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全国のナラ枯れは本当にキクイムシのせいなのか?

今回はガーデニング、インテリアからもう少し広い視点のおはなしをしたいと思います。

ここ数年、私は本業のかたわら、森や土中環境の再生のお手伝いをしていますが、森の健康が人の健康と密接だということをつくづく感じています。

普段私たちは地上の見えていることに意識がいきがちですが、じつは土中のことが地上と同じくとても大切であり、さらには今までは見えない分、謎も多かった土中環境についてさまざまな研究によってエビデンスがそろってきました。

学びを深めていくと、土中の菌のネットワークのことは実は人間の免疫システムに通じることもあるということがわかってきました。人も地球もすべてはフラクタル構造であるという説からいくと当然なのですが、デイビット・モントゴメリーの著書「土と内臓」の中でも書かれています。さらに森や樹木の健康は私たちの生活においてとても重要です。

1つの事例としてご紹介したいのが、全国的にミズナラ、コナラ、マテバシイなどのブナ科の樹木が集団で枯れているのをご存じですか?通称「ナラ枯れ」と呼ばれるものです。
ナラ枯れの原因はカシノナガキクイムシによるものと言われ、写真はそのキクイムシを捕殺する「カシナガトラップ」です。
全国の公園などで見ることができます。トップ画像は明治神宮の森です。

このカシナガキクイムシが媒介する通称ナラ菌の感染により水を吸い上げる機能を阻害して枯れはじめますが、現在では公園などでも倒木などの深刻な状況となっています。

ところで、ナラ枯れの原因はカシノナガキクイムシということになりますが、本当にそうでしょうか?

もちろん直接的な原因としてはそうなのですが、樹木にも人間と同じく防御反応があり、健康な樹木であれば、抗菌性物質を出したり細胞壁を厚くしたりできる。それでも細菌に負けてしまうのは、樹木自体の免疫が弱まっているとは言えないでしょうか。

樹木がしっかりと根を張れずに防御力が低下していること、しっかりと根を張れないのは土中の環境が悪化しているため、具体的には水や空気が循環できるような土壌になっていないため、根が張りづらい環境になってしまっている。

造園でも土中の環境は団粒構造が理想で、水はけと保水が両立し、根が張りやすい空隙があるというのが基本にありますが、最近の森の土は様々な要因で理想通りにはなっておらず、森の藪化があちこちで見られるようになってきました。

人間の体もそうですが、菌が入るからと言って抗菌のために消毒をしすぎたり、抗生物質を取りすぎると免疫が落ち、長い目でみると健康を害してしまうというように、ホリスティックに身体全体を考えて免疫を上げることが重要と言われます。

森や自然環境についても、ナラ枯れが起きる原因を近視眼的にキクイムシのせいにするだけではなく、なぜそのような事態になっているのか、ということを森全体を通して考えてみる必要があると思います。

次回は森の再生についてご紹介したいと思います。

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