ミカンセーキ/(hn-nh)

模型、ときどき写真 ブログ:https://hnnh3.exblog.jp/

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最近の記事

モービルの丸い屋根

2014年。いつも使っていたガソリンスタンドが閉店した。その時に撮った写真だ。2010年の消防法改正で老朽化したガソリンタンクの改修が義務付けられ、昔からのガソリンスタンドがどんどん撤退していった。このスタンドもその煽りを受けたのだろう。 その頃、モービルのガソリンスタンドには四角い屋根の柱の周りに丸い縁取りがあって、夜になると白い天井に丸い光の輪が浮いて綺麗だった。屋根は長方形なのに丸い光の輪を並べるデザインをどうして思いついたのか。普通に考えても出てこないアイディアだか

    • 法隆寺と登呂遺跡とマイホーム

      法隆寺と登呂遺跡の建物に使われている木工技術はほとんど変わらないと言われている。 世界一古い木造建築といわれる法隆寺の優美な姿が、弥生時代の集落の素朴な建築技術で作られているとは誰も信じないだろう。大陸からもたらされた先進的な建築術の要は斬新なフォルムでも民間の技術を利用して作ることができるところにあった。誰でも普通に使える技術で未だ見たことのない建物を作り上げる。そこに革新があった。それが支配の道具として利用された 法隆寺の建物の部材を実測すると屋根の垂木の寸法が揃って

      • ウォーカー・エヴァンスの 「Decorated Sheds」

        ウォーカー・エヴァンスが撮ったアメリカらしい写真は何かと聞かれれば、全てがアメリカと言うしかないけど、個人的にはこの写真だと思っている。農業安定局(FSA)のカメラマンとして南部を回っていた時の一枚。アラバマの田舎町スプロットの郵便局の建物を撮った写真だ。郵便局と言っても雑貨屋との兼業。人口の少ない村では郵便配達よりも生活必需品の販売で店の主人は生計を立てていたのだろう。ガソリンスタンドとコカコーラの看板がその全てを物語ってる。 日本でも個人商店のような郵便局が存在する。特

        • Stranger in plastics

          1945年3月27日。フランクフルト南郊、米軍第180歩兵連隊の兵士たちがベンスハイムの街を通過する。アンナ・ミックスは妹のマルガレータが暮らしていた家の廃墟の前で呆然としていたところを写真に撮られている。初めて見る写真なのに老女にはどこか見覚えがあった。 Mini Artの1/35ミニチュアシリーズ『ドイツ市民1930−40年代』のあの老婆だ。片手を頬に当てたまま杖をついているところまでそっくり模している。靴のヒールは写真の方がわずかに高い。およそ荒れ果てた街には不似合い

        モービルの丸い屋根

          35mmと1/35の記録メディア

          MiniArtのフィギュアには実在のモデルが多い。 ドイツ兵のフランツ・グラッサーが1942年のベルゴロド(現在のロシアとウクライナの国境付近)で撮った写真の中に彼らは確かにそこにいた。 カメラを向けられた時には、まさか半世紀後にプラスチックの『ソヴィエトの村人』としてふたたび生を受けるとは想像だにしなかっただろう。 35mmフィルムの中にかつて確かにそこにいた人々の姿が1/35サイズに読み替えられてプラスチックという支持体に定着されている。 少女と話すドイツ兵がカメラ

          35mmと1/35の記録メディア

          クロップマーク

          戦闘時中の高射砲陣地の痕跡を探して空中写真を眺めもう一つの楽しみは、都市化が始まる前の原形が観察できることだ。 かつて埼玉の越谷は東京湾から50キロも離れた内陸であるが標高は低く、暖かいで海面が高かった縄文時代には海だったような場所で河川から濡れた土砂が堆積した低湿地だった写真を見ると水が流れた跡をトレースする集落ができることがわかる。 河道脇に砂や砂利が積もった自然堤防の上は耕作には向かないけど水はけがよく周囲よりわずかに高くなっているため家を建てるには向いているのだろう

          プラモデルは最初から完成していて最初から未完成だった

          50年前に発売されたプラモデルを組み立てました。1972年に発売されたタミヤの1/35 S.A.S.ジープ。砂漠を横断してドイツ軍の飛行場を攻撃するためにジープをカスタマイズしたヘビーデューティな姿が魅力で、当時の模型少年なら誰もが組み立てた往年の名作キットです。そして今でも模型店の店先に普通に並んでいる。 50年前に開発された商品が今でも普通に流通している。他にそんなものがあるだろうか。往年の名作キットとして古き時代を懐かしむマニアのためではなく、最新のキットにも肩を並べ

          プラモデルは最初から完成していて最初から未完成だった

          写らない写真

          久しぶりの京都だ。3年前にリモート会議が普通になって、あんなに行き来していた京都は画面の向こうの映像になった。そして今日、再び京都。しかし見える風景は3年前と同じではない。状況はすっかり変わってしまった。 少し気が重い。オープンに関わったカフェがこの3月で閉店すると知らせがあった。その後始末をどうするかと言うのが今日の議題。聞きたくない話も聞かされるとしたらリモートで十分だったが、店長に会って画面越しではない声が聞きたくなって品川駅から新幹線に乗った。 実は京都に来ようと

          戦争のプラモデル

          わずかでも力になれたらと思って、在日ウクライナ大使館に寄附をした。UNCHR(国連難民高等弁務官事務所)難民支援の募金もした。ウクライナの戦争が終わるとか元通りの日常に戻れるとか、今は何もわからないけど。 そしてウクライナ製のプラモデルも買った。それは戦争のプラモデル。 1/35スケールの兵士のフィギュアセットの箱を開けると、ウクライナが戦場になっている時にそんなもの作ってる場合かと言う心の声が聞こえます。だけど、いつも何の疑問もなく作っていた戦車や兵士のプラモデルを作る

          戦争のプラモデル

          圧縮率の違い

          週末に小さなプラモデルを作った。1/72スケールの装甲車は手のひらに収まってしまうくらいの大きさで、パーツも少なかったからあっという間に形になってしまった。たった一日で組み上がる爽快感。そして物寂しさ。 完成の楽しみを引き伸ばしたいと感じたのかは分からないけど、少し細部に手を入れ始める。装甲板の溶接痕を再現しようとランナーの切れ端をライターの火で焙って細く延ばして作ったプラスチックの糸を車体に貼り付ける。接着剤を塗って柔らかくなってきたところに細かいシワを刻んでいくと、遠目

          3月10日と11日

          76年前のこの日、東京で10万人の命が失われた。1945年の3月10日の未明、米軍の300機のB-29爆撃機が高度2000mの低空をついて侵入する。1665トンの焼夷弾を投下し、市街地は火の海になった。巨大な炎で秒速100mを超える火災旋風が荒れ狂い、B-29は水平に飛ぶのも困難であったという。 応戦した航空機は46機、高射砲部隊の地上からの砲撃など、それでも14機のB-29が撃墜されたというが、家屋の焼失は26万戸、範囲は41km2に及び、被災者は100万人を超える。東京

          見える迷彩

          ミリタリーの世界を端的に表しているのは「色彩」なのだろう。濃いグリーンに塗られた装甲車、カーキ色のジャケット。いわゆるミリタリーカラーです。普通の車もオリーブグリーンに塗装すれば途端に軍用車に見えてきます。ポルシェをカーキ色に塗っても流石にミリタリーっぽくは見えないかも知れないけど、その逆で例えばジープを黄色に塗ったら、そのままサーフィンにでも行けそうなルックスになる。デザインの意味は色で決まるものかも知れない。 それこそ「迷彩」なんてのはミリタリーの必須アイコンで、相手か

          隙間のコーンスターチ

          秘伝の味。というのがあるが、あれは実は簡単に真似できてしまうものらしい。レシピさえ知ってしまえば誰でも再現できる味。だから他人に知られないようにレシピを秘密にしてる、というのが秘伝の味に隠された真実。 模型製作に秘伝の味みたいな話があったりするのか、と考えていて思い出したのが、瞬間接着剤にベビーパウダーを混ぜて使うレシピ。これはまあ知ってる人は知ってる技だから、一子相伝の秘術にするほどのものではないのだけど、知ってると役に立つノウハウの一つには違いない。 誰が思いついたの

          隙間のコーンスターチ

          模型の季節

          写真を撮っていると、毎年花が咲くたびに「また、ひと回りした」と思う。春が始まり夏が来て、あっという間に秋が終わって冬が訪れる。変わらず毎年花が咲く。その繰り返し。 同じ花を撮ることに飽きてファインダーを覗いただけで辞めてしまうこともあるし、去年との違いを見つけようと同じアングルで撮ることもある。変わるものと変わらぬもの。季節は繰り返されることを知っているから、写真の中に時間が過ぎたことの痕跡を見つけられる。 花は毎年変わらずに咲くことに意味がある。 すこし季節外れの花の

          ピンクなビリジアン

          よく出来た人形と、出来がよくなくても冗談のひとつくらい言える人間の違いは何か? 答えは簡単。血が通ってるか通ってないか。人工知能と人間の違いも同じです。血管の中を血液が流れて身体のあちこちで化学反応を起こす。意識が生まれて、間違いを起こすこともあれば恋に落ちることもあるし、酷いこともする。 ポケットから手を出して、拳をぎゅっと握りしめてください。皮膚の向こうに血管が透けて見えるはずです。それは何色ですか? 肌の色は赤みがかった皮膚の色。血管は青みを帯びた緑。皮膚の厚いと

          ピンクなビリジアン