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作文のはなし #シロクマ文芸部
赤い傘を差していたあの頃、書いた作文を担任の先生に褒められたことがある。
これまでの人生において、取り立てて褒められることなんてあまり無かったから、遠い過去に褒められたことさえも記憶の中で宝物となっている。
褒められた作文は2つあって、ひとつめは金木犀の花が、オレンジ色の絨毯みたいに地面を覆った秋に書いた作文。
友達とそのオレンジを拾って、ティッシュに包み持ち帰る。フェルトをハート型に縫って
広島ハ晴天ナリ 初めてのひとりぶらり旅②
〝大久野島でうさぎに逢いたい〟
朝7時少し前に起きて、広島駅から大久野島へ行く交通手段を調べた。
宮島に行くより便は悪く遠かった。
あとは昨日寄れなかった原爆ドームにも必ず寄りたい。その際は資料館にも。
原爆ドームは大久野島とは反対方向だ。
帰りの飛行機の時間は16時台なので、15時には空港に到着していたい。
どうにかやりくりして周れないだろうか。
広島駅から忠海港までは高速バスで向かい、港
宮島ハ晴天ナリ 初めてのひとりぶらり旅①
「この飛行機は間も無く広島空港へと着陸いたします。皆さまシートベルトを…」
客室乗務員がアナウンスし、飛行機は旋回するとガタガタと揺れた。
何回乗っても、離着陸時には手を強く握りしめてしまう。
「今日は揺れない方だよ。いつもはもう少し揺れるから、今日のパイロットは着陸が上手だよ!」
後ろの席でカップルの女性が、そんな話しを彼氏であろう人にしていた。
〝そういうものなのか。
生まれた故郷でデ
伊勢原市渋田川ハ晴天ナリ 父との思い出を辿って
今年のゴールデンウィークには必ず訪れたい場所があった。父との思い出の場所、神奈川県伊勢原市、渋田川の芝桜を見に。
わたしの父は10年前に肝臓癌で亡くなった。
今でも、悩み事がある時や疲れてしまった時は父に会いたくなって、墓参りに出掛けては墓前で話しかける。
不思議と曇った心が軽くなるのだ。
12年程前に、医師に余命を告げられた父は「最期にわたしとの思い出を作りたい」と言って、何かイベントがあ
System Crasher システムクラッシャー #映画
本日より公開の「System Crasher」
久しぶりに、こころに刺さる映画を観た。
主人公の少女ベニーは幼少期に父親からの虐待を受け、そのトラウマを抱えながら次々と問題行動を起こしていく。
保護施設、精神科、里親の元を転々とし、一緒には暮らせない母親からの愛情を求め、葛藤しながらも必死に生きている様を描く。
そんな彼女を救うべく、社会的な役割を担った大人たちがアプローチしていくのだが、
変わる時空列車 #シロクマ文芸部
「変わる時空列車のチケットです」
怪しげな男が小さい声でそう言って、新幹線のチケットのようなものを渡してきた。
駅のホームでぼーっと考え事をしている時だった。
今日は仕事でミスをして、上司に叱られ散々な日だ。でも叱られて当然だよな。取引先をあんなに怒らせて、高額な契約をパァにしちゃったんだから。それだけじゃない、ミスなんて日常茶飯事で、その度に上司に叱られる。
…もうこの仕事向いてないのかも