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新潟の地で床に突っ伏した次男は今を楽しもうとしていた

3年前、夫の友人に家族で結婚式に招待された。

結婚式は新潟で挙げるという。夫は高校生の時、サッカー推薦で新潟の高校へ行っていた。高校サッカーの新潟県代表の決勝にも出場していた。

私は新潟は縁もゆかりもなかった。けれど、夫にとっては高校生活やサッカーを打ち込んできた思い出の場所だ。私は夫が3年間過ごしてきた新潟がどんな所か行ってみたかった事もあり、家族で結婚式に参加する事にした。

せっかく新潟まで行くので、少し観光もしようという事になり新潟駅近くの宿を予約。

1日目に新潟で結婚式に参加し、2日目に新潟駅で見られる現美新幹線を子ども達と見に行き、人気のお寿司屋さんへ行く予定を立てた。東京へ戻る前に長野へ寄り、夫の別の友人がいるJ3のサッカーチームの試合も見て帰ろうという事になった。


東京から車で出発し、4時間半ほどで新潟に到着した。早く到着したので新潟駅周辺をドライブしていた時、朱鷺メッセというアリーナの前を通った。何かイベントをやる様で人が集まっていた。

ん?なんか見覚えのあるロゴが・・。

私の大好きなアーティストのLIVEだ!

20年ほど前、20万人LIVEをしたバンドである。中学生の時からずっと大好きで、LIVEは行けるものは全て行っている。妊娠中はもちろん、子どもを連れて行くこともあった。

全国ツアー中なのは知っていたし、このツアーも関東のLIVEに参加予定だった。しかし、たまたま新潟に行った日にLIVEがやっているなんて!知らなかった。内心、結婚式よりも興奮してしまっている私がいた。

もちろんチケットもないし、結婚式の時間と被るので見に行こうとは思わなかったが、結婚式が終わったらLIVEの音漏れだけでも聞きに行きたいなぁと考えていた。

結婚式はとてもステキな式だった。結婚式はみんなが幸せな気持ちになれるから大好きだ。

式が終わり、時計を見た。まだ朱鷺メッセではLIVEがやっている時間だ。雰囲気だけでもLIVEを味わいたい!夫に頼み、結婚式の服のまま会場に車を走らせた。

子ども達も私の影響でLIVEが好きだったので、「今LIVEを近くでやってるんだってー!」と伝えると大興奮。一緒に走って向かった。

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朱鷺メッセは珍しく、アリーナの扉の手前までチケットがなくても行けるようになっていた。アリーナの外にはスタッフの人以外に誰もいない。

扉の向こうではライブを行なっていたので、熱気と一緒に歌声や歓声もダイレクトに聞こえてきた。うわぁ、中に入りたい。聞く限り、本編の終盤かなと言う感じだった。

扉の前にいたスタッフの人が、急いでやってきた私たちに向かって声をかけてきた。

「チケット、購入されますか?」

どうやら、立ち見席が当日券として販売していたようだ。子ども達は「行きたい!」と騒ぎ始める。

でも、時間的にライブはあと1時間もやらない。チケットは1枚7000円なので家族で3万円だ。

答えはだいたい予想がついていたが、夫に聞いてみた。

「入ってみるー?」

ちょっと冗談ぽく言ってみた。夫は

「今日は入らなくていいんじゃない?」

と話した。予想してた答えだ。

そうだよねーと思いながら、夫が「行ってみようか!」と乗ってきたらチケットを買ってしまおうかとも思っていた。

やりとりを聞いていた次男がLIVE行けないことを悟り、床に突っ伏した。結婚式で着たタキシード姿のままで。

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彼の最大限の抵抗であり、何がなんでも行きたいという意思表示だった。

とりあえず、ツアーグッズのタオルを買って次男に渡したが動こうとしない。長男にタオルを渡して、そのまま記念写真を撮った。

結局、次男は30分以上その場所から動かなかった。


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翌日は、次男もケロっとして見たかった新幹線を見に行き、新潟の街並みを観光した。お昼に食べたカワハギのお寿司は絶品だったし、長野でのサッカー観戦も楽しかった。


でも、いまだに思うのだ。あそこでライブに行っておけばよかったなぁと。

「時間も少ないし、もったいないよね」と思った私と、何がなんでも「行きたい!」と譲らなかった次男。

私は、行きたいという気持ちに色々な理由をつけて行けないと思い込ませた。これって、誰のためなんだろう。楽しくない。

本当は私も行きたくて床に突っ伏したかった。ヤバい大人と思われそうだけれど・・。

もちろん、自分の欲求のままに全て動くわけではないが、この出来事から体験したいと感じたものは出来るだけやろうと意識している。


LIVEや旅行だけでなく、仕事でも同じだ。

この仕事やって見たい!と思っても、「時間がなさそう」とか、「自分がやり遂げられるのかな?」と自分に諦める理由をつけないようにしたい。とりあえずやってみる、それから考えたって遅くない。

床に突っ伏すくらいの強い思いを私も持ち続けられたら、まだまだこれから楽しくなる気がする。









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