書家・現代アーティスト滝沢汀の作家紹介



【作家紹介】

滝沢汀の書は、浮かんでは消える脳内のイメージのようなものだと思っている。

それが果たして何なのかはわからない。しかし、一つの像としての文字をカタチを変えながら繰り返し書く手法は、時に柔らかで、時に激しい。

文字のバリエーションを次々と繰り出せる力を感じさせる。つまり、文字=感情の分身として、自由に書いているのだろう。

作品「象」のバリエーションは象形文字としての「象」の繰り返しから成る作品であるが、一つとして同じ文字はない。「一字書」を書いた井上有一はかつて言った。「一回一回飛び込むのだ」と。

その一度限りに全てを込めて書く有一の手法と、滝沢の「象」のバリエーションは似ていなくもない。一字一字が連関を持つわけでもなく、無造作に並べられる様子から、それは明らかなのだ。タイトルをもじった、比田井南谷の一字書のバリエーション、その全体のバランスを目論んだ図形的連関とは全く違うのである。その意味において、実に挑戦的なタイトルだと思う。

あくまで、本作「象」のバリエーションは、一つの「象」に全てが詰まっている。

魅力的な文字を、ただひたすらに一回一回書いているのだ。そんなヒトの、まるで修行僧のような、ひたむきな姿を現前に見せられているようだ。

山本尚志(書家・現代アーティスト)

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