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ドラマ「いちばんすきな花」枠の多様性では語れない悲しみと優しさのスキル

突然ですが、現在放送中の「いちばんすきな花」というドラマが本当に素晴らしくて大好きでして、この感情を言語化して伝えたい!ということで、1話ずつ私の解釈を強火で書いていきたいと思います。

《《本記事にネタバレはありません》》


まだ全話見たわけではないので、見て、考えて、伝える、そんな過程にしばしお付き合いいただけたら嬉しいです。


早速ですが、本編の話に入る前に、私が思う、この作品全体の大好きポイントを語らせてください!


1〜3はドラマ好きの方からすると当たり前じゃんと思うかも?です!本題は4なのでそちらからでも◎


1.映像全体が美しい


これは単純に好みもありますが、光の入り方、衣装、インテリア、オープニングの写真含め、その美しく優しい世界観がとても好きです。

いきなり見てみなきゃ何とも言えないやつを入れてしまいました。あと藤井風さんの主題歌も、それだけで1記事書けるくらい大好き。


2.台詞に無駄がない


これ、2話くらい見てすごいな、と気づいたんですが、視聴者に状況を説明するために登場人物に「言わせている感」のあるセリフがないんですね。


だから、作品の中に「説明されてる自分」の存在を感じず、そっと見守っている感覚になれるのが好きです。

あからさまな説明はない、もっと言うと、長い台詞自体ほとんどない。(silentのプロデューサー×脚本家の作品なんですが、確かsilentも同じように意図して作っていたとどこかで読んだ気がする)

その分、ひとつひとつの台詞にぎゅっと意味が詰まっていて無駄がない。だからぐわ〜〜っとじわ〜〜っと心に浸透してくる。天才の所業です。

短めの台詞で淡々としてるんだけど、温かみもあって、時にユーモアも交えながら小気味良く会話が進むので、見ていて飽きないし疲れないのもさすがです。

3.仕草や表情がめっちゃいい仕事してる


ひとつひとつの台詞に意味が詰まっている、と書いたのですが、それは登場人物の仕草にも言えます。仕草については「無駄がない」、じゃなくて「ふんだんに」って感じ。

伝わる言葉選び、伝わる仕草の演出ができるから、わざとらしい説明はいらないんですね。

優しい心を持つ主人公たちの、声には出せない痛み、わざわざ声に出さない思いやり、みたいなものが仕草や表情を通してちゃんと分かる。むしろ言葉より伝わる、と言う感じです。好き。

4.多様性のその奥の話


これが個人的にとても重要でして、若干込み入ったことを書きます!


ドラマ公式サイト曰く、「男女の間に友情は成立するのか?をテーマに…」ということなんですが、私は「え!そんな軽薄なテーマじゃないよー泣」と勝手ながら思いました。すみません。


以下、と言うかここに書いてるの全部、私なりの解釈でしかないので悪しからず…!


この作品は、「みんなありのままでいいんだよ〜」みたいな、ただ生優しいだけの多様性の話じゃなく、その奥にある辛さや優しさの話だなぁと数話を通して感じました。

詳しくは後述しますが、登場人物の4人はみんな一見、世の中的な「普通」からは外れていない人です。

子どもの頃から勉強が得意だったり、友達付き合いが上手で優しかったり、ちゃんと特技や長所があったり。


けれどそんな人の中にも、その人だからこその辛さや脆さがある。当たり前だけど。


現代の多様性/枠とグラデーション


今の世の中では、多様性の重要さが再認識されて、これまであたかも「いない」ように扱われてきた人のための、例えばLGBTのような「枠」ができ、それが多くの人の救いとなり居場所が少しずつ増えています。


だけどそもそも、枠を「取っ払う事」が多様性の本質ではなかったっけ?と私は思います。

(※LGBTはこのドラマの主題ではありませんが、例としてちょっと長めに話します。)


ジェンダー学には、「性別はグラデーションである」という考え方があります。男女の2つでないのはもちろん、LGBTを含めた6つでもない。(性自認と性的指向はそもそも同列でカウントできないけど)

LGBTQ +という言い方もされているように、「純度100%の男(という概念)」と「純度100%の女(という概念)」の間に、性の形が無数にあってグラデーションになっている。あなたも、私自身も、その中のどこかにいる。


であれば、枠をいくら作ったところで到底対応しきれないですよね。


とはいえ枠が無価値という事ではなく、まずは「いない」のではなく「いる」という事に気づくために、今私たちは新たな枠を作って認知を進めています。それはそれで必要なフェーズなのかもしれません。


けれど新たに作ったその枠のさらに外にも人はいる。そして、元々枠の中にいるように見える人の心にも、影は確かに存在する。

それは性別の話に限らず。「優等生」の枠、「先生」の枠、「友達」の枠、「結婚相手」の枠、「美人」の枠…。

枠に入りたい自分、入りたくない自分、入れない自分、入れられてしまう自分の、この説明のつかない辛さはどうしたらいいのか。

既存の枠組みでも、新たに作られた枠組みでも、どうしても取りこぼされてしまう辛さや悲しみがある。

それは、次から次へと新しい「枠」が生まれる今の時代において、明らかな差別や偏見の対象よりもむしろ、いちばん光の当たらない場所になってしまってるのかもしれない。そこに焦点を当てているのがこの作品だと思います。


共感ではなく受け入れ、そしてそのスキル


未知なる枠に気づくことは一歩前進。けれど、人の多様性を、枠ではなくグラデーション的に捉えた上で相手を尊重するには、もう少し高度なスキルがいると思います。


「L」ならこう、「G」ならこう、という方法ではカバーしきれない事象がたくさん存在するから。

そのスキルを、私を含め多くの人が身につけないことには、人類が枠を取っ払ってグラデーションフェーズに進むのはきっと難しい。

このドラマには、強く共感する話もあれば、「私この感情になったことないな」という話もあります。あるあるネタみたいな共感を提供してくれるだけの作品ではないのです。

自分と違う相手を受け入れたい時、そこにどんな優しさをあてがう事ができるのか?そんなことをそっと伝えてくれる、そして考えるきっかけをくれる作品だと私は思っています。


そして、枠の境界でもがく自分の特殊さを他者に開示できるか、の部分もすごく重要なテーマで…!でもこの4人がすごくまっすぐで優しさスキルが素晴らしくて…!愛すべき4人だから徐々に距離を縮めていく様も見ててにんまりしちゃうし…!

とにかく最高なんです。

1話ずつ解釈を述べていくつもりが、作品への愛を語ってたらこんな文章量になってしまいました。



こんなに語っておいてなんですが、普段ほぼドラマを見ない私。

毎週時間通りスタンバイして見る、という習慣がなく、残念ながら録画視聴なのですが、一日一粒だけ食べると決めてる高級チョコレートみたいに、大事に味わっています。


これからどんな気づきが出てくるのか私自身も楽しみです。


そして、私も見てるよ!という方がいたらぜひ語り明かしたい。

そう、このドラマ、友達と見ながら解釈を共有し合いたいー!ってなるやつなんです。多分見る人によって本当に感じ方が様々。

友達とお泊まり会してお菓子とココア片手に見て、「あのシーンさ…!」とか「あ、そこが気になるんだね〜」とか語りたいドラマNo. 1。なんなら一時停止してその都度1時間くらい語っちゃいそうなドラマNo. 1。

また時間を見つけて書いていくので、たまにちらっと覗いていただけたら嬉しいです。


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