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「自分の直感を信じ、コロナ禍でのデンマーク留学を決断」大城美空さんインタビュー

現在、デンマークの成人教育機関「フォルケホイスコーレ」で、ヒューマニティやSDGsをはじめとする多種多様な分野を勉強されている大城美空さん。教科学習に囚われない学びの場を創ることを大切に様々な活動をされているが、なぜそのような分野に興味を持ったのか、またコロナ禍でなぜ留学を決断されたのか、その背景を取材した。

転機となった大学のゼミ

大学入学まではやりたいことが明確にあったわけではなく、偏差値や潰しが効くという観点で大学選びをした。学部は直感的に面白そうと感じたマーケティングを学べる分野を専攻したが、実際の大学の講義は楽しめずモヤモヤしていた。そのタイミングで、転機となったゼミの授業に出会う。


そのゼミでは、「自分たちの学びは教室の中ではなく、外にある」という、大学の境を超えて社会に出ながら学ぶ「越境学習」の考え方を大切にしていた。そして企業やNPO、市民活動など興味のある分野に飛び込んでインターンシップを行い、そこで生まれた問いを持ち帰って議論していた。今までのような、ただ一方的に講義を聞くスタイルとは異なり、新しい発見がたくさんあったことがとても面白く、課外活動を通して社会起業家やソーシャルビジネスが身近に感じられるようになった。それにより「社会のために何かしていきたい!」という想いも強くなり、その道を志すようになった。

就職活動に違和感を感じ、ゼミで得た新たな発見を更に拡げるために留学へ

ゼミにより大学が面白くなり、自発的に何かをやるのが楽しくなったタイミングで、就職活動を迎えた。大城さんは今就職活動しても以前と同じように思考停止した日々を過ごすことになると思い、何か別の選択肢はないかと考えた。そこで、社会起業家や学生に対しアメリカでのリーダーシップトレーニング研修を提供しているNPO団体を見つけ、大城さんはアメリカで語学留学しつつ、このNPOでインターンすることに。


周りは当然のように就職活動しているので、そのレールを外れることにかなり不安はあった。しかし、「より良い社会の変化は一人一人の内面の発見とともに生まれる」というそのNPOが打ち出している理念にとても共感した。そして好奇心やワクワク感が不安を上回り、関心ある分野の学びを深めるために決断した。


社会人4年目とコロナ禍を迎えるタイミングで、自身の幸せを見つめ直すように

新卒では、障がい・福祉分野で多様なビジネスを展開している「LITALICO」に入社。社員の年齢が若く既存の価値観に囚われず、新しいことに取り組んでいる姿に魅力を感じた。また「障がいはその人ではなく、社会の構造により起きている」という考え方にも共感し、入社を決めた。学生時代は教育現場の最前線ではなく、最前線に携わる企業や団体の支援に関わることが多かったからこそ、現場に入りたい想いを伝え、子供の指導員や保護者との面談に従事した。


現場では指導員だけでなく、目標としていた教室全体をマネジメントするポジションにもついた。もともと好奇心旺盛なので5年に一度は環境・住む場所・コミュニティを変えようと考えており、コロナ禍になったことやマネジメント業務が一区切りついたタイミングで自分の人生について見つめ直した。その結果、一度立ち止まって新しく学ぶ期間を作りたいと考えるようになった。


コロナ禍で住む場所をシェアハウスに変えたことも、価値観の変化に大きく影響した。今までは仕事中心の生活だったが、ルームメイトと植物を育て、料理の工夫をするなど、日々の生活がより豊になった。その結果モチベーションが上がり、仕事も更に楽しめるようになった。その経験から、幸福な人生を過ごすために、「暮らし」をより大切にしたいと考えるようになった。ちょうどそのタイミングでデンマークにいる友人から「フォルケホイスコーレ」のことを教えてもらい、ワクワクした。そして「今しかない!」と留学を決めた。

デンマークで学んだこと

デンマークでは授業を詰め込まず、自分自身の理解や友達とのフレンドシップを学ぶ大人のための学校に在籍した。デンマークは良い意味で日本と常識が違うことが多く、毎日が刺激的だった。挙げるとキリがないが少し例を挙げてみる。

・ルールは絶対的ではなく、何のためのルールか?に立ち返る。例えば年齢制限がルールで決められていてもルールの目的に沿っていれば、ルール対象外でも受けることができる。
・既にある物を大切にする。自然を大切にする、友達と夜通し語る等。衣類においても、高価な物より古着屋で買う方がクールと考えられる。


また他者とのコミュニケーションについてのたくさん学ぶことがたくさんあったと彼女は語る。主に学んだことは3つ。


1つ目は対等であること。年下である自分の意見に価値がないとは思わず、お互いに意見を言う。デンマークでは敬語の文化がない。校長先生に対して「〜先生」と付けず、名前だけで呼ぶことにもその文化がよく現れている。年齢関係なくお互いをリスペクトしているのである。


2つ目は自分の意見に価値があると思うこと。今これを話しても意味がないのではないかと思わずに、気になったことはどんどん伝える。実際にデンマークでの学校では、先生が話している途中でも生徒はどんどん気になったことを質問し、誰も気にしない。デンマークでは幼少期から自分の感情や意見を伝える経験を積み、周りの人もそれを受け止めることが当たり前となっている。


3つ目は自分が空気を読む必要は全くなく「もしかしたら相手がこう思っているんじゃないか」と感じたら、それは相手の責任で相手が話さないといけないということだ。日本ではこれらを意識して対話されることはまだまだ少ないので、「デンマーク流の対話が増える場作りをしたい」と彼女は語る。

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※デンマークの仲間たちとの写真

帰国後のビジョン

2021年4月にデンマークでの生活をスタートし、2022年1月頃を目処に日本帰国を決めた大城さん。デンマークでの生活がとても充実していたのでしばらく残りたいと思っていたが、デンマークのような教育機関を日本に作りたい気持ちは変わらず、それを現地の友達に話すと、「じゃあ日本でそれをやりなよ!」と背中を押してもらい帰国を決断。


帰国後は東京以外の場所に移住しつつ、仕事することを検討している大城さん。留学前は東京以外の場所で暮らすなんて考えもしなかった。これまでは自分の価値観と一致する仕事内容かどうかが重要だったが、今は「暮らしの豊さ」も大城さんにとってとても大切な要素になった。東京だとお金を使って何かをする価値観から逃れることが難しい場面が多い。一方で地方だと住んでいる人や街と深く関わり、何気ない幸せを大切にできる。特に何かにお金をかけるわけでもなくただ友達と夜通し語り、自然を散歩した、そんなデンマークで経験したような日常を大切にしたいそうだ。


仕事面では引き続き教育分野に携わることを検討している。LITALICOでは障がいがある子どもにどうやって接していくかということに従事していたが、彼らと身近に接する大人や子どもたちへのアプローチも大切だと感じた。日本の教育ではSDGsやダイバーシティのような教科学習以外の学びや議論の場が少ない。なので今後はそのような多種多様な学びを、年齢関係なくフラットな立場で対話できるような場作りを大城さんは担っていく。

最後に

大城さんは人生の中で何か重大な決断をする時、自分がそれにどれだけワクワクできるかを大切にする方だなと感じた。そのような局面では人間誰しも何か大きな不安が発生することが多い。普通だと「そんな不安を感じちゃダメだ!」という思考になりやすいが、そうではなく不安な気持ちも感じながら「それでもこの選択をするとワクワクする!」という気持ちがどれだけあるかが大切なのだろう。「現状に不安を感じているけどどうしたらいいかわからない」という人はまずは小さなことでもいいから、自分が少しでもワクワクすることを初めてみると良いだろう。そしてそれを少しずつ育てていくと、大城さんのように人生の転機となる大きな決断ができるのかもしれない。

彼女のことをもっと知りたい!と思った方は、デンマークの暮らしを発信されているInstagramのリンクも掲載するので、是非フォローを。




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