

          父とファミリーヒストリー

          『52ヘルツのクジラたち』

          格闘技では劣勢になると笑う人がいる。全然効いてないと余裕を見せる。 いじめられている者はヘラヘラと笑う。 自分が苦しんでいることを他人に知られたくない。悲鳴さえあげられない。 「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのこと。 この物語は虐待、ヤングケアラー、性的マイノリティーといった様々な問題を内包する。 母親から虐待を受けていた三島貴瑚は同じように母親から虐待されて声の出ない13歳の少年と出会う。 アンと

          『52ヘルツのクジラたち』

          沖縄テゲテゲとタコスとサトウキビ畑とTHE BOOMと

          旅の記憶は現地で食べた物と分かち難く結びついています。 沖縄発祥のタコスといえばコザの中央パークアベニューにある「チャーリー多幸寿」。チャーリーは創業者の勝田さんに米兵がつけたニックネームです。創業は1956年ですから70年近くです。店内はアメリカンな雰囲気で壁に所狭しと有名人や一般人の色紙が飾られています。山形から食べに来ました、という色紙もありました。 時間がないのでチキン、ツナ、ビーフのタコスをテイクアウトし、車中で食べました。 U型の皮は柔らかくもっちりとして,具

          沖縄テゲテゲとタコスとサトウキビ畑とTHE BOOMと

          ウソツキで誠実な男の約束『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』

          本書の中に「『罪と罰』ウソツキで誠実な男の約束」という章がある。 東日本大地震でATMとインターネットバンキングを停止、緊急処置として10万円まで窓口で預金を引き出せることになった。 50代の現場作業員風の男性Kさんが窓口にやって来て10万円を引き出したが、後に彼の口座にはほとんど預金がなかったことが判明する。 Kさんは簡易宿泊所に寝泊まりし、都内の現場を転々としていた。しかも携帯電話を持っていないので連絡を取る方法がない。 そのまま逃げてしまえばそれで終わりだ。しか

          ウソツキで誠実な男の約束『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』

          2022年 三年ぶりの神戸であったマッキーのコンサートについて

          三年ぶりのコンサートである。会場の神戸国際会館は約二千人のキャパに立ち見も出た。オープニングは「introduction~東京の蕾~」。何曲か歌った後、MCで槇原が言う。 「皆さんに申し訳なく思っているのは私のファンだということで皆さんが肩身の狭い想いをしているんじゃないかって、本当にすみませんでした」 と言って、深々と頭を下げる。すかさず近くにいた年配女性から「そんなことないよ!」と声が飛ぶ。そして会場から万雷の拍手。 「肩身の狭い想い」というのは覚醒剤所持に関する報道

          2022年 三年ぶりの神戸であったマッキーのコンサートについて

          太鼓の達人とYouTubeとダンス

          小三の娘は太鼓の達人にはまっている。週に一度、娘を自転車に乗せて水泳教室に送り迎えをするのだが、帰りはイオンに寄って太鼓の達人をするのが決まりになっている。いや、決まりではないのだが右折するとイオンに行くという交差点の手前にあるかっぱ寿司の駐車場の前で「イオン行く?」と聞くと、必ず「行く」と答える。もう見事に100パー「行く」と答える。一度くらい「今日はやめとく」と言ってもいいとは思うが、それはそれで心配だ。 内視鏡検査後にレントゲン写真を見ていた医者が「これは…」と言って、

          太鼓の達人とYouTubeとダンス

          森鴎外と斎藤茂吉と川島芳子の父

          家族歴史を調べていると、「よく私を見つけてくれた」という祖先の声が聞こえた気がするのは一度や二度ではない。 そしてまた、歴史の尻尾の先っちょを掴んだと感じることもある。 この書は義母の家にあり、処分しようかと案じていたもの。 義母の母方の祖父、斎藤秀雄は東大医科大学の学生の時分、森鴎外の自宅の観潮楼を訪ねて「小児科をやりたいんです」と相談している。秀雄は島根県益田市生まれ、鴎外の生家は近かった。 秀雄が長崎医科大学に赴任した時、精神科医で歌人の斎藤茂吉もそこで働いている。

          森鴎外と斎藤茂吉と川島芳子の父

          アインシュタインの言葉

          子どもの中学受験の合格発表は一週間後の日曜日。日曜日は家族そろって教会に行く。結果は10時からスマホでわかる。聖餐会が始まる時間だ。 聖餐会後、妻と娘がどこかに行って戻ってきた。 「どうだった?」 「パパには言わないで、って」 そうか。それで全てを了解。 落ち込むかと思ったが、そうでもなかった。 11月にあった塾の最後の保護者面談の時に「もし志望校に落ちても地元の中学校のクラスでは上位にさせてあげたいです」 と言うのを聞いて不合格だな、と思った。 さすがプロだ。 先日

          アインシュタインの言葉