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言葉以外で「表現」する人たち

もう2年くらい前になるだろうか。YouTubeを開いたら、今にも踊りだしそうな人たちが並んだサムネイルの動画をレコメンドされた。「多分これは、流行りのダンス動画だ」と思った。

私とダンスの接点といえば「得意な友達が何人かいた」「学生時代、授業で嫌々やっていた」くらいでしかない。だから普通はそんな動画が出てきても開かないはずだ。でも、当時の私は反射的にその動画をタップした。

興味を持たず生きてきたせいもあるのだけど、ダンスに使われるのは知らない曲とか、聴いたことはあっても普段好んで聴かない曲ばかりのイメージがあった。だからあまり、興味が持てなかった部分もあったかもしれない。

でも、YouTubeで突然レコメンドされたその動画のタイトルには、私が大好きな日本のアーティストの名前が書いてあった。だから興味が湧いたのだ。「もしかして、この人の曲で踊るの?そんな人たちがいるの?」と。

チャンネルの過去の動画をさかのぼって、さらに驚く。自分の音楽の趣味と、彼女らの曲のチョイスがかなり似ていたこともあるけれど、自分が普段好んで聴いている邦楽で踊る存在が、私にとってすごく新鮮だった。

何者なんだろうと思って調べたら、福岡の公民館を拠点にしているダンススクールの皆さんらしい。名前はjABBKLAB。すぐチャンネル登録して、眠れないときにjABBKLABの動画を観て過ごす日が増えた。「好きな音楽の良さを共有できる相手」みたいな、不思議な存在になった。

好きな音楽に出会ったとき、音楽に感動したとき、音楽から受け取ったものを表現したいと思ったとき。私なら迷わずその手段として言葉を選ぶ。自分の気持ちを言葉に置き換えて、人に伝わるように文章を考える。

でも彼女らは私と同じ曲を聴いて、その感動を言葉のないダンスで表現する。動画を観ている間、私と彼女らの間に言葉によるコミュニケーションはまったくない。そのはずなのに、踊っている姿を観ていると、その音楽の良さを共有できているような気がしてしまう。

そうして長い間、私にとって「好きな音楽の良さを共有できる存在」でいてくれているjABBKLABの皆さんが、11月に福岡でライブをすると知り「生で観たい」と思ってチケットを買った。普段一人でライブに行くタイプの私だけど、とても緊張した。だって、ライブハウスにダンスを観に行くのは初めてだったから。

彼女たちのスキルの高さを説明できるほど、私はダンスの世界を知らない。でも「ダンスも言葉と同じである」ことだけはよくわかった気がした。好きな音楽の良さを、自分にはできない方法で熱く表現する姿にとても憧れた。

ずっと「生まれ変わったら漫才師になりたい」と密かに思っていたけれど、このライブを観てから「ダンサーもいいな」と考えるようになった。今世の私は言葉のほうに縁がありそうなので、彼女たちに負けないように言葉と向き合い続けることにする。

最後まで読んでいただきありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。いただきましたサポートは、自己研鑽やライター活動費として使用させていただきます。