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過去の本が見すえた未来をのぞいてみる

引越し準備をしていると、母の本棚から古い本がいろいろと発掘される。今はその中で、読んでみたいなと思ったものを拝借して、一つ一つ読み進めているところだ。

つい昨日読み終わったのが、この『ライオンは眠れない』。パッと見たときは、哲学系の本?自己啓発本?と思ったけれど、帯をよく見てみると、どうやらちょっと違いそう。

いったいどんな本なんだ

こんなファンシーな表紙ながら『頭をぶんなぐられたような感動』『読み進むうちに恐ろしくなった』って……どんな内容?気になりすぎる。とりあえず、いつ頃出た本なのかを確かめてみた。

後ろのページをめくると「2001年11月25日初版第1刷発行」と書いてあった。今から20年以上前の本。『日本の現在の問題の本質を的確に表現しており』とも書いてあるし、意外と政治系の話なのかもしれないなあ。

政治は苦手分野だけど、薄めの本だったこともあり、軽い気持ちで読み始めた。すると、そのわかりやすさと衝撃的な内容のせいか、あっという間に読み終えてしまった。

この本が出た2001年、私は小学校低学年。政治のことなんか当然まったくわからなかったけれど、小泉総理や田中眞紀子大臣がよくテレビに出ていた感じだけは、なんとなく覚えている。

当時の第1次小泉内閣のことを、この『ライオンは眠れない』は中国の寓話になぞらえてわかりやすく説明している。テーマは「創造的破壊」。著者であるサミュエル・ライダーさんが警鐘を鳴らす「破壊」とは、簡単に言えば「預金封鎖」のことだ。

帯の感想にもあったけれど、約20年後を生きる私でさえ、読み進めるうちに怖くなった。読了後に調べてみると、この本は30万部以上売れたベストセラー本だそう。当時の読者はきっと、もっと恐ろしかっただろうな。

この本が発売されてから今まで、日本で預金封鎖は起こらなかった。だけど、それ以外のいろんな形で私たちは「破壊」を経験してきたことは間違いないと思う。きっと著者のサミュエルさんも、想像していなかったような形で。

同書では「『破壊』の向こうには創造が待っている」と語られている。たとえば数年前に世界中で起こったパンデミックも「破壊」だとしたら、私たちは今「創造」のフェーズにいると言えるのかな、なんて考えた。

20年以上前に出た本が案じた未来を生きる私たち。古い本を読んで得られる恩恵は、単に「過去の人が行った未来予想に対する、答え合わせができること」だけではない気がした。今月はこうして、未来へのヒントをもらうような気持ちで、古い本を読んでみようと思う。

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