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関西電力 中間貯蔵施設の「約束」をめぐる黒歴史

関西電力(関電)はたまり続ける原発の廃棄物、使用済燃料を福井県外に持ち出すことを求められています。
1997年、もんじゅ事故をきっかけに福井県は使用済燃料の県外搬出を関電に求めました。そのため関電は福井県外のどこかに使用済燃料の一時保管場所である中間貯蔵施設をつくることを何度も約束してきました。そのたびに関電は原発再稼働への同意などを要求。要求したことは進めても、いつまでたっても中間貯蔵施設はつくれないという約束やぶりを続けてきました。そんな関電の黒歴史を紹介します。

8月2日、中国電力は関西電力と共同で山口県上関に中間貯蔵施設をつくるための調査をすることを提案しました。(8月3日更新)


「約束は果たされた」といった関電

2023年6月12日、高浜原発の使用済MOX燃料10tに普通の使用済燃料190tを混ぜて行う再処理の実証試験をフランスで行うことを関電森社長が杉本福井県知事に伝えました。そして合計200tの使用済燃料をフランスに搬出することをもって「約束は果たされた」と関電は言ったのです。
果たされた「約束」とは、「中間貯蔵施設の候補地を2023年末までに決める。もしできなければ美浜3号、高浜1、2号の運転を停止する」という2021年に関電森本社長が杉本福井県知事と交わした約束のことです。

最初の約束は1998年 

1997年に福井県から使用済燃料の県外搬出を求められれ、1998年、関電秋山社長は原発の使用済燃料の中間貯蔵施設を福井県外に作ること、その候補地を2000年までに選定することを栗田福井県知事に約束しました。その時の関電側の要求はリラッキング、つまり燃料と燃料の隙間を狭くして、燃料プールの容量を増やすことを認めてもらうことでした。燃料プールの容量は増やしましたが、中間貯蔵施設はいまだにできていません。関電の中間貯蔵施設「つくるつくる」詐欺の黒歴史はここから始まりました。

2015年 高浜原発の再稼働

その後まったく候補地を示せないまま、2011年3月11日、福島原発事故が起き、福井県のすべての原発が停止しました。
2015年、高浜原発3、4号機の再稼働を認めてもらうため、関電八木社長は2020年までに中間貯蔵施設をつくり、使用済燃料を福井県外に持ち出すことを西川福井県知事に約束します。このとき関電は福井県外の約210の自治体で説明会をしました。しかし具体的候補地名をあげることはできませんでした。

2017年 大飯原発の再稼働

2017年、今度は大飯原発3.4号機の再稼働への福井県の同意を得るために、関電岩根社長は改めて2020年末までに候補地を決めることを杉本福井県知事に約束しました。
2018年、東電と日本原電が共同で作っている青森県むつ市の中間貯蔵施設に関電が出資するという報道が突然流れます。それを聞いた宮下むつ市長は不快感を示し、むつ市の中間貯蔵施設の事業者、東電、日本原電から、関電が出資することはないという確認をとりました。
そして約束期限がせまった2020年12月、今度はむつ市の中間貯蔵施設を全国の電力会社で共同使用する検討を始めたと電気事業連合会(電事連)が発表しました。関電が表に立っては、また宮下むつ市長の怒りを買うと思い、電事連という隠れみのを使って、関電の使用済燃料をむつ市に運び入れようとしたようです。しかし、宮下むつ市長は「むつ市は核のごみ捨て場ではない」と反発。その後電事連の検討は進んでいないようです。

2021年 運転期間40年を超える原発の再稼働

そして、約束の期限も過ぎた2021年、関電森本社長は
中間貯蔵施設の候補地を2023年末までに決めると杉本知事に約束。「もしできなければ美浜3号、高浜1、2号の運転を停止する」と約束したのです。この時の関電側の要求は運転開始40年を超える美浜3号、高浜1.2号の再稼働への同意でした。

これで約束は果たされた!?

今回発表された実証試験で、フランスに運び込む200tの燃料とは、高浜原発の使用済燃料でいうと約435体になります。(1体=0.46tとして換算)
高浜原発1号機から4号機まで、原子炉にはそれぞれ157体の燃料が装荷されており、合計で628体になります。3分の1を1回の定検で交換するとして209体。フランスに運ぶという435体は、高浜原発4基、2回の定検で発生する使用済核燃料とほぼ同じ量です。
たったこれだけの燃料をフランスに運んで実証試験を行う計画の発表をもって「約束は果たされた」という関電はあまりにも厚顔無恥で、嘘つきです。

破綻した核燃料サイクルの図

核燃料サイクルは破綻している

高速増殖炉もんじゅの廃炉で核燃料サイクルは破綻しています。すでに日本は46tものプルトニウムを所有していて、余剰プルトニウムを持たないという国際公約もあり、これ以上再処理をするべきではありません。
そもそも海外の再処理工場で取り出されたプルトニウムを消費するため、海外の工場でMOX燃料に加工、日本へ運んで原発で燃やして発生したのがこの使用済MOX燃料です。
それをまたフランスに運んでを再処理するなんて、危険でコストも高くて何も良いことはありません。

MOX燃料はウラン燃料の8.8倍から10倍高い

2021年11月に輸送されたMOX燃料の値段を財務省貿易統計で調べると、輸入ウラン燃料の8.8倍にもなっています。「高すぎるMOX燃料 電力会社が口をつぐむその価格と経済性」2022.9.5 毎日新聞

2022年11月のMOX燃料の値段はもっとあがって10倍にもなっています。

使用済MOX燃料の再処理は「実証試験」と表現しているようにまだこれからの技術で、普通の再処理よりももっと危険で、もっと高コストで、発生する廃棄物ももっとやっかいなものになると予想されます。関電は破綻した核燃料サイクル計画にしがみつくのはやめなさい!!

*肩書きはすべて当時

* 関電株主行動ニュース No.122(2021.3.21) 
「関電の嘘とごまかし!」の原稿を書き直しました。

*2015年の約束をした八木社長、2017年の約束をした岩根社長はどちらも元高浜町助役からの不正金品受領事件の責任をとって辞任しました。
*2021年の約束をした森本社長は1000億円を超える追徴金を公取委から求めれた電力カルテル事件で、他社にカルテルを呼びかけたとされ、社長退任後についていた特別顧問を辞任しました。

関電は「約束は果たされた」と言い切った6月12日の9日後の21日に、運転開始40年を超える高浜1号、2号の再稼働を発表、翌22日には高浜1号の原子炉への燃料搬入を開始しました。

***関電は「約束は果たした」ではなく「約束は果たされた」と言ったようです。なぜ果たしたではなく果たされたなのか。なんだか他人事みたいですよね。
7月16日、訂正しました***

8月2日発表した関電の「コメント」です。これがまた関電の黒歴史の新たな1ページとなるのでしょうか。(8月3日更新)

(コメント)中国電力株式会社と共同の使用済燃料中間貯蔵施設の 設置に係る調査・検討についてhttps://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230802_1j.pdf

毎日新聞社説 2023年9月2日
「こうした事態を招いた責任は、さまざまな矛盾に目をつぶって原発推進にかじを切った岸田文雄政権にある。運転期間を延長してまで再稼働を進める前に、事実上破綻している核燃料サイクルを見直すべきだ」(9月2日更新しました)

輸入MOX燃料、1体12億円と判明 ウランの10倍 関西電力(朝日新聞 2023年7月8日)の記事から、MOX燃料の価格を10倍との記述を追加しました(9月14日更新)

*10月10日、関電は使用済核燃料に関して「使用済燃料対策ロードマップ」を発表しました。https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231010_1j.pdf

13日、杉本福井県知事はこの計画を認め、美浜3号、高浜1、2号の運転継続を認めました。これは関電のうそ歴史の新しい1ページだと思います。(10月14日更新)


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