見出し画像

携帯電話

67年前に
携帯電話を熱望して
いた女性がいた…..
私の母だ。

当時は
景気も良くて
日本は経済成長の
まっただ中…….
村の青年団長をする位
真面目な人が
自由に使える潤沢な金を
持つとこうなるって
お馬鹿のロールモデルを 

地でいってた父が
お妾さんを囲い
商売そっちのけの
入り浸りに……
業を煮やした母が
ある日
父の後をつけると
目星をつけていた場所に
スタスタと入って行った。

すかさず
その部屋を訪ねると
Kさんと呼ばれる女性が
案の定いた。

"主人を出して下さい"

"そういう方はいません" 

"こちらに入ったのを
 先ほど見ました。" 
"いいえいません"
 
押し問答の末に
強引に部屋に入った母は
云い募るが
"いません"と云い返す
女性とのにらみ合いが
続く…..
ふと見回すと
調度品に家電製品が
新婚世帯のように
綺麗に揃った様子に
母の怒りのボルテージが
上がっていく……..

にらみ合う事4時間….

大きな洋箪笥が
おもむろに開き
居ない筈の父が
現れて….修羅場に…
新婚世帯ように
揃った物を
投げ合って
遂に父を連れ戻した母…

母に度々
聞かされた武勇伝?だ。

当時
今の携帯電話があれば
よかったのにとしみじみ
云うのに辟易していたが
当時は市内に出るのに
1時間半位の田舎に
暮らしていた。
子どもの
私などあずかり知らぬ
話だが
確かに
連絡が付かない父が
何処に居るか分からない。
母の不安は想像以上
だったろうと
 今にして思う。
 
"そうよ。こんなのが
欲しかったぁ。"
携帯電話を初めて
手にした母の
  第一声だった。

修羅場の話を散々
聞いて大人になった私
だから
夫が怪しいな?って
思う事は
再三再四あったが
1人息子には
一切の話をしなかった。

夫の葬式の日に
"顔を触らせて頂いて
 いいですか?"という
女性が突然出現したが
冷静に
"どうぞ"といった…..

心中
 唖然!呆然だった。
事実は小説より奇なり… 

漫画みたいな話は 
      何処にでもある。

  ラブ&ピース 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?